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トライアンフ・スピードトリプル1200RS(6MT)

過激なアクションスター 2025.06.15 試乗記 青木 禎之 軽い車体に1.2リッターの大排気量エンジンを搭載した「トライアンフ・スピードトリプル1200RS」。英国の老舗が放つ元祖ストリートファイターが、2025年モデルでさらに進化した。より強力で、よりハイテクなマシンとなったどう猛なネイキッドスポーツを試す。
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“弟分”とは全然違う

「アレッ!? こんなに両足ツンツンだったっけ?」と、トライアンフ・スピードトリプル1200RSのシートにまたがって少し戸惑ったのだが、すぐ勘違いに気がついた。以前乗ったのは「ストリートトリプル」のローダウンバージョン(R Low)でした。似たような異型2灯フェイスだけれど、あちらは排気量765ccのミドルクラス。自分の手足を強化延長するモビルスーツを着たような(着たことないけど)自在なハンドリングと、ほどよく過激な(!?)動力性能に、すっかり魅了されたおぼえがある。すばらしくファンなバイクでした。

そんな心地よい記憶に浸りながら1160ccのスピードトリプルで走り始めると、これはストリートトリプルの兄貴分というより、段違いのモンスター。クラス違いなので当然といえば当然なのだが、199kgのボディーをぶっといトルクで蹴り出すさまは圧巻で、ワイルドな3気筒ユニットは、鋭いビートと強めの振動で気の小さい乗り手をおびえさせる。電光石火のレスポンスと過剰なアウトプットは街なかではいささか剣呑(けんのん)なので、まずはライディングモードを「Rain」にしてひといきつく。にわかにスロットルレスポンスの角が丸くなり、パワーの盛り上がりが穏やかに。電子制御の鮮やかな効きに、21世紀の最新モデルを感じる。

アグレッシブな走りに特化したネイキッドスポーツの「トライアンフ・スピードトリプル1200RS」。2025年モデルでは、エンジン性能のアップ、電子制御の拡充、足まわりの強化と、全方位的な改良が加えられた。
アグレッシブな走りに特化したネイキッドスポーツの「トライアンフ・スピードトリプル1200RS」。2025年モデルでは、エンジン性能のアップ、電子制御の拡充、足まわりの強化と、全方位的な改良が加えられた。拡大
ライダーとバイクの間を取り持つ5インチのTFTフルカラーディスプレイ。計器類としての機能のほか、複雑な電子制御システムの操作画面の役割も担う。
ライダーとバイクの間を取り持つ5インチのTFTフルカラーディスプレイ。計器類としての機能のほか、複雑な電子制御システムの操作画面の役割も担う。拡大
デザインに関しては、ハンドルバーがわずかに幅広く、高くなった点や、軽量化された新型ホイール、新意匠のシートカウルなどが2025年モデルの特徴だ。
デザインに関しては、ハンドルバーがわずかに幅広く、高くなった点や、軽量化された新型ホイール、新意匠のシートカウルなどが2025年モデルの特徴だ。拡大
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時を経るほどに強烈に

トライアンフ・スピードトリプルの初代が登場したのは1994年。ストリートファイターというジャンルと言葉を世に定着させたモデルだ。フルカウルのスポーツバイクを“脱がして”ホットなネイキッドにする手法は、レーサーレプリカ世代にとっては「何をいまさら」だったが、それでもスピードトリプルがワールドワイドに影響を与えた理由としては、映画『ミッション:インポッシブル2』で、トム・クルーズがこのバイクに乗り縦横“上下”に駆け巡ったのが大きかったと思う。派手なアクションシーンに、個性的なバイクがよく映えた。

英国発のストファイは、2021年にモデルチェンジを敢行。一見、鋼管フレームに見えながら、実はアルミツインスパーという不思議な構造はそのままに、直列3気筒は1050ccから1160ccに拡大された。エンジン単体の重量は7kgも軽量化され、最高出力は30PSアップの180PSに引き上げられた。

今回の1200RSはさらに手が加えられ、2025年にリリースされたものだ(参照)。最高出力が3PSアップの183PS/1万0750rpmとなり、3N・m太くなった128N・mの最大トルクは、それまでより250rpm低い8750rpmで発生する。各種電制デバイスがブラッシュアップされたのはもちろん、前後のオーリンズ製サスペンションはセミアクティブ化され、液晶画面から減衰力の調整が可能となった。ステアリングダンパーの装備も新しい。

スポーツライディングを支援する電制システムには、介入の調整が可能なフロントホイールリフトコントロールや、エンジンブレーキコントロール、そしてサーキット走行用に、前輪のスリップと後輪のリフトを許容しながらABSの動作を最適化させる、ブレーキスライドアシストが採用された。
スポーツライディングを支援する電制システムには、介入の調整が可能なフロントホイールリフトコントロールや、エンジンブレーキコントロール、そしてサーキット走行用に、前輪のスリップと後輪のリフトを許容しながらABSの動作を最適化させる、ブレーキスライドアシストが採用された。拡大
Moto2用レーシングユニットのノウハウが取り入れられたという1160ccの並列3気筒エンジンは、高いアウトプットに加えて、軽量・小型の設計も特徴。トランスミッションにはシフトアップ/ダウンの双方に対応したクイックシフターが装備される。
Moto2用レーシングユニットのノウハウが取り入れられたという1160ccの並列3気筒エンジンは、高いアウトプットに加えて、軽量・小型の設計も特徴。トランスミッションにはシフトアップ/ダウンの双方に対応したクイックシフターが装備される。拡大
ブレーキは前がφ320mmのツインディスク、後ろがφ220mmのシングルディスクで、フロントにはブレンボ製のモノブロックキャリパーやラジアルマスターシリンダーが採用される。
ブレーキは前がφ320mmのツインディスク、後ろがφ220mmのシングルディスクで、フロントにはブレンボ製のモノブロックキャリパーやラジアルマスターシリンダーが採用される。拡大
足まわりには、オーリンズの「Smart EC3セミアクティブサスペンション」を新採用。ライダーの設定に合わせ、バイクが継続的にダンピングを調整し、正確かつダイナミックなハンドリングを実現する。
足まわりには、オーリンズの「Smart EC3セミアクティブサスペンション」を新採用。ライダーの設定に合わせ、バイクが継続的にダンピングを調整し、正確かつダイナミックなハンドリングを実現する。拡大
タイヤサイズは、前が120/70ZR17、後ろが190/55ZR17。サーキット走行も想定したハイグリップタイヤ「ピレリ・ディアブロ スーパーコルサSP V3」が装着される。
タイヤサイズは、前が120/70ZR17、後ろが190/55ZR17。サーキット走行も想定したハイグリップタイヤ「ピレリ・ディアブロ スーパーコルサSP V3」が装着される。拡大
電子制御も足まわりも強化された最新の「スピードトリプル1200RS」だが、乗った印象は、依然として鋭いハンドリングと強烈なエンジンパワーのスリルが勝るというもの。このパフォーマンスを存分に味わうには、やはりサーキットに持ち込むしかないだろう。
電子制御も足まわりも強化された最新の「スピードトリプル1200RS」だが、乗った印象は、依然として鋭いハンドリングと強烈なエンジンパワーのスリルが勝るというもの。このパフォーマンスを存分に味わうには、やはりサーキットに持ち込むしかないだろう。拡大

公道で楽しむにはどう猛すぎる

シート高は830mm。身長165cmの昭和体形(←ワタシです)では、冒頭に述べたように、かろうじて両足先が接地する程度だ。いざ発進すると、上体が強めに前傾するいっぽう、足は直下におろすカタチに近く、このあたりがストリートファイターらしいところ。意外だったのは、ボリューム豊かなタンク下のフレーム部分が大きく絞られていることで、そのため3気筒トライアンフのポジションは、どっしり構えてロングツーリングというよりは、細身なボディーを両膝でしっかり挟んで、右に左にと“曲がり”を楽しみたい気持ちにさせられる。

実際、短いホイールベースと立ち気味のフロントフォークから想像されるように、スピードトリプルは積極的に曲がりたがるバイクで、山道に入ったとたんライダーのやる気に点火される。が、正直に言いましょう。息を詰めて2つ、3つと大きなRのカーブを幾つかこなすと、もうおなかいっぱい。3000rpmを超えるあたりから本領を発揮し始める3気筒は、道中確認したのだが、2速6500rpm付近ですでに100km/hに達する。公道ライドで「楽しんだ」というのがはばかられる高性能だ。

電子制御満載の1200RSは、頑強なフレームに野趣を残した3気筒を載せ、調整可能だがそれでもスポーティーに締まった足まわりを持つ。ライダーにのんびり走ることを許さないファイターだ。オーナーに求められるのは、大勢の悪党を前にしてひるまないず太さと、183PSを自在に操るテクニック、そして自制心。トム・クルーズになる道は、なかなかに厳しい。

(文=青木禎之/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン)

トライアンフ・スピードトリプル1200RS
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トライアンフ・スピードトリプル1200RS(6MT)【レビュー】の画像拡大
 
トライアンフ・スピードトリプル1200RS(6MT)【レビュー】の画像拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×810×1085mm
ホイールベース:1445mm
シート高:830mm
重量:199kg
エンジン:1160cc 水冷4ストローク直列3気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:183PS(134.6kW)/1万0750rpm
最大トルク:128N・m(13.1kgf・m)/8750rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.5リッター/100km(18.2km/リッター)(WMTCモード)
価格:222万5000円~227万円

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青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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