第4回:個性派「ゴアン クラシック350」で“バイク本来の楽しさ”を満喫する
2025.09.18 ロイヤルエンフィールド日常劇場ROYAL ENFIELD(ロイヤルエンフィールド)の注目車種をピックアップし、“ふだん乗り”のなかで、その走りや使い勝手を検証する4回シリーズ。ラストに登場するのは、発売されたばかりの中排気量モデル「ゴアン クラシック350」だ。
ありそうでないキャラクター
猛暑の続く9月初旬、ゴアン クラシック350で首都圏の高速道路を流していると、隣の車線のカワサキが、サムアップして抜いていった。
とっさのことだったので、こちらは軽く会釈しただけ。ライダーがいいね! のサインを送るなんて、バカンス気分の人ばかりの北海道ではよくあるけれど、東京近郊では珍しい。まあ、「暑いなか、お互いよくやるよね」というメッセージだろうと思っていたら、20分ほど走った先でも、ドゥカティのライダーがじっくりこちらを観察してから親指を立てて抜いていった。
その後、街なかの信号待ちでも、なめるように観察されること2回。それで確信した。前述のライダーもきっと、「そのバイク、クールだね」って言いたかったのだ。
たしかにゴアン クラシック350のスタイルは個性的で、ベテランのライダーですら(いや、むしろさまざまなバイクを知るベテランだからこそ)、どのブランドのなんというモデルだろう? と気になるに違いない。ホワイトリボンのタイヤに、四輪界でも人気の高いマットブラックの車体色。そのタンクには立体的で立派なゴールドのエンブレムと、ちょい悪なムードもただよう幾何学模様のデコレーションが添えられている。
ジャンルとしてはアメリカンタイプで、そのカスタム手法の一派である“ボバー”(パーツをそぎ落としシンプル化を追求するスタイル)ということになるのだろうが、このバイクはクルーザーにしてはコンパクトで前後に短い。しかし、各所のつくりは骨太で、小さいがゆえに凝縮感がある。つまり、存在感が強い。
ぱっと見、250ccクラス? という印象の車体には、排気量349ccの空冷単気筒エンジンが載る。高くカチ上げられたようなハンドルバーは、160cmそこそこの小柄な筆者でも違和感のない自然な位置にあり、シート高は750mmしかないから足つき性も良好。これなら多くの女性ライダーも安心して乗れる。下半身は、普通に椅子に腰掛けたのと同じ姿勢がとれて、大柄のライダーでも窮屈になることはない。誰でも気軽に乗れるという点で、とても懐の深い貴重な存在といえる。……なんてことを思いながら、外気温37℃という暑さのなか、湾岸の道へと進路をとった。
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流してよし、攻めてもよし
もっとも、物理的にフレンドリーなマシンであれ、炎天下でバイクにまたがるなんて、あまりおすすめできない。でも、このスタイルのおかげで、ゴアン クラシック350は真夏の日本でも意外と乗れる。
エンジンが細身の単気筒であることや前述のライディングポジションが奏功し、ライダーは熱源から距離をおけるので、熱さのつらさはさほどない。じわりと汗ばんだところで走りだせば、全身で涼を感じて「気持ちい~い(^^)」とほほがゆるむ。
ビートの豊かなシングルユニットも気分を盛り上げてくれる。排気量こそ大きくはないけれど、サウンドはドルルルル! っと勇ましく、ゴー&ストップの多い街なかでもストレスなく流れに乗っていける……どころか、ちょっとツイスティーな道では、スポーティーな乗り味が楽しめる。
上体はリラックスしたまま、鞍(くら)型にくぼんだシートにどっしりと体重を預けて、リアにトラクションがかかるのを感じながらワイドオープンでコーナーを駆け抜ける。これぞバイクのだいご味! うれしくなって、特にいい感じだったS字区間をもう一往復してしまった。一方の高速は、実用域の80~100km/hなら風圧に耐えることなくこなせる。もっとも、持ち味の鼓動感を楽しむなら、4速70km/h、5速80km/hくらいでの巡行がベストだと思うけれど。
そうしてたどり着いたヨットハーバーでも、ゴアン クラシック350はさまになっていた。それもそのはず、「ゴアン(GOAN)」という車名はインド西岸のゴア(GOA)州に由来し、リゾート地として名高いゴアのスタイル、ゴア風を意味している。日本のバイクと日本の地名で例えるのは難しいが、アメリカンバイクなら西海岸スタイル、カリフォルニア流ってところだろうか。
LAのバイカーがランチに選ぶのは、きっとタコスかハンバーガー。では、東京周辺でゴア風のお昼は望めるのか? 思いつきで調べてみると、インディアンリゾートの料理が味わえるお店がいくつかあった。ゴアン クラシック350自慢のナビゲーションシステム(標準装備)を使って目指すは、そのうちのひとつ、「Viva Goa Indian Cafe 原宿店」だ。
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スパイシーでテイスティー
そのお店は、原宿・竹下通りのすぐそばにあった。歩行者専用の路地に面した店舗のため、「Goa」の字が映る看板を前にゴアン クラシックとツーショット! 的なことはできなかったけれど、そんないきさつで来店したことを告げると、店長のオヒトさんは笑顔で招き入れてくれた。
店内は、エメラルドグリーン×オレンジ(赤茶系)のツートンカラー。偶然なのか、ゴアン クラシック350のイメージカラー「Trip Teal(トリップ・ティール)」にそっくりだ。ちなみにこのバイク、ほかに紫系や赤系のカラーリングもラインナップされていて、セレクトに悩むくらいどれもいい。
お店のメニューもとても豊富で悩ましい。数あるなかから「これぞゴア」というオススメだけに絞ってもらっても十数種類。土地柄シーフードで知られ、特にメカジキを使ったフィッシュカレーは人気らしいけれど……。決めかねている筆者を見かねて、オヒトさんは、ゴア料理の全部入り、その名も「ビバゴアスペシャルターリーセット」をすすめてくれた。
プラウン(エビ)カレーにキングフィッシュタバフライ、カレーに似たゴア料理のひとつであるチキンシャクティなど全8品のワンプレート。「ゴアの料理は、インドのほかの地方よりもやや辛め。スパイシーなのが特徴なんです」とオヒトさんが言うように、クーラーの効いた店内でも、口に運べばたちまち体が火照ってくる。でも、辛いだけじゃなくて、どれもすごく味わい深くてうまい。そのうえ手間をかけてつくり込まれていると感じられるところに、ゴアン クラシック350に通じるものがある。
インド出身のオヒトさんは当然ながらロイヤルエンフィールドをご存じで、それにしてもバイクに詳しいな? と思ったら、ふるさとでは「JAWA(ヤワ)42」に乗る生粋のバイク乗りだった。「僕のは、このゴアンより排気量がちょっと小さい。でもマフラーは2本出しだし、もっと速いかも。それに……」と、スマホで写真を見せながらの愛車自慢が止まらない。
よく「音楽に国境はない」なんて言うけれど、エンスージアストはそれがクルマやバイクにも当てはまることを知っている。いいバイクに、いい出会い。いい時間を与えてくれたゴアン クラシック350に感謝である。
(文と写真=webCG 関 顕也)
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関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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