第412回:フランスでちょっと見えた第二次自動車革命!!(後編) 〜ニッポンよ、これからは“脱欧入亜”たれ!
2010.10.18 小沢コージの勢いまかせ!第412回:フランスでちょっと見えた第二次自動車革命!!(後編) 〜ニッポンよ、これからは“脱欧入亜”たれ!
なぜ? あまりに強気&前向きなドイツ!
さてと、パリサロン報告の後半は日本車というか、日本人のメンタリティに関わるお話をば。
実は2010年のパリサロンで真価を感じたのは、前回お伝えしたEV化を推し進めるフランス系メーカーだけでなく、隣国ドイツのメルセデス・ベンツもあった。同社は、大胆にも今を「自動車の二度目の発明の時代」と位置づけ、正常進化した2代目「CLS」のほかに、第2の生産電気自動車モデル「AクラスE-CELL」や、smartブランドから「car2go」なる新コンセプトと、なんと電気スクーターの「eスクーター」、電動アシストサイクルの「eバイク」まで発表!
なんでベンツが二輪? と思いきや、ディーター・ツェッチェCEOは「われわれは自動車の前に、オートバイを発明していた」とプレゼンで誇らしげに語り(実際1885年にゴットリープ・ダイムラーが製作)、その上、今年を“自動車発明125周年”と銘打って、暗に自分たちがパイオニアであることをアピール。そのプレゼン上手というか、我田引水ぶりには少々あ然とさせられたが、見習うべき超前向きな考え方であり、根拠にはそれなりにうなずけるものがあった。
ツェッチェ氏いわく、今のダイムラーグループはリーマンショックの反動もあって、販売台数が10カ月連続で伸びていることに加え、冷静に市場を分析したところ、グローバル自動車保有台数が2010年から2035年までで、ほぼ“倍増”すると予測できるという。
理由は主に中国やブラジル、インドなどBRICS関係の伸びだが、それは経済発展や人口増加だけでなく、ダイムラーが自動車を「車輪を持った資本主義」と読み解いた点にもある。単なる生活の道具ということ以上に、個人の自由を広めるために必要不可欠なアイテムでもあり、必要性はわれわれが思っているより高いのだと。つまり、発展途上国の資本主義革命にはなくてはならないものなのだ。
これは小沢的には非常にツボを突いた考えで、なるほど……と思わされると同時に、最近フォルクスワーゲングループが発表した「2018年に世界販売を1000万台に」という、超ビッグな目標をも裏付けてくれた。
何かと日本にいると斜陽にしか見えない自動車産業だが、見ようによっては盛り上がりはこれからであり、世界的には“第二の変革期”でもある。ダイムラーによると、2010年に9億万台の自動車市場は2035年には18億台!! に達するという。少々マユツバな部分もあるが、それくらい野望を持っているというのは、なんともうらやましいお話。比べて、日本メーカーやマスコミのなんと謙虚すぎることか!
よく半分残ってるコップの水に対して「まだ半分ある」と考えるか「もう半分しかない」と考えるかって問いかけがあるけど、日本人、クルマに対して少々ネガティブすぎるのではあるまいか? ますますもって世界に出ねば! と思う小沢なのであった。
2万人登録のカーシェアリング
そのほか、ダイムラーブースで面白かったのは、新コンセプト「car2go」だ。
これは簡単に言うと、「スマート・フォーツー」を使ったカーシェアリングのこと。絵に描いた餅ではなく、すでに2009年春からドイツのウルムで行われていて、登録利用者は2万人もいるという。市の総人口に対し、1割以上というからかなりのもの。
ポイントは、いわばインターネット時代のカーシェアリングというところ。ホームページ(http://www.car2go.com)でユーザー登録やライセンス発行ができるだけでなく、手持ちのスマートフォンを使って24時間体制で車両位置の確認ができ、キーも必要ないという。
そのうえ、car2goのノウハウでもって、今後パリとその周辺で行われる大規模カーシェアリング計画「オートリブ」の仕事も獲得したそうで、まさにある種の自動車革命というか、社会システムの転換でもある。
前々から小沢は思っていたが、クルマはもはや車両単体ではなく、街全体、道全体、国全体で考えなければ進化できなくなりつつある。だからこそcar2goを発表したのも、世界に冠たる大都市=パリだったのではないだろうか。
たしかに今回のパリショーで出た新型「メルセデス・ベンツCLS」や「BMW X3」、同じくBMWの「6シリーズコンセプト」もよかったけど、私の心に一番残ったのはドイツメーカーの前向きっぷりとcar2go。このクルマと社会と人の三位一体ぶりが、21世紀の真の自動車革命なのかもしれない。
“脱亜入欧”ではなく“脱欧入亜”!
そしてさらなる新発想というか、気づきを与えてくれたのが、先輩ジャーナリストであり、いつも先行く清水和夫さんとのショー後の雑談だ。
清水:あのね小沢さ。他に今回のパリで何か気づかなかった?
小沢:ぶっちゃけ、日本車ブースがますます地味に感じましたね。トヨタは相変わらずのハイブリッド攻勢で、「レクサスCT200h」は正直新鮮味がなかったし、あとは「ラクティス」の後継車「バーソS」ぐらい。ホンダはホンダで目玉が「フィットハイブリッド」(現地名「ジャズハイブリッド」)1台な上、社長のプレゼンさえなかったでしょう。そうじゃなくても凱旋門の周りを走ってても、日本車のあまりの少なさにあ然としましたね。
清水:でしょう? 日本の自動車業界はヨーロッパに進出して何十年もたつけど、ほとんどシェアが増えてないんだよ。WRCやってもF1やってもさほど効果的じゃなかったし、これからは円高でますます厳しくなる。逆に韓国は先日EUと結んだFTA(自由貿易協定)もあって、ますます有利になりつつある。
小沢:どうすればいいんですかね?
清水:俺はもうそろそろヨーロッパを向いてクルマ作りするのを控えた方がいいと思うのね。今までのように“脱亜入欧”で、ヨーロッパ、アメリカに追いつけ追い越せも結構だけど、それだけじゃあと100年たっても追い越せない。
小沢:じゃ、どっち向くんですか。
清水:そりゃインドであり中国であり、つまりアジアでしょう。今後はもっと自分たちの技術を使って新興国の自動車産業のリーダーになるべきなんだよ。すでにインドじゃスズキががんばってるし、中国にも進出してる。でも、本気でお手本として目指しているのはいまだ欧米。その姿勢を変えたら、本当の意味で日本の自動車産業が元気になり、トップになれる可能性がある。技術的にもまだまだ日本の自動車産業、特に部品メーカーは宝の山。俺はそういうことをもっと訴えていこうかと思う。
小沢:なるほど。これからは“脱欧入亜”だと。
実際、パリサロンでの日本メーカーブースの地味さ加減といったらなく、すでに韓国の現代や起亜の方が華やかなくらいだった。欧米での販売台数も、日本車は確実に韓国車に脅かされつつあり、品質以上に価格競争力の点で不利になってきている。
しかし、それはあくまでも欧米市場を見た時の話。小さいクルマを作る技術、小さいエンジンで上手に走る技術、そのほか細かい効率化技術では、いまだ日本は勝っていると清水さんは言う。
詳しくは今後勉強していかなければ分からないが、見方を変えれば世界は変わるのは本当だろう。
マスコミを含め、暗いニュースが多いニッポン自動車業界だが、見方を変えれば明るい。コップの水は、まだ残っているのだ!!
そんな、前向きパワーをもらった2010年パリサロンなのでした!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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