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新型「トヨタRAV4」をカーデザインの識者はどう見たか? トヨタが誇る世界戦略車の〇と×

2025.06.05 デイリーコラム 渕野 健太郎
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より幅広い層の取り込みを目指す

東京の有明アリーナで、6代目となる新型「トヨタRAV4」がワールドプレミアされました(参照)。グローバル展開している車種が日本で発表されるのは、トヨタ以外ではかなり珍しいことになってしまいましたね。RAV4は180の国と地域で販売されている文字どおりのグローバル車であり、また初代からの累計販売台数はなんと1500万台ということで、まさにトヨタの基幹モデルです。

会場には歴代のRAV4がずらりと並んでいましたが、これはまさに乗用SUVの歴史そのものです。3ドアの初代が出た際は「ニッチな商品」とみられていたのですが、ストレッチされた5ドア版が追加になったころから、徐々に一般の人々へ浸透していった感じがします。この時期は、ホンダでは「CR-V」、スバルでは「フォレスター」が発表され、後に各社の基幹モデルに成長するクルマが、一斉に誕生しました。

さて新型RAV4は、先代のラギッドでスポーティーだったデザインに通ずる部分もありながら、上級感といいますか、落ち着いた印象も受けました。「Life. Is an Adventure」が開発コンセプトなのですが、「だれもがこのクルマでそれぞれのアクティブな生活を楽しんでいだだけることを目指しています」とプレスリリースにもあるとおり、先代よりも幅広い顧客層を想定しているものだと感じます。

東京・有明アリーナで開催された発表会より、ステージ上に飾られた6代目「トヨタRAV4」。
東京・有明アリーナで開催された発表会より、ステージ上に飾られた6代目「トヨタRAV4」。拡大
歴代「RAV4」と往年のコンセプトモデル。1994年に登場した初代RAV4(写真向かって右から3番目)は、当時は“ライトクロカン”と呼ばれた都市型SUVの先駆けだった。
歴代「RAV4」と往年のコンセプトモデル。1994年に登場した初代RAV4(写真向かって右から3番目)は、当時は“ライトクロカン”と呼ばれた都市型SUVの先駆けだった。拡大
意匠の異なる3台の「RAV4」と、トヨタの発表会ではおなじみのサイモン・ハンフリーズ チーフブランディングオフィサー。デザイン領域統括部長も務めるサイモンさんだが、今回のプレゼンテーションでは、その話題はもっぱらソフトウエアプラットフォーム「Arene(アリーン)」に関してだった。
意匠の異なる3台の「RAV4」と、トヨタの発表会ではおなじみのサイモン・ハンフリーズ チーフブランディングオフィサー。デザイン領域統括部長も務めるサイモンさんだが、今回のプレゼンテーションでは、その話題はもっぱらソフトウエアプラットフォーム「Arene(アリーン)」に関してだった。拡大
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強さや塊感が見事なリアまわり

具体的に実車を見ていくと、サイドビューでは、フロントからドアの部分と、リアフェンダーから後ろの部分とが、明確に分かれたデザインをしていますね。先代の、明快なプラン(上から見た図)の動きによる立体嵌合のデザインに比べると、割と普通なドアプランをしていますが、ボディー下部の強い“下向き面”のおかげで、リフトアップ感もあります。ショルダー部はフロントから比較的水平に通っていて上質感がありますが、ボディー下部のダイナミックな動きのおかげでアクティブ感もあり、うまく両立できているのではないかと思いました。

リアのシルエットは、スポーティーだった先代よりリアゲートガラスやDピラーが、だいぶ立っていますね。荷室容量の拡大は市場要望なのだろうと思いますが、これにより、全体のシルエットも落ち着いた印象になりました。ただ、おそらくボンネットやフロントガラス、Aピラーの位置などはほとんど変わっておらず、先代の面影も感じるシルエットをしています。

私が特に魅力を感じたのは、リアのデザインです。張り出したフェンダーと効果的な面取り、シームレスにつながるリアゲートガラスとリアコンビランプまわりなど、塊から削り出したような強さを感じました。また、バンパーコーナー下部の切れ上がりは、先代と同様にSUVとしてのリフトアップ感に寄与しています。この強い塊感をフロントでも表現できていれば、より統一感のあるデザインになったのではないか、と思います。

新型「RAV4」の広報画像。リアドアでキックアップするキャラクターラインにより、車体が前後に二分されている。
新型「RAV4」の広報画像。リアドアでキックアップするキャラクターラインにより、車体が前後に二分されている。拡大
ボディー下部を見ると、ドアパネルやリアコーナーなど、各所が下向きの面となっており、クルマの“塊感”を強調。ダイナミックなイメージや力強さが表現されている。写真はスポーティーな「GRスポーツ」。
ボディー下部を見ると、ドアパネルやリアコーナーなど、各所が下向きの面となっており、クルマの“塊感”を強調。ダイナミックなイメージや力強さが表現されている。写真はスポーティーな「GRスポーツ」。拡大
インテリアも先代と比べて明確に進化。トレンドである横基調のインパネもラギッドな雰囲気出しがうまく、トレイなど機能的な面も充実しており、とても秀逸に感じられた。
インテリアも先代と比べて明確に進化。トレンドである横基調のインパネもラギッドな雰囲気出しがうまく、トレイなど機能的な面も充実しており、とても秀逸に感じられた。拡大

みんな同じ顔じゃなくてもいいのでは?

そのフロントデザインですが、トヨタが推し進めている「ハンマーヘッド」のヘッドランプがRAV4にも採用されましたが、ランプの形がきゃしゃなので、まわりの造形と合わない印象を持ちました。開発中にさまざまなアレンジを考えたのだと思いますが、この部分のみ、造形よりグラフィックを優先したような見た目になっています。また、フロント全体のシルエットもやや煮え切らない印象で、本当はもっと低く、スポーティーにしたかったんじゃないかな? と、実車を見ながらいろいろ考えました。

また、このクルマは3つのグレードをほぼバンパーのみでつくり分けています。ただでさえアイデア展開がしづらい形状のヘッドランプを持つのに、さらにバンパーでつくり分けるというのは相当に難しく、このようなお題をわたされた現場デザイナーの苦労がしのばれます……。

トヨタは今回のRAV4を含め、幅広い車種にこのハンマーヘッドデザインを展開していますが、個人的には車種ごとの価値を鑑みて、もっとデザインに幅を持たせてもよいのでは、と思います。そもそもプレミアムブランドでないトヨタが、顔のデザインを統一する理由がいまいち理解できていません。シンプルに車種ごとの個性に応じたデザインができれば、おのおののクルマがさらに魅力的になるのではと感じました。

(文=渕野健太郎/写真=webCG/編集=堀田剛資)

ダイナミックな造形のリアまわりに対し、フロントはやや造作が細かく、大げさに言うと別のクルマのような感覚を覚える。さらにバンパーのつくり分けで3つも顔を用意しているものだから、ちょっと印象が弱い。
ダイナミックな造形のリアまわりに対し、フロントはやや造作が細かく、大げさに言うと別のクルマのような感覚を覚える。さらにバンパーのつくり分けで3つも顔を用意しているものだから、ちょっと印象が弱い。拡大
そもそも、ラギッドなSUVにまで「ハンマーヘッド」ランプを使う必要はあるのだろうか?
そもそも、ラギッドなSUVにまで「ハンマーヘッド」ランプを使う必要はあるのだろうか?拡大
本稿のとおり、いろいろ気になるところはあるものの、SNSなどを見ると、ちまたの評判は悪くない様子。いずれにせよ、発売後のマーケットの反応が楽しみな一台である。
本稿のとおり、いろいろ気になるところはあるものの、SNSなどを見ると、ちまたの評判は悪くない様子。いずれにせよ、発売後のマーケットの反応が楽しみな一台である。拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

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