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フォルクスワーゲンが電気自動車の命名ルールを変更 「ID. 2all」が「ID.ポロ」となる理由

2025.10.02 デイリーコラム 世良 耕太
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次世代BEVは「ID.」と既存車名のミックスに

フォルクスワーゲン(VW)は先ごろ、電気自動車(BEV)に新しいネーミングルールを導入すると発表した。2023年にドイツで発表されたコンパクトBEVのコンセプトカーは「ID. 2all(アイディ ツーオール)」のモデル名だったが、市販モデルは「ID.ポロ」の名称で2026年にヨーロッパで発売されることになった。2025年9月8日から14日にドイツ・ミュンヘンで開催されたIAAモビリティー2025では、ID.ポロとともに「ID.ポロGTI」が展示された。車名から想像できるように、電動版ポロのスポーツバージョンである。

また、ID.ポロシリーズと同様にIAAで展示され、2026年末にヨーロッパで市場導入が予定されている電動コンパクトSUVは、内燃機関を搭載する「Tクロス」の電動バージョンとして、「ID.クロス」の名称で発売される。

「VWにとって、小型でコンパクトなBEVファミリーの初公開は、新たな時代の幕開けを意味する」と、IAAを前に発行されたプレスリリースには記されている。突然のネーミングルール変更は、BEVのラインナップとしてID.ファミリーを立ち上げて以降、市場から受け取ったフィードバックを反映したものだろう。「親しみやすさに欠け、ピンとこない」という反応だったと想像する。民衆は「笛吹けど踊らず」だったわけだ。

VWは売れ筋になることを期待するコンパクトBEVのシリーズを導入するにあたり、イメージ刷新を図る狙いなのだろう。2allと聞いてもピンとこないが、ポロと聞けば、「あぁ、コンパクトで実用性も備えており、走りもしっかりしたモデルだろうね」と、容易に想像がつくというものだ。

2025年9月、ドイツ・ミュンヘンで開催されたIAAモビリティー2025で発表されたフォルクスワーゲンの新型電気自動車「ID.クロス コンセプト」。同社のステージにフォルクスワーゲン ブランドCEOのトーマス・シェーファー氏(写真左)が登壇し、ID.クロス コンセプトを紹介した。
2025年9月、ドイツ・ミュンヘンで開催されたIAAモビリティー2025で発表されたフォルクスワーゲンの新型電気自動車「ID.クロス コンセプト」。同社のステージにフォルクスワーゲン ブランドCEOのトーマス・シェーファー氏(写真左)が登壇し、ID.クロス コンセプトを紹介した。拡大
「ID.クロス コンセプト」は、2026年末にヨーロッパで市場導入が予定されているBEV。その名のとおり内燃機関を搭載するコンパクトSUV「Tクロス」の電動バージョンと位置づけられる。
「ID.クロス コンセプト」は、2026年末にヨーロッパで市場導入が予定されているBEV。その名のとおり内燃機関を搭載するコンパクトSUV「Tクロス」の電動バージョンと位置づけられる。拡大
「ID.クロス コンセプト」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4161×1839×1588mmで、ホイールベースは2601mm。外寸は車幅が少し広い以外は現行の「Tクロス」とほぼ同等である。
「ID.クロス コンセプト」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4161×1839×1588mmで、ホイールベースは2601mm。外寸は車幅が少し広い以外は現行の「Tクロス」とほぼ同等である。拡大
水平基調でシンプルにデザインされた「ID.クロス コンセプト」のコックピット。11 インチのデジタルメーターと、13インチのタッチ式センターディスプレイが目を引く。
水平基調でシンプルにデザインされた「ID.クロス コンセプト」のコックピット。11 インチのデジタルメーターと、13インチのタッチ式センターディスプレイが目を引く。拡大
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次に控えるのは「MEB+」ベースのBEV

2023年に国内のイベントで説明を受けたVWの電動化戦略は、2030年にヨーロッパ域内で販売される新車の80%をBEV車にする目標だった。その他のマーケットを含めグローバルでは50%を狙っており、この意欲的な目標を達成するために巨額な投資をした。VWはピープルズカーブランドなので、BEVも多くの人に手が届く身近な存在にする考え。バリエーション豊かなBEVを比較的早いタイミングで展開するため、モジュラー式の専用プラットフォームを開発した。「MEB」である。

MEBを適用したID.ファミリーの第1弾は「ID.3」で、2019年にヨーロッパでデビュー(国内未導入)。2020年にはコンパクトSUVの「ID.4」がドイツでデビューし(国内には2022年に導入)、2021年にはID.4をクーペスタイルにした「ID.5」と、中国向け3列シートSUVの「ID.6」がデビューした(いずれも国内未導入)。2022年にはミニバンタイプの「ID. Buzz」を発表(2025年に国内に導入)。2023年にはミディアムセダンの「ID.7」を発表している。矢継ぎ早だ(国内ではようやく2機種目が導入されたばかりだが)。

これで一応、MEBを使ったID.ファミリーのラインナップはそろったことになる。次に控えるのが、新しい「MEB+」プラットフォームを使ったBEVのシリーズで、すなわちID.ポロとID.ポロGTI、そしてID.クロスというわけ。

MEBとMEB+の最大の違いは、モーターの搭載位置である。MEBはリアモーターで構成されているが、MEB+はフロントモーター。よりコンパクトな車両サイズで乗員と荷物にとって十分なスペースを確保するとなると、リアよりフロントにモーターを搭載するほうがレイアウトを成立させやすいのだろう。ただし、内燃機関に比べて電動系コンポーネントをコンパクトにできるメリットを生かし、MEBと同じくフロントにも収納スペース(フランク)を設けている。

IAAモビリティー2025のフォルクスワーゲンブースに展示されたコンセプトカー「ID. EVERY1(アイディ エブリワン)」。量産バージョンは2027年に発売される予定で、ベース価格は約2万ユーロになるという。
IAAモビリティー2025のフォルクスワーゲンブースに展示されたコンセプトカー「ID. EVERY1(アイディ エブリワン)」。量産バージョンは2027年に発売される予定で、ベース価格は約2万ユーロになるという。拡大
「ID. EVERY1」のリアビュー。フォルクスワーゲンの新しいネーミングルールにのっとれば、市販バージョンは「ID.1」ではなく「ID.up!」になるのだろうか。
「ID. EVERY1」のリアビュー。フォルクスワーゲンの新しいネーミングルールにのっとれば、市販バージョンは「ID.1」ではなく「ID.up!」になるのだろうか。拡大
フォルクスワーゲンの他の電気自動車ラインナップと同じく水平基調デザインが採用された「ID. EVERY1」のインストゥルメントパネル。ダッシュボードと一体化したメーターパネルがフレッシュな印象をもたらす。
フォルクスワーゲンの他の電気自動車ラインナップと同じく水平基調デザインが採用された「ID. EVERY1」のインストゥルメントパネル。ダッシュボードと一体化したメーターパネルがフレッシュな印象をもたらす。拡大
日本では2021年に販売が、本国では2023年に生産が終了したフォルクスワーゲンのエントリーモデル「up!」。2027年に電気自動車としてよみがえる?
日本では2021年に販売が、本国では2023年に生産が終了したフォルクスワーゲンのエントリーモデル「up!」。2027年に電気自動車としてよみがえる?拡大

「ID.up!」のデビューは2027年

バッテリーを含めた電動コンポーネント系は時代進化分が織り込まれて高効率になっており、ソフトウエアの世代もアップデートしている。タブレット端末を並べたようなコックピットは最新の内燃機関モデルと共通しているが、「ゴルフ8」と同世代のモデルで不評だった(?)タッチ系操作は揺り戻しがあり、物理ボタンをミックスさせたHMIを採用する。最新の機能と技術による「平均以上の装備」を搭載しながら、「魅力的な価格」とするのが、MEB+プラットフォームを採用するBEVのコンセプトだ。

VWはポロや(T)クロスを皮切りに、今後導入するID.ファミリーに内燃機関車の伝統的なモデル名を引き継ぐと明言している。となると、次期ID.3は「ID.ゴルフ」に、ID.4は「ID.ティグアン」、ID.7は「ID.パサート」になるということだろう。VWのクルマにアウディやメルセデス・ベンツ、BMWのようなアルファベットと数字の組み合わせによるモデル名はなじまない。VWはそう悟ったようだ。

日本で生活するピープルズのひとりとしては、魅力的なモデルの日本導入を祈るばかりだ。まず、ID.ポロやID.クロスの導入はもちろんのこと、これらと同時にIAAで展示されたコンセプトカー「ID. EVERY1(アイディ エブリワン)」の日本上陸にも期待したい。ID. EVERY1の市販バージョンは新しいネーミングルールにのっとれば、「ID.1」ではなく「ID.up!」だろうか。量産バージョンのデビューは2027年とのことなので、日本導入はそれ以降ということになる。

(文=世良耕太/写真=フォルクスワーゲン/編集=櫻井健一)

コンパクトBEVのコンセプトカーは「ID. 2all(アイディ ツーオール)」のモデル名だったが、市販モデルは「ID.ポロ」として2026年にヨーロッパで発売されることになった。写真は左から「ID.ポロGTIコンセプト」「ID.クロス コンセプト」「ID.ポロ コンセプト」。
コンパクトBEVのコンセプトカーは「ID. 2all(アイディ ツーオール)」のモデル名だったが、市販モデルは「ID.ポロ」として2026年にヨーロッパで発売されることになった。写真は左から「ID.ポロGTIコンセプト」「ID.クロス コンセプト」「ID.ポロ コンセプト」。拡大
「ID.ポロ コンセプト」のリアビュー。ドイツ・ミュンヘンで開催されたIAAモビリティー2025にもこの姿でディスプレイされた。
「ID.ポロ コンセプト」のリアビュー。ドイツ・ミュンヘンで開催されたIAAモビリティー2025にもこの姿でディスプレイされた。拡大
優れたダイナミクスと運転する楽しさを提供すると紹介される「ID.ポロ 」のハイパフォーマンスバージョン「ID.ポロGTIコンセプト」。
優れたダイナミクスと運転する楽しさを提供すると紹介される「ID.ポロ 」のハイパフォーマンスバージョン「ID.ポロGTIコンセプト」。拡大
本編とはあまり関係はないが、初のフルモデルチェンジを受け、2代目に進化した「Tロック」も欧州で注目されている。ドイツでは同年11月に販売が開始される予定だ。
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