ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド(FF/7AT)/キャプチャー エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH(FF/4AT+2AT)
際立つフレンチモード 2025.06.14 試乗記 マイナーチェンジによってフロントフェイスが“ヴィダル顔”に刷新された、ルノーのコンパクトSUV「キャプチャー」が上陸。新たに登場したマイルドハイブリッド車と“輸入SUV燃費ナンバーワン”の座を奪還したフルハイブリッド車のステアリングを握り、その進化を確かめた。“ヴィダル顔”の第1世代
日本上陸したキャプチャーのマイナーチェンジ(マイチェン)モデル最大の特徴は、ご覧のように、これまでとはがらりと様相を変えたフェイスデザインだ。切れ長ヘッドランプに、おなじみのロザンジュ(ひし形)を2分割し(て左右を入れ替え)てデイタイムランニングランプにあしらった新しいデザインテーマは、2023年4月に公開された「ルーテシア」のマイチェンと同年6月の新規モデル「ラファール」から取り入れられた。
ちなみに、2020年7月にプジョーからルノーに移籍した現ルノーブランド・デザインディレクターのジル・ヴィダル氏が、はじめて白紙から手がけた商品はラファールといわれるから、このヘッドランプやフロントバンパーが“ヴィダル顔”の第1世代ということか。
いっぽうで、フェイスにまつわる要素すべてを強引に統一しないのも、ヴィダル世代のルノーの特徴といえるかもしれない。最初のマイチェン版ルーテシアやラファール、あるいは2025年に本国でマイナーチェンジした「オーストラル」や「エスパス」が大きめのセンターグリルを残すのに対して、このキャプチャーには左右ヘッドランプ間にグリルらしいグリルは備わらず、かわりにひし形のモチーフをグラデーションのようにちりばめている。
このキャプチャータイプのフェイスは、2023年9月に新たに電気自動車となって登場した5代目「セニック」が最初で、キャプチャーは翌2024年2月に発表。さらに同年5月デビューの「シンビオズ」も、これに似たフェイスデザインとなっている。そして、ルノーはこれらとは別ラインとして「5(サンク)」「4(キャトル)」、そして次期「トゥインゴ」と、往年のデザインを復刻させたようなコンパクト電気自動車シリーズの展開をはじめている。
……というのが近年のルノーデザインの概要なのだが、ここにあげた車名のうち、今の日本で買えるのが今回のキャプチャーだけなのが、なんともはや……である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“輸入SUV燃費ナンバーワン”の座を奪還
エンジンフードからつくり変えられたキャプチャーの新フェイスは、通常のマイチェンの域を超えた力作だが、それ以外の部分のデザインは、イメージ的には大きく変わらない。
リアでは一見するとクリア化されたテールランプ、インテリアでは7インチから10.4インチの縦型となったセンターディスプレイだけが目につく。しかし、実際にはリアバンパーのいわゆるディフューザー部分、あるいはディスプレイ下のエアコン調整パネルもつくり変えられるなど、意外に手が込んでいる。
新しいラインナップは「アルカナ」に続いて、「アルピーヌ」名義のスポーツ系トリムグレードが主流となり、今回のメディア試乗会に用意された試乗車もすべて、その「エスプリ アルピーヌ」だった。エスプリ アルピーヌならではの部分は、外装では19インチの大径ホイールや専用バッジ、内装では青いグラデーション調パネルやうっすらストライプが入ったファブリックなどのダッシュ加飾、専用デザインのシート表皮などである。
パワートレインも、1.6リッター直4ストロングハイブリッドの「フルハイブリッドE-TECH(以下、E-TECH)」と1.3リッター直4ターボという顔ぶれ自体は、従来と変わらず。ただ、1.3リッターはスターター兼発電用のモーターが追加されたマイルドハイブリッド車(MHEV)となり、WLTCモード燃費が17.0km/リッターから17.4km/リッターに向上した。
燃費といえば、エンジンやモーターのスペックが変わらず、技術的改良点もとくに公表されていないE-TECHも、WLTCモード燃費が22.8km/リッターから23.3km/リッターに改善。これによって、WLTCモード23.0~23.2km/リッターをうたって2025年5月26日に上陸した「フィアット600ハイブリッド」に奪われていた“輸入SUV燃費ナンバーワン”の座を、キャプチャーはわずか10日で奪還した(笑)。まあ実質はほぼ引き分けとしても、せっかくなら僅差でも単独トップのほうが気持ちよかろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
19インチホイールが目に留まる
まずはE-TECHから走らせたが、運転席に座って、ひとつ気がついた。それはマイチェン前のキャプチャーE-TECHのメーターパネルは10.2インチの全面液晶だったのに、今回は全車7インチに逆戻りしていたことだ。新しい欧州仕様では縦型センターディスプレイに絡めて、メーターにナビ表示できるようになるなどの機能アップが図られたが、そうした新機能が適用外となる日本仕様は7インチ……ということになってしまうようだ。
新しいキャプチャーでは19インチの大径ホイールがひとつのハイライトになっているのは前記のとおりだが、マイチェン前のホイールは最大で18インチだった。今回のホイール拡大に合わせて、新キャプチャーでは全車でサスペンションのジオメトリーとダンパーの減衰特性、パワステ制御、さらにはバネ類も仕立て直されている。とくに日本に導入されるE-TECHとマイルドハイブリッドについては、ダンパー自体が新タイプになっているとか。
動力性能には変更のないE-TECHだが、カタログ燃費は本国仕様でも向上している。新機軸として、アルカナと同様の「E-SAVE」モードが追加されているものの、これは一定のバッテリー残量をキープする制御を入れることで、上り坂などでのパフォーマンス低下を防ぐ機能だ。燃費への直接的な影響はない。となると、制御の熟成や各部のロス低減、あるいはタイヤの転がり抵抗などの手当てが入っている可能性が高い。
今回は山中湖周辺の山坂道と富士五湖道路での短時間試乗にかぎられたこともあり、改良された(はずの)E-TECHの味わいにとくに変化は感じなかった。電気のみ、電気+エンジン、エンジンのみ……を変幻自在に使い分けるE-TECHは、絶対的な動力性能そのものは特筆するものではないが、かわりにダイレクトでリニア感のあるレスポンスが魅力だ。また、ストップ&ゴーを繰り返す日本的な走りでも燃費がことさらに悪化しないのもいい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
日欧両方での売れ筋モデル
ホイールの19インチ化に合わせて全面リチューンされたシャシーは、このクラスではぜいたくな19インチを無難に履きこなす。乗り心地はそれなりに硬くはあるが、18インチ比での悪化は最低限で、低偏平タイヤならではレスポンスアップを表現したという主張もまあ納得。とくに山道で強めにカツを入れたときの、しなやかさや正確性はさすがのルノー。ただ、逆にダラダラと流す低速での接地感や乗り心地では、18インチの従来型から少し後退した感もあった。
続いて試乗したのは、新たにMHEVとなった1.3リッター直4ターボである。グレードはE-TECH同様のエスプリ アルピーヌだ。E-TECHより車重が100kg弱も軽くてエンジンもパワフルなMHEVは、カタログ上の動力性能値もE-TECHより速い。今回もE-TECHから乗り換えると、あからさまに活発で小気味いい。車重が軽いせいか、総合的な乗り心地も少しだけ良好だった。
もっとも、今回のマイルドハイブリッド機構は12Vの簡便タイプで、乗り味でも変化は最小限。アイドルストップからの再始動はたしかにスムーズで、いわれてみればアクセル操作に対するレスポンスもわずかに好転した感がなきにしもあらずだが、良くも悪くも乗っているだけでは大きな差はない。逆にいうと、これで少しでも燃費が向上しているのなら、メリットも確実にあるということだ。
2020年に欧州のSUVで一番の売り上げを記録した2代目キャプチャーは、現在のルノージャポンのラインナップでも、もっとも数が出ているモデルだそうである。本国では先にマイチェンしたルーテシアを差し置いて(?)、いち早く上陸したのも、それが理由かもしれない。いずれにしても、さすが日欧両方での売れ筋商品ということもあって、今回はマイチェンという言葉から想像するよりは、ずいぶんと力のこもった内容であることは間違いない。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4240×1795×1590mm
ホイールベース:2640mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:158PS(116kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/1800rpm
モーター最高出力:5PS(3.6kW)/1800-2500rpm
モーター最大トルク:19.2N・m(2.0kgf・m)/1800rpm
タイヤ:(前)225/45R19 92V/(後)225/45R19 92V(ミシュランeプライマシー2)
燃費:17.4km/リッター(WLTCモード)
価格:409万円/テスト車=423万7690円
オプション装備:ボディーカラー<グリカシオペM>(5万9000円) ※以下、販売店オプション フロアマットプレミアム<ブラックステッチ>(2万9040円)/ETC1.0<ディスチャージレジスター込み>(2万3650円)/エマージェンシーキット(3万3000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1840km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4240×1795×1590mm
ホイールベース:2640mm
車重:1420kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:4段AT(エンジン用)+2段AT(モーター用)
エンジン最高出力:94PS(69kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:148N・m(15.1kgf・m)/3600rpm
メインモーター最高出力:49PS(36kW)/1677-6000rpm
メインモーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/200-1677rpm
サブモーター最高出力:20PS(15kW)/2865-1万rpm
サブモーター最大トルク:50N・m(5.1kgf・m)/200-2865rpm
タイヤ:(前)225/45R19 92V/(後)225/45R19 92V(ミシュランeプライマシー2)
燃費:23.3km/リッター(WLTCモード)
価格:454万9000円/テスト車=463万4690円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマットプレミアム<ブラックステッチ>(2万9040円)/ETC1.0<ディスチャージレジスター込み>(2万3650円)/エマージェンシーキット(3万3000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1202km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
シトロエンC3ハイブリッド マックス(FF/6AT)【試乗記】 2025.10.31 フルモデルチェンジで第4世代に進化したシトロエンのエントリーモデル「C3」が上陸。最新のシトロエンデザインにSUV風味が加わったエクステリアデザインと、マイルドハイブリッドパワートレインの採用がトピックである。その仕上がりやいかに。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【海外試乗記】 2025.10.29 メルセデス・ベンツが擁するラグジュアリーブランド、メルセデス・マイバッハのラインナップに、オープン2シーターの「SLモノグラムシリーズ」が登場。ラグジュアリーブランドのドライバーズカーならではの走りと特別感を、イタリアよりリポートする。
-
ルノー・ルーテシア エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH(FF/4AT+2AT)【試乗記】 2025.10.28 マイナーチェンジでフロントフェイスが大きく変わった「ルーテシア」が上陸。ルノーを代表する欧州Bセグメントの本格フルハイブリッド車は、いかなる進化を遂げたのか。新グレードにして唯一のラインナップとなる「エスプリ アルピーヌ」の仕上がりを報告する。
-
メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス(4WD/9AT)【試乗記】 2025.10.27 この妖しいグリーンに包まれた「メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス」をご覧いただきたい。実は最新のSクラスではカラーラインナップが一気に拡大。内装でも外装でも赤や青、黄色などが選べるようになっているのだ。浮世離れした世界の居心地を味わってみた。
-
アウディA6スポーツバックe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.10.25 アウディの新しい電気自動車(BEV)「A6 e-tron」に試乗。新世代のBEV用プラットフォーム「PPE」を用いたサルーンは、いかなる走りを備えているのか? ハッチバックのRWDモデル「A6スポーツバックe-tronパフォーマンス」で確かめた。
-
NEW
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(前編)
2025.11.2ミスター・スバル 辰己英治の目利き長年にわたりスバル車の走りを鍛え、STIではモータースポーツにも携わってきた辰己英治氏。今回、彼が試乗するのは「ホンダ・シビック タイプR」だ。330PSものパワーを前輪駆動で御すハイパフォーマンスマシンの走りを、氏はどう評するのか? -
これがおすすめ! 東4ホールの展示:ここが日本の最前線だ【ジャパンモビリティショー2025】
2025.11.1これがおすすめ!「ジャパンモビリティショー2025」でwebCGほったの心を奪ったのは、東4ホールの展示である。ずいぶんおおざっぱな“おすすめ”だが、そこにはホンダとスズキとカワサキという、身近なモビリティーメーカーが切り開く日本の未来が広がっているのだ。 -
第850回:10年後の未来を見に行こう! 「Tokyo Future Tour 2035」体験記
2025.11.1エディターから一言「ジャパンモビリティショー2025」の会場のなかでも、ひときわ異彩を放っているエリアといえば「Tokyo Future Tour 2035」だ。「2035年の未来を体験できる」という企画展示のなかでもおすすめのコーナーを、技術ジャーナリストの林 愛子氏がリポートする。 -
2025ワークスチューニンググループ合同試乗会(前編:STI/NISMO編)【試乗記】
2025.11.1試乗記メーカー系チューナーのNISMO、STI、TRD、無限が、合同で試乗会を開催! まずはSTIの用意した「スバルWRX S4」「S210」、次いでNISMOの「ノート オーラNISMO」と2013年型「日産GT-R」に試乗。ベクトルの大きく異なる、両ブランドの最新の取り組みに触れた。 -
小粒でも元気! 排気量の小さな名車特集
2025.11.1日刊!名車列伝自動車の環境性能を高めるべく、パワーユニットの電動化やダウンサイジングが進められています。では、過去にはどんな小排気量モデルがあったでしょうか? 往年の名車をチェックしてみましょう。 -
これがおすすめ! マツダ・ビジョンXコンパクト:未来の「マツダ2」に期待が高まる【ジャパンモビリティショー2025】
2025.10.31これがおすすめ!ジャパンモビリティショー2025でwebCG編集部の櫻井が注目したのは「マツダ・ビジョンXコンパクト」である。単なるコンセプトカーとしてみるのではなく、次期「マツダ2」のプレビューかも? と考えると、大いに期待したくなるのだ。


















































