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プジョー2008 GT BlueHDi(FF/8AT)

安定の正常進化 2023.12.20 試乗記 生方 聡 プジョーのコンパクトSUV「2008」の最新モデルが日本に上陸。デザインのブラッシュアップを受けるとともに、機能面でも若干の進化を果たしている。1.5リッターディーゼルターボの「GT BlueHDi」に試乗した。
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フロントマスクがより精悍に

プジョー2008の“新型”が日本でも2023年10月に発売になった。上に向かって広がる縦グリッド型グリルの中心に、ライオンの横顔が雄々しい2Dの新エンブレムを収めたフロントマスクは、上級モデルの「408」同様、とても精悍(せいかん)な印象を受ける。油断しているとフルモデルチェンジかと勘違いしそうなほどの変わりようだが、実際には2019年に登場した2代目2008のマイナーチェンジ版。フロントマスクだけを見ればビッグマイナーチェンジといったほうがいいかもしれない。

それにしても、マイナーチェンジの前後でこれだけ印象が変わるのには驚くばかりだ。ラジエーターグリルの上の部分がボディー同色になって、ボンネットが長く低く見えるようになり、同時にグリルがワイドになったおかげで、重厚さも増した印象である。よりシャープなデザインのヘッドライトと、“ライオンのかぎ爪”をイメージしたという3本のLEDデイタイムランニングライトの組み合わせも精悍さを際立たせていて、新しいマスクを手に入れた“百獣の王”が後ろから迫ってきたら、昼夜を問わずすぐに道を譲ってしまいそうだ。

マイナーチェンジだけにリアコンビネーションライトも新デザインが採用されるが、当然のことながら基本的なフォルムに変わりはない。ボディーサイズも、4305mmの全長と1770mmの全幅は同じ。一方、全高は旧型が1550mmだったのに対して、シャークフィンアンテナを採用したことで1580mmにアップ。見た目はいいが、立体駐車場を利用する機会が多い人には、なんとも悩ましい進化である。

ヘッドランプ下部の3本のLEDデイタイムランニングライトが新しい。従来型では“ライオンのかぎ爪”はヘッドランプ内部にレイアウトされていた。
ヘッドランプ下部の3本のLEDデイタイムランニングライトが新しい。従来型では“ライオンのかぎ爪”はヘッドランプ内部にレイアウトされていた。拡大
全長4305mmの扱いやすいサイズが人気のひとつ。シャークフィンアンテナの採用によって従来型よりも全高が30mm高い1580mmになった。
全長4305mmの扱いやすいサイズが人気のひとつ。シャークフィンアンテナの採用によって従来型よりも全高が30mm高い1580mmになった。拡大
リアコンビランプも新デザインに。「PEUGEOT」ロゴとナンバープレートの間にあったライオンエンブレムがなくなっている。
リアコンビランプも新デザインに。「PEUGEOT」ロゴとナンバープレートの間にあったライオンエンブレムがなくなっている。拡大
「KARAKOY」(イスタンブールの景勝地)と名づけられたシンメトリーデザインのホイールも新しい。どの部分をスポークと呼ぶべきか分からない複雑な形状だ。
「KARAKOY」(イスタンブールの景勝地)と名づけられたシンメトリーデザインのホイールも新しい。どの部分をスポークと呼ぶべきか分からない複雑な形状だ。拡大
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インテリアの変更は控えめ

フロントマスクの変貌ぶりに比べると、インテリアの変更は控えめだ。上下フラットの小径ステアリングホイールと、3Dヘッドアップインストゥルメントパネルなどで構成される個性的な「3D iコックピット」は旧型から受け継がれ、抑揚に富むダッシュボードのデザインも基本的にはそのままだ。その一方で、中央のタッチスクリーンが10インチに大型化され、見やすさと扱いやすさが向上したのがうれしいところだ。

パワートレインは、旧型では1.2リッター3気筒ガソリンターボ、1.5リッター4気筒ディーゼルターボ、さらに、電気モーターの3タイプが用意されていた。これに対して、マイナーチェンジモデルは1.2リッターガソリンターボと1.5リッターディーゼルターボというラインナップに。2つのエンジンのスペックはマイナーチェンジの前後で変わらず、前者が最高出力130PS、最大トルク230N・mを誇るのに対して、後者は最高出力130PS、最大トルク300N・mと、最高出力の数字を合わせているのも以前と同じである。

細かいところでは、FFでありながら悪路走破性を高める「グリップコントロール」が廃止されたのが惜しいところ。旧型に標準だったパノラミックサンルーフも用意されないが、ガソリンエンジンの「2008 GT」が419万8000円、ディーゼルエンジンの2008 GT BlueHDiが445万4000円と、値上げラッシュのこのご時世で、いずれも旧型より4万円安くなっているのも驚きである。

2023年12月中旬現在、最新モデルが「NEW 2008」、従来モデルが「2008」として併売されている。パノラミックサンルーフを希望する人はあえて従来型を選ぶ手も。
2023年12月中旬現在、最新モデルが「NEW 2008」、従来モデルが「2008」として併売されている。パノラミックサンルーフを希望する人はあえて従来型を選ぶ手も。拡大
ダッシュ中央のタッチスクリーンは3サイズアップの10インチに。内部のソフトウエアも「308」などと同じ最新世代になった。
ダッシュ中央のタッチスクリーンは3サイズアップの10インチに。内部のソフトウエアも「308」などと同じ最新世代になった。拡大
メーターパネルは3D表示式。プジョー独自のドライビングポジションも相まって、未来感のあるコックピットだ。
メーターパネルは3D表示式。プジョー独自のドライビングポジションも相まって、未来感のあるコックピットだ。拡大

1.5リッターでも加速は十分

今回試乗したのは、ディーゼルエンジンを搭載する2008 GT BlueHDi。早速運転席に座り、ドライビングポジションを合わせるが、3D iコックピットではステアリングホイールの上からメータークラスターを見るため、他のクルマに比べて相対的にステアリングホイールが低い位置になるのに最初はなじめなかった。しかし、何度か乗るうちに当初あった違和感は薄れ、いまではすんなりと運転席に収まることができるようになった。

早速走りだすと、2008のディーゼルターボは排気量こそ1.5リッターとやや控えめであるが、比較的コンパクトで1320kgと軽めのボディーのおかげもあって、低速から加速には余裕がある。2000rpm以下の低回転でも活発な動きを見せてくれるから、街なかを走り回る場面などでは実に扱いやすい。アクセルペダルを大きく踏み込めば、4000rpm超まで力強い加速が続き、高速道路や山道の上りでもスポーティーな走りが楽しめる。

気になったのがディーゼルエンジン特有のノイズ(N)や振動(V)。ライバルに比べると低中速走行時のNVがやや耳につく。一方、100km/hまで速度を上げれば、8速で1600rpmと低回転を保つこともあり、NVはさほど気にならず、快適なハイウェイドライブを楽しむことができた。

この試乗車のボディーカラーはマイナーチェンジで新規設定された「セレニウムグレー」。同時に追加された「オケナイトホワイト」も合わせて全5色から選べる。
この試乗車のボディーカラーはマイナーチェンジで新規設定された「セレニウムグレー」。同時に追加された「オケナイトホワイト」も合わせて全5色から選べる。拡大
斜めに走るステッチが新鮮なシート表皮はアルカンターラとテップレザーの組み合わせ。運転席には電動調整機能が備わっている。
斜めに走るステッチが新鮮なシート表皮はアルカンターラとテップレザーの組み合わせ。運転席には電動調整機能が備わっている。拡大
後席空間はボディーの全長が4305mmとは思えないほどに広々としている。コンソールボックスの背面に2つのUSBタイプCポートを完備する。
後席空間はボディーの全長が4305mmとは思えないほどに広々としている。コンソールボックスの背面に2つのUSBタイプCポートを完備する。拡大

足のよさはさすがプジョーだが

標準で215/60R17サイズのタイヤを履く2008 GT BlueHDiは、一般道では路面からの軽いショックを伝えがちだが、速度が上がるにつれて気にならなくなる。走行時のロールやピッチといった動きもSUVとしては小さく、高速道路を走行する際もまずまずのフラットライド。少し高いアイポイントに慣れれば、SUVを操っていることを忘れてしまう。

この日はワインディングロードに足を伸ばすチャンスもあったが、しなやかな動きを見せるサスペンションがしっかりと路面を捉え、気持ち良くコーナーを駆け抜けていくのが実にプジョーらしい。

室内の広さにも触れておくと、Bセグメントと比較的コンパクトなボディーサイズでありながら、後席はヘッドルーム、ニールームともに十分余裕があり、足元も窮屈さとは無縁。荷室も通常で75cm、後席を畳めば130cm以上の奥行きが確保される。

個人的には、電気自動車版の「e-2008」が見当たらないのが残念だが、それを除けば正常進化した2008は、このクラスのSUVとして魅力的な一台であるのは確か。基本設計を共有する「208」より広い室内がほしいというプジョーファンにとっても、有力な選択肢となるに違いない。

(文=生方 聡/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

1.5リッター4気筒ディーゼルターボエンジンは最高出力130PS、最大トルク300N・mを発生。ガソリンモデルも合わせて全車が前輪駆動だ。
1.5リッター4気筒ディーゼルターボエンジンは最高出力130PS、最大トルク300N・mを発生。ガソリンモデルも合わせて全車が前輪駆動だ。拡大
ダッシュボードに並んだ鍵盤状のスイッチ類は従来どおりだが、その奥に新しいインフォテインメントシステム用のホームボタンなどのスペースをねん出している。
ダッシュボードに並んだ鍵盤状のスイッチ類は従来どおりだが、その奥に新しいインフォテインメントシステム用のホームボタンなどのスペースをねん出している。拡大
鍵盤スイッチの下にあるスマートフォンのワイヤレス充電器。普段はふた(手前のグレーの部分)をしておけるのがスマートだ。
鍵盤スイッチの下にあるスマートフォンのワイヤレス充電器。普段はふた(手前のグレーの部分)をしておけるのがスマートだ。拡大
ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の3種類。ブレーキをつまんだり放したりすることで悪路走破性を高める「グリップコントロール」機能がなくなっている。
ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の3種類。ブレーキをつまんだり放したりすることで悪路走破性を高める「グリップコントロール」機能がなくなっている。拡大

テスト車のデータ

プジョー2008 GT BlueHDi

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4305×1770×1580mm
ホイールベース:2610mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:130PS(96kW)/3750rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)215/60R17 96H/(後)215/60R17 96H(コンチネンタル・エココンタクト6 Q)
燃費:20.8km/リッター(WLTCモード)
価格:445万4000円/テスト車=452万0385円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(4万9170円)/ETCユニット(1万7125円)

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:2810km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:349.0km
使用燃料:24.2リッター(軽油)
参考燃費:14.7km/リッター(満タン法)/14.4km/リッター(車載燃費計計測値)

プジョー2008 GT BlueHDi
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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