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「クルマ扱いの三輪車」と「三輪のオートバイ」、その違いはどこにある?

2025.06.30 デイリーコラム 青木 禎之
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“三輪”は同じで免許が違う!?

カナダ発の三輪モーターサイクルブランド「カンナム(CAN-AM)」のプレス試乗会に参加した。同社のツーリングモデル「スパイダー」の2025年モデルがリリースされたのだ(関連記事)。

「スパイダーには普通自動車免許があれば乗れます。AT免許でもOKです」とスタッフの方。

ヘルメットをかぶらなくても、法規上は問題ないのですよね?

「違反にはなりませんが、ヘルメットとグローブの着用を強く推奨します」

ご存じのように、今年2025年4月から免許制度が変わり、普通自動車免許はAT免許が基本となった。MT免許は、限定解除(!)の教習を受けて取得することに。名実ともに「昭和は遠くなりにけり」である。

……と、それはともかく、恥を忍んで告白します。ワタクシ、以前は「前1輪+後2輪」のトライクはクルマ扱い、「前2輪+後1輪」はバイク扱いと、いささか雑で誤った認識を持っておりました。バカですね。ところが、カンナムのモデルは「前2輪+後1輪」だけれど、大型自動二輪免許ではなく普通自動車免許が求められる。自戒を込めて三輪車の免許についてまとめてみました。

免許関係などをつかさどる「道路交通法」では、三輪車は大別してクルマとバイクに分けられる。かつては、「三輪車は二輪車(=バイク)ではないので普通自動車免許が必要」と実にシンプルだったが、ピアッジオやヤマハなどからフロントが2輪になったバイクが登場したことで、2009年に区分が見直された。

新種の“三輪バイク”は「特定二輪車」に分類されることになり、自動車用ではなく二輪用の免許が必要となった。「特定二輪車は、内閣総理大臣が指定する」と、なんだか字面は物々しいが、裏を返せば三輪バイクは個別の指定でこと足りるニッチな存在というわけだ。

「カンナム・スパイダーRTシートゥースカイ」を走らせる筆者。全幅1554mmというこの大柄な三輪モビリティーにはクルマの運転免許で乗ることができる。法的には強制されないものの、安全上の理由からヘルメットとグローブの着用は必須だ。
「カンナム・スパイダーRTシートゥースカイ」を走らせる筆者。全幅1554mmというこの大柄な三輪モビリティーにはクルマの運転免許で乗ることができる。法的には強制されないものの、安全上の理由からヘルメットとグローブの着用は必須だ。拡大
タイプの異なる三輪モビリティーをラインナップするカンナム。2024年には二輪のフル電動バイクも発表している。
タイプの異なる三輪モビリティーをラインナップするカンナム。2024年には二輪のフル電動バイクも発表している。拡大
ハーレーダビッドソンの“トライク”と呼ばれるモデルは、「前1輪+後2輪」の三輪車。運転免許のうえではクルマ扱いで、普通自動車免許(MT)が必要になる。
ハーレーダビッドソンの“トライク”と呼ばれるモデルは、「前1輪+後2輪」の三輪車。運転免許のうえではクルマ扱いで、普通自動車免許(MT)が必要になる。拡大

うっかりすると交通違反

三輪バイクに乗るにあたって、どの二輪免許が要求されるかは通常のバイクに準じる。例えば「ヤマハ・ナイケンGT」(888cc)は「大型自動二輪」が必須、「トリシティ300」(292cc)は「普通自動二輪(AT限定)」があれば乗れ、より小型の「トリシティ125」(124cc)なら「普通自動二輪(小型AT限定)」でOKという具合だ。

バイク扱いになる三輪車をハード面からザックリ解説すると、左右輪の幅(接地部中心点の距離)が460mm未満、車体を傾けて曲がる機構を持つこと、ということになる。三輪の配置は「車両中心線に対して左右対称」とされているので、「前2+後1」か「前1+後2」かは関係ない。

前出のカンナム・スパイダーの記事でも言及したが、同車は1554mmの車幅をもち、曲がるときには普通の四輪車と同じくカーブの外側にロールする。特定二輪車の条件に当てはまらない(そもそも総理大臣の指定を受けていない)同車は、「クルマ扱いの三輪車」である。だから二輪免許ではなく、自動車用の免許を持たねばならない。法規上はオープンカーに乗っているのと同じだけれど、安全のためヘルメットをかぶるべきなのは、言うまでもありませんね。

ちなみに、車両の登録・検査関係を規定する「道路運送車両法」ではカンナム・スパイダーはサイドカー扱いになり、車検証の車体形状は「側車付オートバイ」と記載される。定期的に車検を受けなければならない。

(文=青木禎之/写真=向後一宏、ヤマハ発動機、本田技研工業、webCG/編集=関 顕也)

ヤマハの三輪バイク「ナイケンGT」。三輪のモデルではあるが、コーナーでは通常のモーターサイクルのように車体を傾けて走行する。
ヤマハの三輪バイク「ナイケンGT」。三輪のモデルではあるが、コーナーでは通常のモーターサイクルのように車体を傾けて走行する。拡大
こちらはAT小型限定普通二輪免許で乗れる三輪バイク「ヤマハ・トリシティ125」。安定性の高さを大きなメリットにかかげる三輪バイクは、宅配需要の増加などにも後押しされて増えている。
こちらはAT小型限定普通二輪免許で乗れる三輪バイク「ヤマハ・トリシティ125」。安定性の高さを大きなメリットにかかげる三輪バイクは、宅配需要の増加などにも後押しされて増えている。拡大
青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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