第1回:味わい深い実力派「クラシック350」でバイクの魅力を堪能する
2025.02.28 ロイヤルエンフィールド日常劇場あなたは世界的なバイクブランド、ROYAL ENFIELD(ロイヤルエンフィールド)をご存じだろうか? この特集では、そのエッセンスが詰まった4台を順にピックアップし使い勝手や走りっぷりを報告する。まずは、普通二輪免許で乗れる、このモデルから。
それは“特別なクラシック”
数年前に他界した伯父は生粋のバイク好きで、いざバイク談義となれば、「むかしの英国の単車は、本当にいい音でさぁ……」と口癖のように言っていた。「ふとんたたきみたいなんだ」と説明するのもお決まりで、バタバタやらファタファタやら、“いい音”を口まねしたものだった。
当時はピンとこなかったけれど、その古き良きサウンドというのが、これに違いない。目の前でアイドリングを続ける「ロイヤルエンフィールド・クラシック350」の排気音はたしかに、天日に干したふかふかのふとんを、あの細身の棒でパタパタたたいているかのよう。歯切れよく、でもまろやかで、とても耳に心地いい。
「イギリス生まれのインド育ち」で知られるこのブランドは、120年を超える歴史を有し、現在はトラディショナルなスタイルのモデルを多くラインナップしている。なかでもこのクラシック350は、70年以上前の名車「ロイヤルエンフィールドG2」を範とする、ホンモノの呼び声高いクラシック。 音を含め、往時のうま味をいまに伝える、極めて貴重な一台なのだ。
空冷のバイクばかり乗り継いできた身には、冷却用のフィンに覆われたエンジンの造形もグッとくる。これぞ、機能美。カウルを持たないメカむき出しのバイクだと、なおさら重要になるディテールだ。近年、「ホンダCB1100」「ヤマハSR400」ほか魅力的な空冷バイクが排ガス規制を理由に続々と生産終了に追い込まれたが、そんななかでクラシック350がモデルチェンジを重ね継続販売されているというのは、本当に救いという気がする。
そんな心持ちでカフェの傍らに止めた車両を眺めながら、ちょっと休憩。すると、多くの人がクロームまばゆいこのバイクを一瞥(いちべつ)して過ぎていった。なかには、車体に近づき細部を観察していく外国人旅行者とおぼしき方々も。グローバルで普遍的な“クラシックバイクのスタイル”でありながら、そうはひとくくりにできない特別な雰囲気が、このモデルにはあるのかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
見た目だけのバイクじゃない
今回クラシック350と付き合った期間は1週間ほど。その間、いつもの道を中心に都会をあちこち走らせてみると、見た目のイメージとは違う、うれしい驚きがたくさんあった。
スペックでいえば、エンジンは349ccの単気筒。最高出力20.2PS、最大トルク27N・mというアウトプットにも特に目を見張るところはないものの、これがびっくりするほど低回転域で力強くて、よくねばる。だから例えば、土地勘のない路地に迷い込んでキョロキョロしながら低速で走っている……なんてときでも、エンストやふらつきの怖さがない。車体の重さ(195kg)も奏功してか常にどっしり落ち着いていて、大から小までコーナーでは安定感バツグン。初対面でも長年付き合ってきたかのような、この安心感はなんだろう? 思わずニンマリしてしまう。
いざ高回転域まで引っ張れば、2速で80km/h、3速で100km/hまで(出るには)出る。ギアを上げればそれより上も望めるけれど、直立した“殿さま乗り”のクラシック350で、風圧にあらがうことなくクルージングを楽しむのなら、80km/h程度がいいところ。加速時は常に早めにシフトアップし、低回転からトルク任せにドルルルル……と行けば、気持ちよさにまたほほが緩む。ライダーでよかったなぁ。
巡行時には、350とは思えない野太いサウンドに心が躍る。愛車(トライアンフ)に理想の排気音を求めて迷走し、気づけばリプレイスマフラーを4セットも買い集めてしまった身としては、つるしで満足できるというのはとってもうらやましいことだ。
そんな筆者のバイクライフはかれこれもう30年。距離にすれば10万km以上で、用途のほとんどは旅である。今回、クラシック350で遠出は実現しなかったものの、そんなツーリングライダーの目で見れば、このバイクで素晴らしいバイク旅行が楽しめることは想像に難くない。
クッションの豊かなサドルシートは長時間の乗車も楽だろうし、リアフェンダーに沿って、荷掛けに便利なバーがスマートに取り回されている。 ハンドルスイッチ付近には、電子機器用のUSBチャージャーも装備。メーターまわりの液晶画面は何かと思えば、スマホの専用アプリを介して使える専用ナビゲーションシステムだった。きらびやかだからって、飾っておくだけのバイクじゃないのだ。
手の届きやすい価格とお値段以上のつくり込みを考えると、若いライダーから大ベテランまで広く支持されそうな一台。多くの人に愛されて、オーナーズクラブなどの交流が盛り上がったらいいな、と思う。わが伯父も健在だったら、「いやぁ、本当にいいバイクだね!」と喜んだに違いない。
(文と写真=webCG 関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
-
第4回:個性派「ゴアン クラシック350」で“バイク本来の楽しさ”を満喫する 2025.9.18 ROYAL ENFIELD(ロイヤルエンフィールド)の注目車種をピックアップし、“ふだん乗り”のなかで、その走りや使い勝手を検証する4回シリーズ。ラストに登場するのは、発売されたばかりの中排気量モデル「ゴアン クラシック350」だ。
-
第3回:新作「クラシック650」で“ライダーの聖地”を巡礼 奥多摩を走って食べる! 2025.8.27 ロイヤルエンフィールドの最新モデル「クラシック650」で、目指すは“ライダーの聖地”奥多摩! 首都圏随一のツーリングスポットで、バイクの魅力と山里散策を満喫し、奥多摩グルメを食べに食べまくった。いやぁ、バイクって本当にいいものですね!
-
番外編:「ベア650」で道志みちを縦走! 休日出勤もこのバイクなら苦にならない……かも? 2025.5.14 ゆううつな休日の取材も、このバイクでなら苦にならない!? 話題の新型スクランブラー「ロイヤルエンフィールド・ベア650」で、春の道志みちを縦走。首都圏屈指のツーリングコースをのんびり走り、仕事人のすさんだ心をバイクに癒やしてもらった。
-
第2回:1週間のオーナー体験! 最新マシン「ベア650」を仕事と遊びに使い倒す 2025.3.21 このほど日本デビューしたばかりの「ロイヤルエンフィールド・ベア650」が、webCG編集部にやって来た! 1週間にわたるプチオーナー体験で感じたその魅力とは? 話題の最新スクランブラーの日本での走りを、(たぶん)業界最速で読者の皆さんにお届けする。
-
NEW
車両開発者は日本カー・オブ・ザ・イヤーをどう意識している?
2025.12.16あの多田哲哉のクルマQ&Aその年の最優秀車を決める日本カー・オブ・ザ・イヤー。同賞を、メーカーの車両開発者はどのように意識しているのだろうか? トヨタでさまざまなクルマの開発をとりまとめてきた多田哲哉さんに、話を聞いた。 -
NEW
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】
2025.12.16試乗記これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。 -
GRとレクサスから同時発表! なぜトヨタは今、スーパースポーツモデルをつくるのか?
2025.12.15デイリーコラム2027年の発売に先駆けて、スーパースポーツ「GR GT」「GR GT3」「レクサスLFAコンセプト」を同時発表したトヨタ。なぜこのタイミングでこれらの高性能車を開発するのか? その事情や背景を考察する。 -
第325回:カーマニアの闇鍋
2025.12.15カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ベースとなった「トヨタ・ランドクルーザー“250”」の倍の価格となる「レクサスGX550“オーバートレイル+”」に試乗。なぜそんなにも高いのか。どうしてそれがバカ売れするのか。夜の首都高をドライブしながら考えてみた。 -
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】
2025.12.15試乗記フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。 -
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!?











