フェラーリが「296スペチアーレ」「296スペチアーレA」を世界初公開

2025.04.29 自動車ニュース 西川 淳
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フェラーリ296スペチアーレ
フェラーリ296スペチアーレ拡大

伊フェラーリは2025年4月29日、プラグインハイブリッドスポーツカー「296GTB」「296GTS」の高性能バージョンとなる新型車「296スペチアーレ」「296スペチアーレA」を発表した。

「296スペチアーレA」(写真左)と「296スペチアーレ」(同右)。
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「296スペチアーレA」(写真)、「296スペチアーレ」ともに、最高出力700PSの3リッターV6ターボエンジンをベースとするハイブリッドシステムを搭載。システム最高出力880PSを発生する。
「296スペチアーレA」(写真)、「296スペチアーレ」ともに、最高出力700PSの3リッターV6ターボエンジンをベースとするハイブリッドシステムを搭載。システム最高出力880PSを発生する。拡大
0-100km/hの加速タイムはともに2.8秒。0-200km/h加速については「296スペチアーレA」(写真)が7.3秒、「296スペチアーレ」が7.0秒と公表される。
0-100km/hの加速タイムはともに2.8秒。0-200km/h加速については「296スペチアーレA」(写真)が7.3秒、「296スペチアーレ」が7.0秒と公表される。拡大
「296スペチアーレ」のインテリア。
「296スペチアーレ」のインテリア。拡大
内装は、アルミニウムとカーボン材を多用することで軽量化が図られている。シンプルなデザインのドアパネルも特徴のひとつ。
内装は、アルミニウムとカーボン材を多用することで軽量化が図られている。シンプルなデザインのドアパネルも特徴のひとつ。拡大
「296スペチアーレA」のインテリア。
「296スペチアーレA」のインテリア。拡大
296スペチアーレ
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296スペチアーレA
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296スペチアーレA
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296スペチアーレ
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296スペチアーレ
296スペチアーレ拡大
296スペチアーレ
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「296スペチアーレA」と筆者。フェラーリのモータースポーツ活動の結晶ともいえる特別な跳ね馬を前に、その走りへの期待は高まるばかりだ。
「296スペチアーレA」と筆者。フェラーリのモータースポーツ活動の結晶ともいえる特別な跳ね馬を前に、その走りへの期待は高まるばかりだ。拡大

さらなるドライビングファンを求めて

今から3年前のこと。2021年にデビューした296GTBをスペインでテストした。サーキットやカントリーロードで心ゆくまでそのパフォーマンスを楽しんだのち、ディナーを楽しみながら思ったことが「これのスペチアーレはきっとすごい」だった。

フェラーリは、まずはスタンダードモデルを発表。2、3年後にその高性能版をリリースする。高性能スーパーカーブランドの今や常識だ。ベースモデルの出来が良ければそのぶん、スペシャルモデルへの期待値も上がる。われわれメディアに限らず、カスタマーだってそうである。

そんなまだ見ぬ296シリーズの高性能版を、ファンやカスタマーはシンプルにVS(バージョン・スペチアーレ)もしくはスペチアーレと呼んでいた。

マラネッロが発表した296の高性能グレード名もまたストレートに296スペチアーレ、296スペチアーレA(アペルタ=オープン)だった。あまりにひねりがなさすぎて驚く。しかも以前に一度使った名前である(「458スペチアーレ」および「458スペチアーレA」)。マラネッロのネーミングといえば行き当たりばったりな気もするけれど、それでもいつもはもう少し驚かせてくれたものだ。今回はちまたでうわさになっていた名前で、いくら商標登録情報である程度は絞られていたとはいうものの、まさかそのままとは……。

そんなシンプルなネーミングの理由をボードメンバーのエンリコ・ガリエラ氏は、「今回は“みんなが予想したとおりのモデル”であったし、顧客もずっと『スペチアーレはいつ出るんだ?』と言っていたから」と、ちゃめっ気たっぷりに語る。さすが、ローマやポルトフィーノといった地名でもかっこよく響かせるブランドだ。次はどこ?

けれども実際に296スペチアーレを見てそのスタイルには驚かされた。高性能版というからには「296チャレンジ」や「296 GT3」のようなエアロデバイスてんこ盛りだと思っていた。このところのスペシャルモデル、「SF90XX」や「F80」のように。

ところが予想に反して、そのスタイルにはスタンダードモデルのエレガントさがそのまま残されている。スワンかダックか知らんが禍々(まがまが)しいリアウイングはなく(それについてはドイツ人ジャーナリストが、なぜ付けなかった? と執拗<しつよう>に質問した)、車体の下方とフロントセクションのダクト類が目立つ程度。オトナのリアルスポーツカーデザインだ。

もちろん、開発陣が空力向上を諦めたわけでも、カーボンウイングをケチったわけでもない。空力は厳密に鍛え上げられ、軽量化も徹底した。例えばフロントボンネット上のダクトはエアロダンパーという新たな装備で、従来のSダクトに代わるもの。ダウンフォースを得るのではなく、スタビリティーを高めることでハンドリング性能を向上させた(ダウンフォースはバンパーサイドのスポイラーで稼ぐという)。ラゲッジスペースを確保しつつ性能を上げる。実にロードカーらしい工夫じゃないか。

リアセクションではボディーサイドに回り込んだ控えめなウイングが特徴だ。これにスタンダードモデルにも存在したアクティブスポイラー(3段階となり反応速度も速くなった)を組み合わせることで、ダウンフォース総量はスタンダードに比べ2割増し(250km/h走行時で435kg)。しっかり狙った数値を確保する。ちなみにリアセンター出しのエキゾーストシステムはF80風だ。

内装も極めてシンプルだ。センターコンソールは直線的にデザインされ、ドアのインナートリムもシンプル。カーボンファイバーやアルカンターラの使用量が全体的に増し、アルミニウムも多用されている。滑り止め付きのフロアパネルは“スペチアーレ”の定番だ。

296チャレンジ用120度3リッターV6ツインターボをベースにハイブリッド化されたパワートレインにも注目したい。エンジン単体で最高出力700PS/8000rpm、最大トルク755N・m/6000rpmとしたうえ、電気モーターの出力も上がっており、システム総合で最高出力880PSに。フェラーリのミドシップRWDロードカー史上、最高スペックとした。これに専用セッティングの8段デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせる。空力性能と同様、F1や世界耐久選手権、GT3、チャレンジといったモータースポーツ活動の結晶だろう。

マラネッロが最もこだわったのは、ドライビングファンのさらなる追求だった。そのために軽量化がすべてに優先された。エンジンをはじめ、グラム単位の減量作戦は多岐に及ぶ。さらにドライビングファンの重要な要素として開発陣は、ハンドリングや加減速の性能とともに、サウンドを挙げていた。

先日、久しぶりにドライ路面のフィオラノを296GTBで走った。それはめくるめく体験で、あらためて296のスポーツ性を確認した。あれより、ファン。あれより、グッドサウンド。早く試してみたいものである。

(文=西川 淳/写真=フェラーリ)

【フェラーリ296スペチアーレ/296スペチアーレAのスペック】
(※印のみ296スペチアーレAの値でほかは共通)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4625×1968×1181mm
ホイールベース:2600mm
乾燥車重:1410kg(※1490kg)
駆動方式:MR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:700PS(515kW)/8000rpm
エンジン最大トルク:755N・m(77.0kgf・m)/6000rpm
システム最高出力:880PS(648kW)
eDriveモードでの最高出力:154PS(113kW)
タイヤサイズ:(前)245/35ZR20/(後)305/35ZR20(ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2)
ブレーキサイズ:(前)398×223×38mm/(後)360×233×32mm
燃料タンク容量:65リッター
最高速度:330km/h
0-100km/hの加速時間:2.8秒
0-200km/hの加速時間:7.0秒(※7.3秒)
燃料およびCO2排出量:ホモロゲーション取得申請中

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