レクサスLX700h“オーバートレイル”(4WD/10AT)【海外試乗記】
高まる存在感 2025.02.16 試乗記 「レクサスLX」にハイブリッドモデルの「700h」が登場。高級感と高い走破性を両立すべく搭載したのは、新たに開発したパラレル式のハイブリッドだ。日本上陸を前にアメリカで仕上がりをテストした。先に報告しておくと、燃費についてはかなり悲観的である。生きて帰るためのハイブリッド
レクサスのフラッグシップSUVとなるLXに、グローバルでは4代目となるフルモデルチェンジが施されたのは2021年の秋のこと。日本では翌2022年の1月に発売したが、コロナ禍によるサプライチェーンの滞りなどが需要急増と重なり、注文を止めてしまう事態に至ってしまった。
以降、現時点まで受注残への対応が最優先とされてきたが、2025年春に予定される一部改良とともに、受注を再開するメドが立ちつつあるそうだ。そんなタイミングで追加される新たなグレードが700h、つまりハイブリッドということになる。
レクサスのモデルラインナップにおいてラダーフレームの「GX」とLXは、用途や需要面での判断で、これまでハイブリッドパワートレイン自体の設定がなかった。縦置きエンジン向けのシステムとしては「LS」や「LC」用のマルチステージハイブリッドもあるにはあるが、高荷重対応をはじめ極限的な性能要件が重んじられるGXやLXには見合わない。そこで搭載にあたっては新たなシステム構築に迫られた。
結果、選ばれたのはエンジンとトランスミッションの間にモーターを挟み込み、クラッチで駆動制御するパラレル式ハイブリッドだ。コンベンショナルながらエンジンのみ、モーターのみでの独立した駆動制御が可能となるだけでなく、従来の副変速機付きのトランスファーも生かすことができる。言わずもがな「生きて帰ってくる」ために磨き上げてきたメカニズムたちの足をパワーユニットが引っ張るわけにはいかない。パラレル式ハイブリッドの採用にはそういった背景もあるのだろう。
万が一のトラブルにもしっかり対応
LX700hのハイブリッドパワートレインは、万一のシステム失陥に備えて、モーターを切り離してエンジンのみでの退避走行が可能な設計となっている。そのために独立したオルタネーターとセルスターターも配されており、コンディションを保つために定期的に稼働させるパラメーターも仕込まれるなど、不動の事態への対処は念入りだ。ちなみに退避走行時も車高調整やアクティブトラクションコントロールなどは機能するため、悪環境でのトラブルにもしっかり対処できる。
搭載されるバッテリーは信頼性や安定度の高いニッケル水素を採用。容量は1.8kWhと「プリウス」級の倍近くを確保している。ケースは万一の漏水を検知するセンサーも備えた防水構造とすることで、渡河深度も他グレードと同じ700mmを確保した。また、モータージェネレーターの搭載によって延びたパワートレイン長をカバーするために加えた新たなクロスメンバーの板厚や形状を最適化したことで、最低地上高も他グレードと同等に収まっている。
あわせて、LXは全グレードでラジエーターサポート上縁部にパッチ補強を加えたほか、インストリインフォース部へのブラケット追加や板厚アップによるステアリングユニットの支持剛性向上、ボディーオンフレームのボディーマウントの構造変更による低周波振動の低減、電子制御可変ダンパーのバルブ構造変更と再チューニングなど、シャシー側に大きく改良が加えられた。オンロードでのよりすっきりとした走り味を狙っての施しは、下山テストコースでの走り込みによる知見なども基になっている。
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ごく自然にふるまう電動コンポーネント
装備面ではメーターパネルのフル液晶化や電気式シフターの採用によるシフトノブの小型化、それに伴うアドバンストパークの作動スイッチレイアウトの見直しを実施し、マッサージ機能付きシートを前席にも採用。ワイヤレス充電の急速充電対応といった細かなところにも進化の跡がみてとれる。
今回の試乗機会で用意された車両のパワートレインは700hのみ。そのパワートレイン向けに設定された新グレード“オーバートレイル”を主役に乗り味を試すことができた。
3.4リッターV6ツインターボのV35A-FTS型をベースにモーターのアウトプットが加わってのシステム出力は457HP(約463PS)、最大トルクは583lb-ft(約790N・m)にも達する700hだが、パラレル式ハイブリッドで懸念されるのは、エンジンとモーターの稼働を使い分けるクラッチの動的質感への影響だ。リンケージの制御いかんではショックが表れるだけでなく、トルクの変動はオフロード走行時の扱いにくさにもつながってしまう。それはLXにとって致命傷にもなりかねない。
しかし、オンロードでの走りでは注意深く観察していてもパワートレインのそういった癖はまったく感じられなかった。荒天ゆえ遮音の行き届いたキャビンでも雨粒やスプラッシュ等のノイズが聞こえる状況ではあったが、エンジン由来のショックはもとより音の変化にさえも気づかないほどだ。制御のうまさもさておき、万一のシステムダウン時にエンジンのみでの走行も想定してトルコンを残していることによる緩衝効果もあってのことだろう。
燃費よりも走りの質感
モーターによるアシスト効果は、低中速域からの加速で顕著に実感できる。「600」に対して200kg近く重くなった車体をグイグイと押し込むそのトルクの分厚さ、そしてアクセル操作に対する応答のリニアさは、アメリカものの大排気量V8にも十分勝る手応えだ。ただし、車載計で見る限り、燃費に対するモーターの貢献度はさほど高くはなさそうだった。それよりもパワーサプライの側に重きを置いていることは700hというグレード名に込められているというわけだろう。
おあつらえの泥濘(でいねい)地と化したオフロードコースでは、クロールコントロールなどの電子デバイスを用いずともアクセル操作のみでヌタヌタの岩場をじんわりとはい登りつつ、瞬間的に大きな駆動力を要するところでも即応してくれるなど、電気モノならではの緻密な駆動感とレスポンスのよさがプラスになっていることが確認できた。悪路走行時に必須の性能となる発進~ごく低速域の出力調整のしやすさについても、しっかり配慮されたセットアップがなされているようだ。
“オーバートレイル”のほか、“エグゼクティブ”や北米仕様のみに設定される“Fスポーツ ハンドリング”にもちょい乗りすることができたが、いずれも横方向のプルプルとした微振動が抑えられ、車台とキャビンとの一体感が高まるなど、乗り味がよりすっきり方向へとまとめられていることが印象的だった。動的な商品力がより強化されたLXは、クロスカントリーとプレミアムSUVの両カテゴリーにおいて、再び大きな存在感を放つことになるだろう。
(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
レクサスLX700h“オーバートレイル”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5085×1990×1885mm
ホイールベース:2850mm
車重:2779-2839kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:--
トランスミッション:10段AT
エンジン最高出力:415PS(305kW)
エンジン最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)
モーター最高出力:--PS(--kW)
モーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:463PS(340kW)/5200rpm
システム最大トルク:790N・m(80.6kgf・m)/2400rpm
タイヤ:(前)265/70R18 116H M+S/(後)265/70R18 116H M+S(トーヨー・オープンカントリーA/T)
燃費:20マイル/ガロン(約8.5km/リッター、メーカー推定値)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロード&オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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