フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/7AT)【試乗速報】
むき出しのホットハッチ 2010.09.21 試乗記 フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/7AT)……334万9500円
「ポロ」のスポーツモデル「GTI」が、待望の日本上陸。3代目となる新型に試乗して感じた、予想を超えた“アツさ”とは?
GTIは “ブランド”
愛すべき「ルポ」なき今、最も小さい“ゲー・テー・イー”が「ポロGTI」である。1976年の高性能「ゴルフ」に始まる「GTI」は“Grand Touring Injection”(電子制御燃料噴射のGT)の略と言われている。でも、海外のGTIファンサイトではいろんな解釈をされていておもしろい。“Get There Immediately”(すぐ着ける)、“Goes Totally Insane”(パーになる) 、“Great Time Investment”(すばらしき時間への投資)なんてのは傑作だ。フォルクスワーゲンラインナップのなかでもGTIはもはや“ブランド”で、それゆえ別格なのである。
新しいポロGTIのパワーユニットは、1.4リッターのツインチャージャー。基本は「ゴルフTSIハイライン」用と同じものだが、主にチップチューンにより160psから179psへとパワーアップを果たしている。過給エンジン、ましてやターボ&スーパーチャージャーの過給器“ダブルがけ”となると、電子制御による出力アップの伸びシロが大きいのもメリットだろう。先代のポロGTIは1.8リッターターボだったが、排気量はダウンサイジングしても、パワーでは29ps上回る。
もうひとつ新型ポロGTIのハイライトは、変速機が7段DSGになったことだ。今後、本国ではMTモデルの追加もありえるが、ゴルフGTIの例をみてもわかるとおり、AT王国の日本にMTが輸入されるとは考えにくい。これまでは“MTのみ”だったいちばん小さなGTIも、今度の代替わりで「DSGのクルマ」になったのである。なにしろこのツインクラッチ式自動MTは、足踏み式クラッチMTより加速も燃費もいいのだから手に負えない。
ヤンチャな乗り心地
箱根ターンパイクで行われた試乗会は、60分間の短期決戦。早速走り出すと、サプライズは予想外の“アツさ”だった。気温ではない、新型ポロGTIのキャラだ。
ノーマルより15mmローダウンした専用スポーツサスペンションは、最近のホットハッチのなかでもかなり硬い。17インチホイールに履く215ヨンマルのダンロップも、路面の凸凹を正直に拾う。平滑なターンパイクでこんなにヤンチャな乗り心地をみせるクルマも珍しい。スポーツドライバーなら「待ってました!」の硬さかもしれないが、理解のないカノジョや家族だと、デートカーにはそろそろ限界かなと思う。
走り出した途端、ぼくは90年代前半にあった「フィアット・チンクエチェント トロフェオ」なんていうカップカーを思い出した。それくらい、やる気むき出しのホットハッチなのである。
そうしたキャラクターにパワーユニットもドンピシャリだ。車重1210kgは先代GTIと変わらないのに、0-100km/h加速を6.9秒でこなし、マックス225km/hをマークする。「ゴルフGTI並み」の動力性能に不満のあろうはずもないが、ポロはそれにラテン的なアツさが加わる。ハジけるように速いのだ。
「小さいゴルフGTI」じゃない!
1.2リッターターボのノーマルポロと同じ乾式7段DSGは、この新型GTIが絞り出す250Nm(25.5kgm)のトルクが許容限度いっぱいというが、かといってイッパイイッパイ感を与えることはなく、1.4リッターツインチャージャーのハイチューンぶりを有効に引き出してくれる。
エンジンの吹きあがりは速く、フル加速すると下のギアではあっというまに7000rpmのリミットに達し、“プンッ”という小気味よい音を立ててシフトアップする。パドルシフトによるシフトダウンも電光石火の速さだ。DSGのメリットは、ギアチェンジという“スポーツ作業”を頻繁に、気軽に味わいたくなることだ。そんなハイテク変速機の採用がポロGTIを刷新したことは間違いない。
ポロ初のXDS(電子制御デフロック)を搭載したこともあり、これだけパワフルなFFでもアンダーステアは軽微だ。ロールも小さいが、硬いサスペンションが細かな上下動を伝えるので、けっしてオン・ザ・レールの退屈なコーナリングではない。“曲がり”もアツいのだ。フォルクスワーゲン随一のファンカーであることは間違いない。
価格は294万円である。ノーマルポロの高いほうと比べると“GTI代”は52万円。それはともかく、あと74万円出すとゴルフGTIが買えるというのは悩ましいところかもしれない。けれども、今度のポロGTIはおよそ「小さいゴルフGTI」じゃないところが真骨頂であり、魅力でもある。ふだんは大人の高級車として振る舞う、振る舞えるゴルフGTIに対して、ポロGTIはずっと確信犯的なホットハッチに仕立てられている。ゴルフがプレミアムGTIなら、ポロはネイキッドなGTIである。
(文=下野康史/写真=荒川正幸)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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