フォード・クーガ タイタニアム(4WD/5AT)【試乗記】
基本に忠実 2010.11.02 試乗記 フォード・クーガ・タイタニアム(4WD/5AT)……378万円
欧州フォードの新型モデルが、久しぶりに日本上陸。期待のコンパクトSUVはどんな走りをみせるのか。オンロードで試した。
“新しい”SUV
「クーガ」は日本市場にとって久々のヨーロッパ製フォードである。「フォーカス」や「モンデオ」のファンからすれば、いよいよその日が来たか。待ってました! という気分だろう。しかし、これをもってして、またかつてのように欧米半々のラインナップに戻ると考えるのは時期尚早のようだ。
現在、フォード・ジャパンのラインナップは、「マスタング」「エスケープ」「エクスプローラー」「エクスプローラー スポーツトラック」とアメリカ・フォードを中心に構成されている。「クーガ」はそこへ、SUVラインナップを強化するクルマとして投入される。ヨーロッパ製ということより、新しいSUVであるということの方がここではずっと重要に見える。
構造的には「フォーカス」に近く、フォードグループのC1グローバル・プラットフォームを使用している。つまり、かつて同じ企業グループに属していた「マツダ3」(日本名:アクセラ)や「ボルボS40」「V50」とも近からず、遠からずの関係にある。
今回日本に導入されたのは、ボルボの各車や「フォーカスST」と同じ2.5リッター直5ターボエンジン(200psと32.6kgm)を搭載するモデル。トランスミッションはトルコンを用いるオーソドックスな5段ATを採用している。
今回の試乗会場はワインディングロードが連続する箱根である。個性的なデザインだけでなく、フォードは「クーガ」のハンドリングの良さにも自信があるのだろう。
「クーガ」ならではの開放感
かつては慣れ親しんだヨーロッパフォードの製品だが、こうやって数年隔ててあらためて乗ってみると懐かしいやら目新しいやらで、なんだか新鮮である。特に新鮮だったのはボンネットに走る2本のプレスライン。運転席から2スジはっきりと見え、けっこう強い視覚的なアクセントになっている。
また今回、エンジンスタートにてこずってしまった。ボタン式スターターであろうことは目星を付けていたが、そのボタンがなかなか見つからなかったのだ。正解はインパネのど真ん中(エアコン吹き出し口の間)。灯台下暗し。ボタンの自己主張の強さはアストン・マーティン並みだ。一方、ボンネットオープナーの在りかはすぐに分かった。「フォーカス」と同じで、フロントグリルのエンブレム下に鍵穴があり、そこにキーを挿し、回して開けるという謎解き系RPGさながらの方式である。
ボディのスリーサイズは、価格的にライバルになりそうな「フォルクスワーゲン・ティグアン」に近く、室内の広さもいい勝負といったところ。身長180cmクラスの乗員が前後タンデムで乗れるが、後席のひざまわりにさほどの余裕は残らない。室内長だけで言えば、Cセグメント車のそれである。
ただ「クーガ」のパッケージにはこのクルマならではの特徴があって、まず後席のヒップポイントがこのクラスのSUVに比べてひときわせり上がっている。さらに今回試した装備充実の上級グレード「タイタニアム」の天井には、長さが1メートル5センチ、幅が78センチもあるパノラミックルーフ(固定式のガラスルーフ)が付いているので、後席の開放感が異例に高いのである。おまけに後席は、クッションがやけにフカフカしている。乗っていて楽しいのは、明らかに後席だろう。
同乗者はつらいよ?
最近のヨーロッパ車のガソリンエンジンは、ダウンサイジング過給がトレンド。日本には導入されていないがライバルの「ティグアン」には1.4リッターターボという仕様すらあって、あちらで試したところ、これが意外や生き生きと走る。直5の本家、ボルボの「XC60」にだって2リッター直4ターボが加わったばかり。
そんな時代の目で「クーガ」の2.5リッター直5ターボを見ると、これはもはやラクシャリーセグメントに属する。絶対的なパワーは約1.7トンの車重に対して十分以上、その気になるとけっこう速い。低速トルクも潤沢だ。
一方、ハルデックスカップリングを用いた4WDシステムは駆動力を最大で前50:後50に振り分け、発進時も前100%ではなく、後ろに10%程度配分しているとのこと。前後の姿勢変化が大きなSUVでこれは有効で、確かに発進時、後輪が路面をグッととらえる感じがある。
ワインディングロードでは、フォードのもくろみ(?)どおり、足取りの確かさを確認することができた。「フォーカス」もそうだったが、このシャシーを用いるクルマは自然で好ましいハンドリングを持つものが多く、「クーガ」もその良き継承者といえる。ただ、初期のロールスピードが比較的速く、ステアリングを切り込んだ瞬間にすっと倒れこむので、どうしても乗員の上体が振られがちになる。結果として、不快を訴えてくる同乗者(特に後席)がいるかもしれない。
最近のユーティリティ車の中には、あえてステアリングの感度を落としてロールの滑らかさを演出し、しかも運転する面白みを確保した「マツダ・プレマシー」のような試みも出てきている。かつて「フォーカス」のハンドリングでわれわれの目から何枚もウロコを落としてくれたフォードの仕事にしては、今回はややオーソドックスにまとまってしまった気もするが、そのぶん「クーガ」は基本に忠実という言い方もできそうだ。
(文=竹下元太郎/写真=荒川正幸)

竹下 元太郎
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。



