「マツダEZ-6」に「トヨタbZ3X」「日産N7」…… メイド・イン・チャイナの日本車は日本に来るのか?
2025.09.19 デイリーコラムこれは日本でも売れるのでは?
最近、中国で発売される日本メーカー車に、ちょっと注目が集まっている。
中国市場といえば、コロナ禍の影響で4年ぶりの本格開催となった2023年4月の上海モーターショーで、地元の中国メーカーが電気自動車(BEV)にまつわる高度な技術と商品開発スピード、そして破壊的ともいえるコスト競争力を見せつけた。それを見た関係者の多くが「日米欧の自動車メーカーは、もはやどこも中国に勝てないのでは!?」との衝撃を受けた。これが世にいう“上海ショック”である。その上海ショックの影響もあってか、2023年10月に三菱が中国市場からの撤退を決議。当時は中国市場での日本メーカー車の失速が相次いで報じられていたこともあり、「他メーカーも三菱に続く?」と思われた。しかし実際は、多くの日本メーカーがここから反転攻勢をしかけたのは頼もしい。
そんななかでも、日本のカーマニアの目に最初にとまったのは、2024年4月に北京モーターショーで初公開されたマツダの「EZ-6」だ。長安汽車と共同開発されたこの4ドアセダンは、BEVとプラグインハイブリッド車(PHEV)を連ねたラインナップで、同年10月に中国で発売された。
EZ-6の存在が明らかになったのと同時期に、「マツダ6」の国内向け販売が終了。しかもマツダのデザインテーマ「魂動(こどう)―Soul of Motion」にもとづいたEZ-6のデザインがじつにスタイリッシュなこともあり、「これがマツダ6の後継?」と話題となった。さらに、そのBEV版が「6e」として欧州にも輸出されることが2025年1月にアナウンスされると、マツダファンの間では「それなら日本でも売られるのでは?」との声が再燃した。
開発も部品も製造も中国
同じ2024年の北京モーターショーでは、トヨタもまったく新しい中国専用BEVの「bZ3X」と「bZ3C(正式発売時には『bZ5』と改名)」を公開。2025年3月に正式発売となったbZ3Xは、容量50kWh以上の電池を積みながら、先行発売したセダンの「bZ3」より120万円以上安い10万9800元(約220万円)という驚きのスタート価格で、一時は受注サーバーがダウンするほど注文が殺到した。この8月までの累計販売台数も3万5000台以上に達しており、外資系メーカーのBEVとしては異例のヒットになっているという。また、トヨタはこの春に開催された上海国際モーターショーでも、1年以内の発売を目指す上級BEVセダンの「bZ7」を公開。さらに勢いづいている。
その2025上海ショーに出展された日本メーカーのクルマといえば、日産の「N7」を忘れるわけにはいかない。N7はかつての「フーガ」に似たサイズをもつアッパークラスのBEVセダンである。「14 in 1」をうたう電動アクスルや最高2万5100rpmという超高回転モーター、最大480kWの急速充電性能、「ポルシェ・タイカン」を大きく上回る高剛性のアーキテクチャー、さらには自動運転やディープシークといった知能化技術など、N7はハイスペックにこだわる中国人も納得の最先端技術が満載。でありながら、11万9900~14万9900元(約250万~310万円)という価格で提供されている。
そんなN7は2025年4月末の発売から1カ月で1万7000台以上を受注して、前出のbZ3Xに勝るとも劣らない好調なスタートダッシュを決めて、最近の日産では数少ない(失礼!)景気のいいニュースとなった。
これらマツダ、トヨタ、日産の最新BEVに共通するのは“中国化”である。トヨタ、日産も中国との合弁会社に開発の主導権を渡して、大半の部品を中国サプライヤーから調達することで、ハイスペックで低コストのBEVをハイスピードで開発することに成功した。また、中国では13万9800~17万9800元(約290万~370万円)で販売されるマツダのEZ-6は、もともと長安汽車が生産・販売する「ディーパルL07」をベースに、マツダならではのデザインやチューニングを施したクルマと見られている。
オープンな日本市場の見えない壁
こうして最新の“中国製ジャパニーズBEV”の情報に触れるにつけ、日本国内販売を想像してしまうのも当然である。もし中国に準じる内容と価格で日本でも売られたら、停滞する日本のBEV市場のゲームチェンジャーになる可能性は高い。
現在のアメリカでは中国ブランド車は正規で販売されていない。また欧州連合(EU)は中国製BEVに最大45.3%という高い関税を課している。いっぽうで、非関税障壁だなんだと批判されがちな日本だが、自動車や自動車関連部品については、国や地域を問わずに“無関税“という超オープンな市場である。
中国BYD車に対するCEV補助金が、2024年度と2025年度で一部前年より減額されたことが話題になったが、これも補助金策定の評価項目に「充電インフラ整備」「アフターサービス体制」「レアアース確保の取り組み」「下請けサプライヤーへの支払い状況」などが年々追加されているからだ。減額されたのもBYD車だけではない。実際、日本で販売されるテスラの各車や、「クーパー」や「エースマン」といったMINIのBEV(エースマンは全車BEVだけど)も中国からの輸入車だが、テスラに対するCEV補助金は2025年度で増額されたし、MINIもエースマンの「E」以外は維持されている。
というわけで、今話題の中国製ジャパニーズBEVを日本で売ることに、少なくとも表向きには障壁は存在しないように見える。しかし、マツダはEZ-6の初公開時に「日本国内での販売予定はない」と公式にコメントしているし、bZ3XやbZ7はトヨタ自身が“中国専用車”と明言する。また日産N7についても、日本販売についての公式な言及はされていない。
いずれにしても、これらのクルマは激烈な中国市場で生き残ることを最優先に開発された、中国戦略商品である。驚きのコストダウンも市場を限定しているからこそ実現したという側面も大きいはず。安全基準を筆頭に、クルマというのは開発時点で想定外の市場に出すのは簡単ではない。そもそも、中国から輸入される日本ブランド車には現行「ホンダ・オデッセイ」という前例はあるものの、トヨタや日産までが本格的に中国生産のBEVを日本で販売するとなれば、このご時世、いろいろと目に見えない問題もあるのだろう。
(文=佐野弘宗/写真=マツダ、日産自動車、トヨタ自動車、BMW/編集=堀田剛資)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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