「レクサスLM」があるのに? 「トヨタ・アルファード」の4人乗り特装車の狙いを探る
2025.02.06 デイリーコラムその価格差は700万円強
トヨタ車体は2025年1月31日、「トヨタ・アルファード」の特別架装車「アルファードSpacious Lounge(スペーシャスラウンジ)」を発売した。こちらは既報(参照)のとおりトヨタ・アルファードの最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」をベースとするカスタマイズモデルで、ベース車の3列目シートを廃し、後席の定員を2人としたショーファードリブン仕様である。
とはいえトヨタの同門といえるレクサスには、同じく現行型アルファードをベースとするショーファードリブン仕様のミニバン「レクサスLM」が、すでに存在している。このたび登場したアルファードのスペーシャスラウンジは、先行して登場したレクサスLMとはどこがどう違うのか? そしてスペーシャスラウンジとは、いったい“誰”に向けてつくられた特別架装車なのだろうか? この2点を、事実をベースに考えてみたい。
まずはボディーサイズ。スペーシャスラウンジはアルファードの新グレードではなく特別架装車であるため、全長×全幅×全高=4995×1850×1935mm(PHEVは1945mm)という外寸はアルファードのエグゼクティブラウンジと変わらない。それに対してレクサスLMは全長×全幅×全高=5125×1890×1955mmとひとまわり大きい。ただしホイールベースはどちらも3000mmで同一だ。
そして車両価格はレクサスLMが1500万円~であるのに対し、スペーシャスラウンジは1272万円~。ただ、このように紹介すると「価格差は200万円ちょっとでしかない」という誤解も与えるだろう。レクサスLMの1500万円というのは6人乗り仕様の価格であり、スペーシャスラウンジのライバル(?)にあたる4人乗り仕様は2000万円だ。つまり両者の価格差は「700万円強」という認識が正しい。
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豪華すぎない絶妙なさじ加減
パワーユニットは、レクサスLMが2.4リッター直4ターボにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムであるのに対し、スペーシャスラウンジは自然吸気の2.5リッター直4をベースとするハイブリッドまたはプラグインハイブリッド。システム最高出力はLMが371PSで、スペーシャスラウンジの架装ベース車両ではハイブリッドが250PS、プラグインハイブリッドが306PSとなる。設定される駆動方式はいずれも4WD。WLTCモード燃費はレクサスLMが13.5km/リッターにとどまるのに対し、スペーシャスラウンジは16.7km/リッター(プラグインハイブリッド)または16.5km/リッター(ハイブリッド)となっている。
一方インテリアでは、レクサスLMの4人乗り仕様は1列目と2列目の間に48インチの大型ワイドディスプレイを備えた大型パーティションがあるのに対し、スペーシャスラウンジは「前後セパレートカーテン」によってのみ仕切られている。
またレクサスLMのリアシートはご承知のとおり大型ヘッドレストが備わったオットマン付きパワーシートで、表皮はレクサスの最高級本革である「L-ANILINE」。そしてアームレストとオットマンにもシートヒーターが採用され、着脱可能な「リアマルチオペレーションパネル」も付く。
それに対してスペーシャスラウンジは「アルファード エグゼクティブラウンジ」に準じるつくりが基本にはなるが、ベース車よりも約420mm広い足元スペースが最大の特徴となり、リアシートのヘッドレストにはスピーカーが内蔵されている。前席の後ろに大容量の冷蔵庫が装備されているのはレクサスLMの4人乗り仕様と同様だが、移動中や移動先での着替えに便利な「ラゲージ洋服掛け(取り外し可能)」が最大9着分備わっているのはなかなか便利だといえる。
またそのほかでは、レクサスLMは制振性や静粛性等々が「レクサス基準」で仕上げられているのに対し、スペーシャスラウンジは特別架装車であるため「トヨタ・アルファード基準」のままとなる。もちろんアルファードのそれも十分以上のレベルではあるわけだが、レクサスLMのほうが一枚上手であることも確かだ。
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アルファードという名前と見た目が重要?
以上の事実から考えると。今回登場したアルファード スペーシャスラウンジとは「後席がめちゃめちゃ広いショーファードリブン車」という基本パッケージングこそレクサスLMと同じだが、全体と細部のつくりにおいては「似て非なるもの」と考えるべきだろう。
もちろん、素のアルファード エグゼクティブラウンジであっても十分以上に素晴らしいピープルムーバーであるため、その特別架装版であるスペーシャスラウンジも素晴らしいであろうことは間違いない。ただ直接比較してしまうと、どうしたって「トヨタ車とレクサス車の違い」というブランドの根幹が如実になるということだ。
では、そんなアルファード スペーシャスラウンジとは「誰のためにつくられたショーファーカー」なのだろうか? 前述のとおりレクサスLMとは700万円強の価格差があるため、その約700万円を「節約したい!」と考える富裕層や経営者のためのクルマなのか?
もちろんトヨタとトヨタ車体の社内でどんな会議が行われたのかは知る由もないが、「節約説」は違うはずだ。こういった類いのクルマを求める層にとっての700万円強は誤差の範囲というか、むしろ高額であるほうが節税につながりやすいため、約700万円ごとき(?)をケチりたい人をターゲットにしたとは考えにくい。
ならばアルファード スペーシャスラウンジとは何なのか──といえば、おそらくではあるが「高級で高額すぎるクルマに乗ることがはばかられる職種やその立場にある人」をターゲットとしているのではないか。
どんなクルマであっても自分が好きなもの、買えるものを買えばいいというのが世の中の基本ではあるが、そうはいっても「目立ちすぎるとアレだから……」「もうかってると思われちゃうと差し障りがあるので……」「日本車とはいえ高級ブランドのレクサスではいかにもで角が立つ」ということを考慮したり、何らかの予算のなかからクルマ選びをしたりしなければならない人というのは、企業のボードメンバーや公務員、団体職員の上層などにやはり一定数存在する。
そういった人々が「でもレクサスLMみたいなクルマ(の後席)に乗りたい!」と考えたとき、外観がごく普通のアルファードでしかないアルファード スペーシャスラウンジは、まさに適任な一台となるのであろう。
(文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車/編集=櫻井健一)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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