レクサスLX700h“エグゼクティブ”(4WD/10AT)
大きな違いと小さな違い 2025.07.05 試乗記 「レクサスLX」に新開発のハイブリッドシステムを搭載した「LX700h」が登場。ラダーフレーム付きのクロスカントリーモデルにモーターならではの効率性とドライバビリティーを付与した、ファンとお金持ちには待望の一台である。4人乗りの“エグゼクティブ”をドライブした。悪路走破性を犠牲にしないハイブリッド
南米のジャングルの奥地に建設中のダムを視察する。あるいは、灼熱(しゃくねつ)の砂漠を横断してアラブの石油王を表敬訪問する。
途中でなにかが起これば命に関わりかねない、数百kmのタフな行程に挑むとします。そのとき、レクサスLXと「メルセデス・ベンツGクラス」、そして「レンジローバー」から好きなのをと言われたら、みなさんだったらどれを選びますか?
オートロックが作動するときのガチャンという音がイイんだよね、とか、レザーに施された繊細なステッチの美しさに心が満たされるとか、そういう要素が(クルマ)文化を醸成する大切なものであることは重々承知しつつも、途中で止まったらヤバいわけで、なんならエアコンが故障しただけでも相当にしんどい。となると、やはりここはレクサスLXを選ぶ方が多いのではないだろうか。
2021年に登場した現行モデルに至るまで、レクサスLXにハイブリッド仕様が存在しなかったのは、「どこへでも行くことができて、生きて帰ってこられる」というこのクルマの根幹となる部分を保証するハイブリッドシステムが存在していなかったからだ。優秀なハイブリッドシステムが世界のプレミアムカー市場で戦うレクサスの強みではあったものの、ことLXに関しては、環境性能よりも、必ず生きて帰ってくるということのほうが大切だった。
そしていよいよ満を持して、フルタイム4駆システムやいざというときのLOモードによる悪路走破性能を一切犠牲にしないとうたうハイブリッドシステムが実現した。これを搭載するのが、レクサスLX700hだ。
レクサスLX700hは、後席を2人掛けにしてショーファードリブンで使われることも見据えた“エグゼクティブ”と、アウトドアのアクティビティーを楽しむライフスタイルにふさわしい色や装備を設定する“オーバートレイル”の2グレード展開となるが、今回試乗したのは前者である。
耐久性と信頼性を優先したパラレル式
システムを起動して走りだして、まず感じるのはごく低回転域での濃厚かつ滑らかなトルク感。高級なアイスクリームのように、ねっとり、むっちりとタイヤが回る。低速での力強さはモーターによるもので、専用に開発したパラレル式のハイブリッドシステムがいきなり手柄を披露した。
撮影中、カメラマンから「あと10cm前に動いて」と指示されるような場面で、以前の純エンジン仕様だったらブオンとエンジン回転が高まるところを、すっと動くようになった。今回はオフロードを走る機会はなかったけれど、ガレ場やぬかるみで匍匐(ほふく)前進をするような使い方をしても、モーターがいい仕事をすることが予想できる。
そして、こうした悪路を走った際、ハイブリッドシステムに万が一のトラブルが起きても生きて帰ることができるように、万全の対策が施されている。万全の対策に言及する前に、このクルマが採用したパラレル式のハイブリッドについて、簡単に説明しておきたい。「いまさらハイブリッドの仕組みなんて、百も承知っすよ」という方は、すっ飛ばしてください。
ハイブリッドには大きく3種類があって、ひとつがエンジンとモーターの両方を駆動力として使うパラレル式。エンジンが発電に専念してモーターで駆動するのがシリーズ式で、日産の「e-POWER」がこれに該当する。そして、この2つを組み合わせたものがシリーズ・パラレル式。発電用と駆動用の2つのモーターを持ち、状況に応じてモーターのみ、エンジンのみ、モーター+エンジンと、シームレスに切り替わるトヨタの十八番だ。
これまでのレクサスがこのシリーズ・パラレル式を採用してきたのに対して、LXは耐久性、信頼性を優先したパラレル式を開発した。なにが言いたいかというと、「レクサスだから当然ハイブリッド積むよね」という単純な話ではなく、LXの本質にこだわった専用システムをつくった、ということが言いたい。
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エンジン単体のデキも素晴らしい
発進加速から徐々に速度を積み上げていっても、ハイブリッドシステムの作動は極めてスムーズ。クラッチを備えるモーター兼ジェネレーターが、エンジンとトランスミッションの間に配置されるというレイアウトであるけれど、クラッチのオン・オフの切り替えから生じるショックやノイズは、パワハラ上司のように意地悪な目で確認しても気づかなかった。
そしてこのパラレル式ハイブリッドは、レクサスの他のハイブリッド車とは異なり、オルタネーターとスターターを装備している。これで百万が一、なにかあってもエンジンだけで生きて帰ってこられる。
また、ハイブリッドシステム用のバッテリーはトレイでガードされ、浸水を防ぐように工夫されている。これによりレクサスLX700hの渡河性能は700mmと、エンジン仕様と同等を確保している。
高速巡航やワインディングロードでは、3.4リッターV型6気筒ターボの伸びやかな加速を堪能できる。トゥルルルルルという、ただ滑らかなだけでなく心地よいビートのある回転フィールと、朗らかで抜けのよい排気音に、昭和のクルマ好きはついニヤリとしてしまう。
10段ATは、もてなしの心を持っているかのように感じる。のんびり走っているときには早め早めにシフトアップして回転を引き下げ、つまりノイズと燃費も引き下げ、オーナーに寄り添う。いっぽう、アクセルペダルを踏み込むと、この行動を予知していたかのように素早くギアを落とし、望んでいた加速を提供する。まるで主人が出かけることを察知して事前に草履を温めるようなキメ細やかな心配りだ。
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燃費への貢献度は今ひとつ
ハイブリッド化による重量増に対応すべくクロスメンバーを新設するなど、ボディーや基本骨格にも手が入っているという。ただし、乗り心地やハンドリングに関しては、エンジン仕様と大きな差は感じなかった。あるいは、エンジン仕様と同レベルのパフォーマンスを維持するために、ボディーにまで手を加えたと考えるほうが適当なのかもしれない。
現行LXがデビューしたときには、オンロードはもちろん、オフロードでの乗り心地まで整っていることに驚いたけれど、懐の深いゆったりとしたフィーリングはハイブリッド仕様も共通だ。ステアリングホイールを切ったときの反応も素早く、ラダーフレーム構造特有のボディーと基本骨格が別々に動くような感覚もかなり抑えられている。
ところが、“エグゼクティブ”だから後席の快適性も確認しようと後ろに乗ったら、運転席ではあまり意識しなかった“ラダフレ感”が、ぐいっと押し寄せてきた。かなり上下に揺さぶられるし、突き上げもある。足元スペースも国産のフルサイズミニバンほどは広くないから、密林や砂漠で使うエグゼクティブ以外は、「アルファード」のほうが安楽だろう。
ま、とはいえ、300m防水のダイバーズウオッチと同じで、本気でこだわったモノを使いたいという本物志向が、レクサスLXの人気の理由かもしれませんが。
ちなみに東京から富士五湖周辺までを高速道路で往復し、富士山麓のワインディングロードを走り回った321.6kmトータルの燃費は7.1km/リッター。それほどガンガン回したわけではないのに、思った以上に伸びなかった。伸びなかったというより、過去記事を見ると佐野弘宗さんがレクサス「LX600“オフロード”」を約500km試乗したときの燃費が7.1km/リッターとある(参照)。同じじゃないか……。
WLTCモードの燃費を比較すると、LX600の8.0km/リッターに対して、LX700hは9.3km/リッターだから、約16%の違いがある。自分のアクセルワークが拙くて燃費の悪化を招いたことは認めるとして、今回の試乗に関していえば、ハイブリッド化の恩恵は燃費改善よりも低速域でのドライバビリティー向上にあった。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
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テスト車のデータ
レクサスLX700h“エグゼクティブ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5100×1990×1895mm
ホイールベース:2850mm
車重:2770kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:10段AT
エンジン最高出力:408PS(300kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
モーター最高出力:54PS(40kW)
モーター最大トルク:290N・m(29.5kgf・m)
システム最高出力:457PS(336kW)
システム最大トルク:790N・m(80.6kgf・m)
タイヤ:(前)265/50R22 109V M+S/(後)265/50R22 109V M+S(ダンロップ・グラントレックH/T 31)
燃費:9.3km/リッター(WLTCモード)
価格:2100万円/テスト車=2141万0300円
オプション装備:ボディーカラー<マンガンラスター>(16万5000円)/オーナメントパネル アートウッド<鷹羽>(11万円)/レクサスチームメイト アドバンストパーク+パーキングサポートブレーキ<周囲静止物>(3万3000円) ※以下、販売店オプション 盗難防止セットB<ホイールロックナット、ハンドルロック、カーロック>(10万2300円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1145km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:321.6km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.1km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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