ディフェンダー130 X D350(4WD/8AT)
王者の風格あり 2025.07.12 試乗記 「ディフェンダー」2025年モデルのデリバリーがスタート。ディーゼルエンジンがパワーアップしたほか、標準装備の充実を図るなど、きめ細かな進化を遂げているのが特徴だ。2列目キャプテンシートが選べるようになった「130」の仕上がりを報告する。6気筒エンジンのお手本
現行型に生まれ変わってからもう5年以上たっているのに(デビューは2019年のフランクフルトショー)、いまだにディフェンダーに乗ると、なんだか落ち着かないというか奇妙な感じがする。こんなに快適で洗練されていていいのだろうか? と戸惑うのだ。泣く子も黙る質実剛健なクロスカントリービークルであり、過酷な現場で働くプロフェッショナルたちのためのタフなワークホースだった時代の印象はそれほど体にしみこんでいる。一日走ると腕も足も振動でジーンとしびれてしまった、かつての苦行が夢だったかのように、今やディフェンダーはすっかり洗練された上等のSUVである。巨大で武骨な見た目とは裏腹な、その滑らかでまろやかなパワートレインと乗り心地には誰もが驚くはずである。
何度目かの繰り返しになるが、特に感心するのは直6ディーゼルターボの滑らかさである。今や主力ユニットとなったディフェンダーの3リッター直6ディーゼルターボには、直列6気筒ならこうでなくちゃ、と期待するものがすべて詰まっている。スムーズでたくましく、打てば響くピックアップも申し分ない。しかも48Vのマイルドハイブリッドシステムも備わっているから、アイドリングストップからの再始動も静かで滑らかなうえに、動きだしも当然素早い。巨大なボディーを動かすディーゼルターボだからしょうがないよ、と普通なら諦めなければならない振動や騒音、レスポンスの鈍さといった、その種の我慢が少しも要らないのである。
さらに新しい2025年モデルに搭載される「インジニウム」6気筒ディーゼルターボは従来型よりもパワーアップされ、350PS/4000rpm、700N・m/1500-3000rpmの最高出力と最大トルクを生み出す(従来型は300PSと650N・m)という。言うまでもなくそれが車名の「D350」の由来である。
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この巨体を持て余さない
つい先日ディフェンダーの2026年モデル発表というニュースを見たという方もいるだろうからちょっと紛らわしいが、この試乗車はほぼ1年前に発表されていた2025年モデルで、ようやくデリバリーが始まった最新型である。2025年モデルは上述のようにディーゼルエンジンがパワーアップしたほか、130にもガソリンV8搭載モデルが追加された。ショートホイールベースの「90」とロングホイールベースで5ドアの「110」、そしてホイールベースは110と同じ(3020mm)だが、全長が330mm長い(5275mm)この130というラインナップだ。今回の試乗車はディーゼルターボ(D350)の130の最上級グレード「X」で、5/7/8人乗りが用意される中の7人乗り(2列目キャプテンシート)仕様である。そのぶん価格はオプション抜きで1544万円、内容を考えると納得せざるを得ないが、それにしてもこれはもう「レンジローバー」並みじゃないか、と正直ため息が出る。
全長ほぼ5.3m(バックドアに背負ったスペアタイヤを含めると5.4m近い)、全幅もほぼ2m、車重は2.6tを超えるが、オープンロードを走る限りまったく鈍重な感じはしないのがディフェンダーD350の不思議なところ。それどころか、山道を飛ばすといった状況を別にすれば、むしろ身軽な感じがする。低回転から余裕のトルクがリニアに湧き出すことと、レスポンス良く滑らかな8段ATのおかげでボディーの重さを意識することがほぼなく、せいぜい1500rpmも回っていれば気持ちよく交通の流れに乗ることができる。ピークパワーの増加分は正直分からないが、より扱いやすくなったことは確かだ。ひと言で言って楽ちんである。
言い訳要らずの乗り心地
ランドローバー各車に共通する美点は、オンロードでの乗り心地が素晴らしいことである。本格的なオフロード走行性能を備える“クロスカントリービークル”のディフェンダー(最大渡河水深は900mmもあることを忘れてはならない)であってもそれは変わりなく、少なくとも車高調整付きエアサスペンションに可変ダンパーを備えるモデルであれば(90/110にはコイルサスペンション仕様もあるが130はエアサスペンションのみ)、ゴツゴツした突き上げもピョコピョコとしたピッチングを見せることもなく、文字どおりフラットに快適にロングドライブをこなせる。
いかにもゴツイ見た目のトレッドパターンを持つ、しかも20インチのオールテレーンタイヤ「グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー」を履いていたにもかかわらず、ロードノイズもディーゼルのエンジン音も聞こえないと言ったらウソになるが、音質音量ともに気にならないレベルだ。大きめの段差ではたまにドシンという、いかにも重そうなタイヤの動きが伝わってくることがあるが、隅を突いても出てくるのはそのぐらいのもの、この種のクルマとしては文句なしと言っていい。
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真のオールラウンダー、ただし路地は除く
ご存じのようにSUVとひとくちに言っても、その内容は千差万別。オンロード優先の高性能SUVと本格的なオフロード性能を備えるディフェンダーのような“クロスカントリービークル”を同列に並べて乗り心地の優劣をつけるのはフェアではないが、ディフェンダー(のエアサスペンション付き)に限っては、クロカンSUVとしては、などという言い訳は必要なし。オンロード志向のSUVと比べても、ディフェンダーのオンロードの乗り心地と安心感は別格である。かつてランドローバーはブランドのタグラインというかキャッチフレーズとして「Go Anywhere」を掲げていたが、現在のディフェンダーはまさしくどこにでも、しかも快適に行くことができるオールラウンダーである。
ただし、狭い路地はやはり避けたほうがいい。ボディー周囲を確認するカメラの類いは完備しているが、何しろホイールベースも全長も長いうえに、後方カメラだけはスペアタイヤと障害物の間隔を確認しにくい位置に取り付けられているからだ。やはり野に置けディフェンダー、である。
(文=高平高輝/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)
テスト車のデータ
ディフェンダー130 X D350
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5275×1995×1970mm
ホイールベース:3020mm
車重:2640kg
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:350PS(258kW)/4000rpm
エンジン最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/1500-3000rpm
モーター最高出力:17.7PS(13kW)/5000rpm
モーター最大トルク:42N・m(4.3kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)255/60R20 113H XL M+S/(後)255/60R20 113H XL M+S(グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー)
燃費:10.5km/リッター(WLTCモード)
価格:1544万円/テスト車=1797万3018円
オプション装備:ボディーカラー<ゴンドワナストーン>(0円)/4ゾーンクライメートコントロール(5万9000円)/Wi-Fi接続<データプラン付き>(3万8000円)/ラゲッジスペースパーティションネット(2万3000円)/20インチフルサイズスペアホイール(0円)/20インチ“スタイル5094”ホイール<サテンダークグレーフィニッシュ>(0円)/オールテレインタイヤ(3万1000円)/フロントコンソール急速クーラーボックス(3万9000円)/プライバシーガラス(8万8000円)/ホイールロックナット(1万円)/コールドクライメートパック(11万3000円)/スターライトサテンクロームエクステリアパック(18万1000円)/マットプロテクティブフィルム(58万8000円)/2列目シート<ヒーター&クーラー、キャプテンチェア、ウイングドヘッドレスト付き>(21万5000円)/ ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(6万0280円)/ディプロイアブルサイドステップ一式(55万4404円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:4846km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:401.0km
使用燃料:47.6リッター(軽油)
参考燃費:8.4km/リッター(満タン法)/8.3km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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