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KINTOが初の黒字決算! 今後“クルマのサブスク”は主流になるのか?

2025.07.07 デイリーコラム 玉川 ニコ
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消費者の質が変わりつつある

クルマのサブスクリプションで知られるKINTOは2025年6月16日、2025年3月期の決算公告を提出した。それによると同期の最終損益は7億9500万円の黒字となり、2019年の創業以来、KINTOは初の最終黒字を記録することとなった。

このことをもって、KINTOが行っているクルマのサブスクリプションサービスは「今や利用者の間で完全に定着した」といっていいのだろうか? また、クルマのサブスクは今後、自動車所有の主流になっていくのだろうか?

もちろん未来を100%正確に見通すことなど誰にもできないわけだが、「主流になるかどうかはさておき、KINTOに代表されるクルマのサブスクリプションサービスは今後、これまで以上のポジションとボリュームを占めていくことになるだろう」というのが筆者の見立てだ。

そう考える理由は2つある。まずひとつは、今後の消費活動において主役を務めることになる「Z世代」の消費行動様式である。

筆者のように高度経済成長期に生まれた者と違い、生まれたときから国家の成長鈍化と少子高齢化問題を目の当たりにしていたジェネレーションZの消費性向は、筆者世代とは大きく異なる。すなわちそれは「テクノロジーへの親近感」であり、「ブランドよりプラットフォーマーを重視する姿勢」「希少性やヒエラルキーより体験を重視する感性」「所有へのこだわりがなく、シェアリングに親しみがある」というようなものだ。

マス層を占める消費者の価値基準が、これまでの「希少なモノの所有」「競争と地位獲得」から「体験やライフスタイル」「価値の共有と信頼の獲得」へと移行するのであれば、クルマに関しても「所有ではなくサブスクリプションを選択する消費者が増える」と予測するのが普通であろう。

KINTOのオフィシャルサイトから。クルマの価格が軒並み高くなっている昨今、「諸経費コミコミで月々1万円台から!」の見出しは強烈なインパクトを放つ。
KINTOのオフィシャルサイトから。クルマの価格が軒並み高くなっている昨今、「諸経費コミコミで月々1万円台から!」の見出しは強烈なインパクトを放つ。拡大
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「ソフトで稼ぐ時代」が後押し

もちろん「クルマを所有する」というスタイルは今後も絶滅はしないはずだが、人口動態からみてマーケットの鈍化が不可避ななか、今後の自動車メーカーは「規模」を狙うことが難しくなっていく。そうなると、所有を前提としたクルマは高付加価値な(つまり利益率が高い)プレミアムセグメントに集約されていくことになるはず。そしてプレミアムではないセグメントのクルマは、所有ではなく利用=サブスクリプションで十分というか、むしろそのほうが体験価値を高められると認識され、いよいよKINTO的なサービスが隆盛となるのだ。

そして、KINTOに代表されるクルマのサブスクリプションサービスが今後伸びていくだろうと考えるもうひとつの理由は、自動車メーカーは今、ハード(車両)だけでなくソフトで稼ぐ時代に向かっていると考えられるからだ。

例えばゼネラルモーターズ(GM)は2017年に「BOOK by Cadillac」という、1年間で最大18車種の最新キャデラック車に乗り換えることができるサービスを米国の一部で開始した。しかしBOOK by Cadillacはまったくもうからなかったようで、2018年12月には早くもサービス終了となった。だがそんなGMは今、車両のサブスクではなく機能のサブスクである「OnStar」によって大きく稼ぎ始めている。

また本邦のKINTOも同様に車両のサブスクだけで赤字を脱したわけではなく、契約後の車両のハードウエアおよびソフトウエアをアップグレードさせる「KINTO Unlimited」や、純正オプションを正規販売店で後付けできる「KINTO FACTORY」などによって、顧客満足度を維持できている部分もある。

今後、クルマのSDV(ソフトウエア・ディファインド・ビークル)化が進んでいくにつれ、さまざまなアップデート作業と相性が良いサブスクリプション形態は、大まかなトレンドとしては確実に伸長していくだろうといえるのだ。

KINTOは車両のサブスクリプションサービスのほかに、契約後の車両のハードウエアおよびソフトウエアをアップグレードさせる「KINTO Unlimited」、純正オプションを正規販売店で後付けできる「KINTO FACTORY」といったサービスも展開している。なお、サブスク契約車両のみ対象としているKINTO Unlimitedに対し、KINTO FACTORYは契約車両以外のトヨタ車、レクサス車などでも利用できるというサービスの違いがある。
(写真は、2022年12月にKINTO Unlimitedのサービスがスタートしたときのオフィシャルイメージ)
KINTOは車両のサブスクリプションサービスのほかに、契約後の車両のハードウエアおよびソフトウエアをアップグレードさせる「KINTO Unlimited」、純正オプションを正規販売店で後付けできる「KINTO FACTORY」といったサービスも展開している。なお、サブスク契約車両のみ対象としているKINTO Unlimitedに対し、KINTO FACTORYは契約車両以外のトヨタ車、レクサス車などでも利用できるというサービスの違いがある。
	(写真は、2022年12月にKINTO Unlimitedのサービスがスタートしたときのオフィシャルイメージ)拡大

この流れは不可逆的(かも)

もちろんというか何というか、筆者は古い世代の人間であるため、家電はともかくクルマは、借りるのではなく自身で所有したいと考えている。Z世代の各位には理解しがたいかもしれないが、道具ではなく「相棒」として苦楽を共にし、時折まぐれで高級かつ希少なクルマを購入することができた際には、それをもって自らの社会における序列を確認し、アピールし、悦に入る。そんな暮らしを、いつまでもしていたいのだ。

同様のことを考えているご同輩の数は決して少なくないと推測するが、筆者を含むそういった世代は近い将来またはちょっと先の将来、世の中の消費活動のメインストリームからは徐々に外れていく。そしてそれにともなって、徐々に――あるいは一気にかもしれないが、クルマにおいてもサブスクリプションは主流になっていくのだろう。

もちろん未来予測についての自信や能力があるわけではない筆者ゆえ、この見立てが当たるかどうかはわからない。しかしおそらく、見立ては的中するだろうと内心では思っている。

なぜならば、かくいう筆者自身が、いわゆる名車であれば所有したいと強く願っているが、いわゆる足グルマのようなタイプのものに関しては「……サブスクでいいかな?」とも思い始めているからだ。

大好きなミュージシャンの貴重な音源であれば、今でもCDやアナログレコードとして購入したいと思っている。しかしそうでない音源は今やすべて、いわゆるサブスクにてiPhone経由で聴いている筆者だ。それと同じことが、おそらくはクルマの領域においても起こるのだろう。

(文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車/編集=関 顕也)

2025年6月に、2019年の創業以来初となる黒字決算を発表したKINTO。今後のさらなる発展につながる大きな要素として、新たな価値観を持った若年層の利用増加に期待が寄せられている。
2025年6月に、2019年の創業以来初となる黒字決算を発表したKINTO。今後のさらなる発展につながる大きな要素として、新たな価値観を持った若年層の利用増加に期待が寄せられている。拡大
玉川 ニコ

玉川 ニコ

自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。

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