「265万1000円から」に注文殺到! 「スズキ・ジムニー ノマド」の価格は本当に安いのか?
2025.02.10 デイリーコラム争奪戦は4日で終了
ついに、待ちに待った「ジムニー5ドア」が「ジムニー ノマド」として国内投入されることが明らかになったのは皆さんご存じのとおり。かつてジムニー5ドア関連のあんな記事やこんな記事を書いて事前の情報提供に貢献した自負がある筆者としても、肩の荷が下りてほっと一息ついた次第である。
というわけで、国内正式販売が決まったジムニーに関してつらつらとユルめのコラムでも書こうと思っていたところ、とんでもないニュースが飛び込んできた。正式発表から4日目にして「販売計画を大きく超える約5万台の注文を受けた」ことにより受注を停止するとのこと。販売計画は1200台/月だから、年間1万5000台弱。3年分以上のバックオーダーともなれば、それも仕方ないだろう。ライバルなきブルーオーシャンとはいえ売れすぎやなあ。
確かに「ジムニー」(軽自動車)や「ジムニー シエラ」(3ドアの小型車)の販売状況から考えるとノマドの1200台/月という見通しは「スズキも甘いなあ」と思えなくもないが、つくれないものは仕方ない。なかには「つくれないなんて言ってないでつくれよ!」とお怒りの人もいるだろうし、それはごもっともなのだが、工場には工場側の事情もあって、大増産はなかなか難しいのが現実だ。取りあえず「シエラを発注していて、ノマドへ切り替えられた人はラッキーだったね」と言っておこう(今回のノマド発売にあたり、シエラの納車待ちだった人は正式発表前に変更ができた)。
ところで、265万1000円というノマドの価格は適正なのだろうか? シエラに比べると57万円ほど高い値札が付いている。
かつてない“価格差”
昨今は日本において3ドアと5ドアを用意するSUVが絶滅危惧種なので参考になる例は見当たらないのだが、例えばスズキがかつて販売していた「エスクード」の2000年12月発売モデルだと「3ドア2.0」のMTが163万3000円なのに対して、同グレードの「5ドア」は173万3000円。たったの10万円しか違いがない。当時の新車価格は消費税抜き表示だったので、現在のように消費税込みとしても11万円。当時は3ドアと5ドアの価格差がほんのわずかだったのだ。
もうちょっと新しい、別メーカーのクルマはどうか?
「トヨタ・ランドクルーザープラド」で国内に3ドアがあった120系2005年モデルの価格を見ると、3ドア「RX」のガソリンモデルの価格は294万円で、同等の5ドアとなる「TX 5人乗り仕様」の価格は304万5000円。こちらも10万円(消費税抜き)しか変わらないのだ。ちょっと前まで「3ドアと5ドアの価格差は10万円が相場だった」といってもいいだろう。
そう考えてみると……正式発表後即完売となったジムニー ノマドのシエラとの価格差は「けっこう高い」と判断せざるを得ないところ。リアシートをはじめ、室内の仕立てが違ったり、先進安全システムがバージョンアップされていたりと価格上昇要素はそれなりにあるにせよ……ある意味「3ドアと5ドアの価格差の新たな指針を示した」といっていいのではないだろうか。もしかするとインド・ルピーに対しても安い円相場が効いているのかもしれないけれど(ノマドはインドからの輸入車)。
とはいえ、コンパクトモデルながら今どき260万円台から5ドアの本格オフローダーが買えるというのは、それはそれでリーズナブルに感じられるものまた事実。「3ドアとの価格差」なんてメンドーなことは言わず、欲しければノマドを選ぶというのが適正な選択だろう(あ、買えないか……)。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
注目すべきはフロントドア
ところでドアといえば、ノマドのフロントドアはシエラと同じではなく、5ドア化に合わせて前後幅が短くなっているのもご存じのとおり。約10cm短くなっている。
実はこの“10cm”って、けっこう意味があって、ドアを開けられる範囲に制限がある狭い駐車場では、隣に止まっている車両との間隔が同じでもドアが10cm短いことで開口角度を大きくできる。つまり5ドアは、状況次第で3ドアよりもドアを広く開けられるようになるのだ。これって、毎日の使い勝手として意外に大きな違いとなることだろう。
後席や荷室の広さだけでなく、そういう面も含めてやっぱり5ドアのノマドって日常生活のパートナーとしては向いているなあと思ったりして。欲しくても買えないのだけれど(重要なのでもう一度)。
それから、ノマドのロングボディー(ロングホイールベース)&短いフロントドアを生かしてぜひ追加してほしいバリエーションが「ピックアップトラック」だ。いま、日本ではピックアップトラックの「トヨタ・ハイラックス」が年間1万台近く売れている状況。もしBピラー以降をトラックにして「軽トラより一回り大きなピックアップトラック」として250万円くらいで発売したら、日本でも喜ぶ人はたくさんいそうな気がする。そういえばかつて、スズキは東京オートサロンでジムニーのピックアップトラック仕様を参考出品したことがあったっけ。
(文=工藤貴宏/写真=工藤貴宏、webCG/編集=関 顕也)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代NEW 2025.9.17 トランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。
-
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起 2025.9.15 スズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。
-
新型スーパーカー「フェノメノ」に見る“ランボルギーニの今とこれから” 2025.9.12 新型スーパーカー「フェノメノ」の発表会で、旧知の仲でもあるランボルギーニのトップ4とモータージャーナリスト西川 淳が会談。特別な場だからこそ聞けた、“つくり手の思い”や同ブランドの今後の商品戦略を報告する。
-
オヤジ世代は感涙!? 新型「ホンダ・プレリュード」にまつわるアレやコレ 2025.9.11 何かと話題の新型「ホンダ・プレリュード」。24年の時を経た登場までには、ホンダの社内でもアレやコレやがあったもよう。ここではクルマの本筋からは少し離れて、開発時のこぼれ話や正式リリースにあたって耳にしたエピソードをいくつか。
-
「日産GT-R」が生産終了 18年のモデルライフを支えた“人の力” 2025.9.10 2025年8月26日に「日産GT-R」の最後の一台が栃木工場を後にした。圧倒的な速さや独自のメカニズム、デビュー当初の異例の低価格など、18年ものモデルライフでありながら、話題には事欠かなかった。GT-Rを支えた人々の物語をお届けする。
-
NEW
第844回:「ホンダらしさ」はここで生まれる ホンダの四輪開発拠点を見学
2025.9.17エディターから一言栃木県にあるホンダの四輪開発センターに潜入。屋内全天候型全方位衝突実験施設と四輪ダイナミクス性能評価用のドライビングシミュレーターで、現代の自動車開発の最先端と、ホンダらしいクルマが生まれる現場を体験した。 -
NEW
アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】
2025.9.17試乗記最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。 -
NEW
第85回:ステランティスの3兄弟を総括する(その3) ―「ジープ・アベンジャー」にただよう“コレジャナイ感”の正体―
2025.9.17カーデザイン曼荼羅ステランティスの将来を占う、コンパクトSUV 3兄弟のデザインを大考察! 最終回のお題は「ジープ・アベンジャー」だ。3兄弟のなかでもとくに影が薄いと言わざるを得ない一台だが、それはなぜか? ただよう“コレジャナイ感”の正体とは? 有識者と考えた。 -
NEW
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代
2025.9.17デイリーコラムトランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。 -
内燃機関を持たないEVに必要な「冷やす技術」とは何か?
2025.9.16あの多田哲哉のクルマQ&Aエンジンが搭載されていない電気自動車でも、冷却のメカニズムが必要なのはなぜか? どんなところをどのような仕組みで冷やすのか、元トヨタのエンジニアである多田哲哉さんに聞いた。 -
トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】
2025.9.16試乗記人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。