日本での試験走行にトヨタとの協業 Waymoの進出で日本の“自動運転”はどう変わる?
2025.05.16 デイリーコラム 拡大 |
Alphabet(アルファベット)傘下のWaymo(ウェイモ)が、日本市場に根を張るのではないか――。トヨタによるWaymoとの戦略的パートナーシップの発表(参照)からは、そんな印象を受けた。Waymoは2009年のGoogle社内プロジェクトを起点に、2016年に分社化して誕生した企業だ。2024年末には、タクシー配車アプリのGOやタクシー会社の日本交通と、自動運転技術に関するパートナーシップ締結を発表している。これから日本市場はどう動いていくのだろうか?
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自動運転のパートナー選びで重要なこと
Waymoは自動運転タクシー、つまりロボットタクシーの商用利用を世界で初めて実現した企業だ。決済機能や配車機能など、タクシー固有の機能もあるが、自動運転に関する技術はオーナーカーと共通する部分も多く、Waymoはオーナーカーへの参入を目指しているとされる。いっぽうのトヨタは、「ジャパンタクシー」などの商用モデルも擁するものの、主軸は無論オーナーカーだ。2025年4月30日付のトヨタのプレスリリースには「トヨタの将来の市販車両の自動運転技術の向上を、共に模索」とあり、最終的なターゲットはオーナーカーにあるとみられる。
そんな両社を結び付けるキーワードは、「安全」だ。Waymoは自動運転技術「Waymo Driver」を搭載した車両を、フェニックスやサンフランシスコなど、米国内の複数の地域で運行。これまでの総走行距離は数千万マイルに達する。その間にいくつかのアクシデントはあったものの、上述の2都市での運行データを人間が運転した場合と比較すると、負傷を伴う衝突は実に81%も減少したという。
この数値を引き合いに、トヨタは「Waymoが運行する場所において道路の安全性を高めている」としている。交通事故ゼロをテーマに掲げ続けるトヨタにとって、シミュレーションや研究段階ならばともかく、実社会を走行する車両の開発においては、「安全」に対する感覚を共有できることが、パートナー選びの重要な条件となる。Waymoが打ち出した81%減という明確な数字は、トヨタの目に魅力的に映ったのではないか。
ロボットタクシーではゼネラルモーターズ傘下のCruise(クルーズ)も気を吐いたが、2024年末にGMは事業撤退を発表。Cruiseと共同でロボットタクシー事業を展開する予定だったホンダも、計画中止を余儀なくされた。GMは撤退の理由に不採算を挙げるが、莫大(ばくだい)な赤字の背景には、2023年10月の人身事故がある。それ以前に発生した複数の事故もあって安全対策の重要性が指摘されていたなかで、被害者を約6mにわたって引きずる人身事故を起こし、開発を止めざるを得なくなったのだ。
残念ながら、今日の技術で事故ゼロの実現は難しい。だからこそ、被害を最小限にとどめる仕掛け、現実的な安全対策が必要になる。トヨタとWaymoは、オーナーカーの自動運転の安全をどうつくり込んでいくのか。そして協業の成果を自社のプロダクトにどう反映させていくのか。今後の展開が楽しみだ。
日本市場とWaymoのかかわり
冒頭でも触れたとおり、Waymoは2009年にGoogleが立ち上げた、自動運転に関する社内プロジェクトが起点になっている。このプロジェクトには米国の国防高等研究計画局(DARPA)が2005年に開催したロボットカーレース「DARPAグランドチャレンジ」に出場したエンジニアが参画しているので、その意味では、20年にわたる研究開発の歴史があるといっていいだろう。
2010年代に入ると、Googleのプロジェクトチームは公道を使った走行実験を開始する。使用されたのはトヨタの「プリウス」で、武骨なセンサーを外付けした改造車はいかにも実験車両という風情だった(ちなみにトヨタは、2013年のCESでレクサスをベースにした自動運転の試作車を展示している)。
2016年12月、それまでの実験成果をもってGoogleから分社化するかたちでWaymoが誕生。2018年にフェニックスで世界初となるロボットタクシーの運行を開始し、2020年には完全無人化を実現した。その後は総走行距離を伸ばしつつ、エリアを広げている。米国内ではフェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルス、オースティンで現在運行中となっており、アトランタとマイアミもそこに加わる予定だ。
日本でも、2025年4月14日から港区や新宿区などでWaymoの車両が試験走行を開始した。当面は日本交通のドライバーが乗車する有人走行だ。日本ではロボットタクシーの運行に向けた法整備が必要で、今回の試験走行にはロビー活動の側面もあるだろう。この5月上旬には、平 将明デジタル大臣が米国サンフランシスコでWaymoに乗車したとの報道が出ており、法整備を進めたい意向を示している。トヨタとWaymoの戦略的パートナーシップも含め、これらは個別の事案ではなく、ひとつの大きなうねりと捉えるべきだ。Waymoという黒船の到来が、ロボットタクシーの実用化、ひいてはドライバー不在の「レベル4」自動運転車両普及への道を開くことになるかもしれない。
(文=林 愛子/写真=Waymo、日本交通/編集=堀田剛資)
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林 愛子
技術ジャーナリスト 東京理科大学理学部卒、事業構想大学院大学修了(事業構想修士)。先進サイエンス領域を中心に取材・原稿執筆を行っており、2006年の日経BP社『ECO JAPAN』の立ち上げ以降、環境問題やエコカーの分野にも活躍の幅を広げている。株式会社サイエンスデザイン代表。
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