スバル・インプレッサWRX STI A-Line 4ドア(4WD/5AT)【試乗記】
「大人のクルマ」ってどんなクルマ? 2010.09.27 試乗記 スバル・インプレッサWRX STI A-Line 4ドア(4WD/5AT)……373.8万円
大人のプレミアムスポーツを掲げる「WRX STI A-Line」の4ドアモデルに試乗。操る楽しさと上質感は両立できたのか?
カリカリではなく、ゆとりのエンジン
自分でも深く考えずに手クセで使ってしまうフレーズに、「大人のクルマ」というものがある。たとえば、「その上品なたたずまいは、まさに大人のクルマだ」みたいなのが典型的な用例だ。「しなやかなサスペンションが、大人っぽい挙動を生みだす」といった具合に応用する場合もある。でも実際のところ、「大人のクルマ」ってどんなクルマ? 大人といってもいろんな人がいるわけで、たとえば定年後に家族に愛想を尽かされた男が「ノー・フューチャー!」と叫びながらブッ飛ばす中古の「スーパー7」は、かなり大人っぽい。「熟考に熟考を重ねて、自分の生活にクルマは不要だという結論にいたりました」ということで手放したクルマも、ある意味で大人のクルマだ。
というわけで「大人のクルマ」に最大公約数を見つけることは難しいわけですが、自分なりの基準はある。エンジンはパワーよりもフィーリング重視。がちがちの足まわりは最近ちとツラい。デザインに関しては好みとしか言いようがないけれど、インテリアの質感や触感がしょぼいのはさびちい、などなど。
で、今回試乗した「インプレッサWRX STI A-Line」も「大人のクルマ」のセンを狙ったモデルではないかと推測する。肩ひじ張らず、上品にスポーティさを楽しむためのクルマと言いましょうか。ちなみに今回お借りしたのは、2010年7月のマイチェンで追加された4ドアモデルだ。
「WRX STI A-Line」の成り立ちを説明すると、エンジンは「WRX STI」が積むカリカリの2リッターツインスクロールターボに代わって、よりワイドレンジ・フラットトルクな2.5リッターシングルスクロールターボを採用。トランスミッションも6段MTではなく5段ATとなる。前マクファーソンストラット、後ダブルウィッシュボーンのサスペンション形式に変わりはないけれど、四駆システムが違う。
「WRX STI」が前後の駆動力配分を41:59とするマルチモードDCCD(ドライバーズ・コントロール・センターデフ)を用いるのに対して、「WRX STI A-Line」は前後45:55の配分をベースに、状況に応じて連続可変となるVTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)を採用している。
エンジン始動、タイヤが数回転したところで「大人っぽい!」とピンとくる。
トルコンにもよさがある
スーッと前に出るジェントルな発進加速がそう思わせるのだ。アクセルペダルに足を載せるだけで、軽やか&スムーズ&静かにボディを押し出してくれるエンジンの仕事っぷりが、大人っぽい。スペックを見ると、35.7kgmという大トルクをわずか2800rpmという低い回転域で生み出している。ちなみに「WRX STI」のツインスクロールターボは43.0kgmの特大トルクを発生するけれど、それは4400rpmでの出来事だ。
スペックでクルマを判断してはいけないとはいうものの、この数値は両者のキャラクターの違いを表している。つまり、ブン回した時のスリルとサスペンスを狙った「WRX STI」に対して、「WRX STI A-Line」は日常領域での豊かさを狙っている。刺激の強さでいえば「WRX STI」に軍配が上がろうが、いいモノ感なら「WRX STI A-Line」だ。
しばらく乗っていてあらためて感じたのは「トルコンもいいじゃんか」ということ。最近はフォルクスワーゲンのDSGに代表されるツインクラッチ式の評価が高く、自分としてもトルコンには「おっくれてるぅ〜」という印象をいだいていた。ところが「WRX STI A-Line」のトルコン式5ATはよく訓練されている。フルオートマチックのモードで乗っても、変速の素早さ、滑らかさともに不満は感じないし、マニュアルモードにして手動で指令を送ると間髪入れずに変速する。
ツインクラッチ式は、カチッとドライに変速するわけだけれど、「WRX STI A-Line」の5ATには絶妙の湿り気とタメがある。たとえて言うなら、ツインクラッチ式の変速がクオーツ式時計の秒針の動きで、「WRX STI A-Line」のトルコン式は機械式時計の趣だ。
トルコンも、やり方次第でまだまだ伸びシロがある。というか、もしかすると上質な変速を表現するのならトルコンかも、と目からウロコ。言われてみれば、メルセデス・ベンツをはじめトルコンの改良に熱心なプレミアムブランドも世界にはたくさんある。
といったように最初のうちは好印象のオンパレードだったけれど、さまざまなシチュエーションを走るにつれ、「むむむ」と疑問を感じるようになった。それはなぜかと言いますと……。
希望を言わせていただけるなら
最初に「むむむ」と思ったのは、首都高速のつなぎ目。ガッシャーンというショックがダイレクトに伝わる。はて、おかしい。「WRX STI」も足まわりを固められていたけれど、乗り心地が悪いとは感じなかった。辛口だけど透きとおっていたというか。ところが「WRX STI A-Line」は、突き上げが感じられるだけでなく、その後で上下に揺さぶられる。辛いのはよしとして、雑味やエグ味がいただけない。
タイヤサイズは245/40R18で、銘柄がブリヂストンのポテンザRE050Aに一本化されていることも含めて「WRX STI」と共通。でも、このタイヤと「WRX STI」の足まわりとの組み合わせは抜群だった。といったもろもろをかんがみるに、「WRX STI A-Line」は、サスペンションとタイヤのマッチングに問題があるのではないかと推測する。事実、重くて大きな靴を履いているかのようにバタバタする瞬間がたびたびあった。
飛ばした時にスパッと身を翻す牛若丸的フィーリングは、インプレッサの名に恥じない。恥じないのではあるけれど、路面が悪いところでは前述のバタバタ感が顔を出す。
「S」(Sport)、「S♯」(Sport Sharp)、「I」(Intelligent)の3つのモードを選べるSI-DRIVEは、いろいろ試した後で「S」に落ち着く。「I」だと飛ばした時にモノ足りないだけでなく、微妙なアクセル操作でスピードをコントロールしたいという場面でも歯がゆい。「S♯」はわずかなアクセル操作に過敏に反応する感じが芝居がかっている気がして、最初は面白いけれど次第に飽きる。
5速2500rpmの高速巡航、路面状態がよければクルージングは静かで快適だ。タウンスピードでも低回転域からピックアップがいいから、気分よく走れる。
希望を言わせていただけるなら、このパワートレインと、もうちょい穏やかな心持ちで乗ることができるアシが組み合わされると、自分が思うところの「大人のクルマ」が出来上がる。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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