レクサスRZ350e“バージョンL”(FWD)/RZ550e“Fスポーツ”(4WD)/RZ600e“Fスポーツ パフォーマンス”(4WD)
未来はこれからやってくる 2025.12.24 試乗記 「レクサスRZ」のマイナーチェンジモデルが登場。その改良幅は生半可なレベルではなく、電池やモーターをはじめとした電気自動車(BEV)としての主要コンポーネンツをごっそりと入れ替えての出直しだ。サーキットと一般道での印象をリポートする。一充電走行距離が599kmから733kmに
2025年3月15日に「新型」としてグローバル発表されたレクサスRZは、RZそのもののデビューからわずか3年というタイミングでの登場だった。また、上屋や内装のデザインは基本的に変わっていないので、一般的にはマイナーチェンジということになるだろう。
いっぽうで、BEVのキモとなる三元系リチウムイオン電池はセル数を積み増して総電力量を約8%アップ(71.4kWh→76.96kWh)したほか、充電システムも新しくなり、モーターや減速機、インバーターを一体化したeアクスルも刷新。そのために電池パックの内部構造も変え、電池重量増を相殺するために基本骨格の一部を軽量化。さらには、話題の新機軸「ステアバイワイヤ」のための操舵システム周辺部も設計変更されて、つまりはプラットフォーム部分にまで大きく手が入った。ある意味では、下手なフルモデルチェンジより手間がかかっている。これらの変更点は、DNAを共有する「トヨタbZ4X」や「スバル・ソルテラ」の最新型と共通のところも多い。
さらに注目すべきは、新しいRZのBEV性能は単純にバッテリー総電力量が増えただけのレベルではないことだ。BEVの性能を語るうえではいまだ欠かせない一充電走行距離(WLTCモード)は、ラインナップ中で唯一のFWD(ほかは全車4WD)の「RZ350e“バージョンL”」で733kmに達した。その前身モデルにあたる「RZ300e」が599kmだったから、じつに22%強の延伸だ。また、近年の上級BEVでは常識化しつつある、充電前にバッテリー温度を最適化する“プレコンディショニング機能”も加わり、急速充電性能も最大140kWから150kWに引き上げられた。
これはbZ4Xの開発陣も認めていたことだが、デビューから短期間でこれだけの大手術を強いられたのは、つまりはトヨタ(≒レクサス)が、BEV界における進化のスピード感を見誤っていたということだろう。
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最高出力も強化した特別仕様車
というわけで、2025年末に日本でも正式発売となった新しいRZのカタログモデルのラインナップは、既報では、前記のRZ350eと「RZ500e」、そして「RZ550e“Fスポーツ”」の3グレードだった。しかし、今回の国内導入に合わせて、特別仕様車の「RZ600e“Fスポーツ パフォーマンス”」も登場して、全4種のラインナップでスタートする。
この特別仕様車は大幅改良前に100台限定で販売された「RZ450e“Fスポーツ パフォーマンス”」の進化版といっていい。“Fスポーツ”(今回はRZ550e“Fスポーツ”)をベースに、エアレースパイロットの室屋義秀選手プロデュースのカーボンエアロパーツが随所に追加されるほか、タイヤを含めた専用仕立てのシャシーになる点は、前身にあたるRZ450e~と同じだ。
しかし、今回の内容はさらに凝っていて、新型RZならではの新機軸である「ステアバイワイヤ」が備わる以外にも、ブレーキやシートのグレードアップ、そしてシステム出力がRZ450e~より83kW、ベース車(今回はRZ550e“Fスポーツ”)より13kW高い313kW≒426PSまで引き上げられている。
千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイを拠点に開催された今回のメディア向け試乗イベントでは、特別仕様車のRZ600e“Fスポーツ パフォーマンス”のサーキット試乗からのスタートとなった。
特別仕様車を含む新“Fスポーツ”は、話題のステアバイワイヤに加えて、もうひとつ、エンジン車のギアチェンジを模した新機軸「インタラクティブマニュアルドライブ(IMD)」も搭載された。これはステアリングパドルをはじくと、疑似シフトショックとともに減速Gが変化するだけでなく、選んだ疑似ギアのポジションによって車速上限も決まる……と、まんまエンジン車のような制御となるのが特徴だ。
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新しい運転感覚をもたらすステアバイワイヤ
最大操舵角200度というクイックレシオのステアバイワイヤ(以下、SBW)も、少なくともサーキット走行では素直に気分を盛り上げてくれる。SBWは高速になるとマイルドなレシオになり、SBWの課題である過敏さがあまり顔を出さないからだ。
それにしても、IMDで各ギアの上限速度付近になると、エンジンのフューエルカットを思わせるようにパワーが絞られるだけでなく、そうした一連の制御に合わせて疑似エンジン音も見事に変化。そのあまりに忠実な“エンジン感?”再現ぶりに思わず笑ってしまった。
続いて、袖ヶ浦フォレストレースウェイ周辺の公道で、RZ550e“Fスポーツ”に乗る。このモデルもSBWとIMDという二大新機軸を標準装備する。
低速かつ舵角が小さい領域では純粋に操舵量を減らすクイック制御となるSBWは、試乗前に練習用のパイロンコースまで用意されるほど新しい走行感覚である。ただ、約2年前に乗ったプロトタイプよりは、ずいぶんと落ち着いた所作に感じられたのは、最大操舵角が当時の150度から200度にスロー化されたこともあるだろう。
プロトタイプ試乗当時は「基本設計はこれでほぼ確定」と担当者も語っていたが、開発最終期に「やはり、クイックすぎて違和感がまさる」との判断で200度に変更されたとか。この180度+α=200度という最大操舵角が、両手でステアリングを握ったまま操作できるギリギリの最大量らしい。
それでも、通常のステアリングとは異次元のクイックさゆえ、最初は交差点ひとつにも気を使ったが、30分も乗れば、助手席に乗車いただいた開発担当氏にも「ずいぶん慣れてきましたね」といわれるくらいにはスムーズに運転できるようになった。こうなると、絶対的な操作量減少による疲労軽減(がSBWの明確なメリットのひとつ)も実感できる。
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操作性と保安基準の落としどころ
RZのSBWは、走行中の両手はステアリンググリップを握ったまま……を想定した設計なので、操縦かん型ステアリングには、IMD用パドルとウインカーレバー、ワイパーレバーが固定される。これらがせまいスペースにギチギチに押し込められており、その操作性に文句なしとはいわない。合計で正味1時間弱という今回の試乗時間では、パドルをどの指で操作すべきかも決まらなかった。
個人的には、パドルは(L字やコの字型にするなど)形状を工夫して大型化すべきと思ったし、ワイパーレバーはそもそもステアリングにマウントする必要はないのでは……と指摘すると、そうした意見はもちろん開発中にもあがったが、ステアリング系は重要保安部品でもあって、各部品のクリアランスや形状にも厳格な規定があるという。ワイパーレバーにしても、ウインカーレバーと左右対称にすることで、左右どちらのハンドル位置でも部品を共有できる生産上のメリットも今回は考慮した……とは開発担当氏の弁だ。
最後にFWDのRZ350e“バージョンL”にも乗ったが、SBWではない古典的なステアリングフィールにホッとしたのはウソではない。自動運転を含む先進運転支援との親和性や衝突安全性での利点、パッケージレイアウトの自由度などを考えれば、SBWが将来的に常識となるのは間違いないだろうが、そのドライビングスタイルは、今のRZがベストなのかはわからない。
ところで、今回、RZの典型的な顧客像をうかがったところ、日本では「RX」や「NX」のプラグインハイブリッド車(PHEV)からの乗り換えが明確に多いのだという。PHEVで普段はほぼBEV状態で走るようになると、まれにエンジンが始動するとガッカリしてしまう体質になるケースが多いらしい。その時点で、自分の生活はどれくらいのBEV航続距離があれば事足りるかも実感できているので、迷うことなくBEVに乗り換えられるというわけだ。なるほどね。
(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
レクサスRZ350e“バージョンL”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1895×1635mm
ホイールベース:2850mm
車重:1970kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:227PS(167kW)
最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
タイヤ:(前)235/60R18 103H/(後)235/60R18 103H(ヨコハマ・アドバンV61 E+)
一充電走行距離:733km(WLTCモード)
交流電力量消費率:120Wh/km(WLTCモード)
価格:790万円/テスト車=857万1000円
オプション装備:デジタルキー(3万3000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(23万1000円)/パノラマルーフ<IR・UVカット機能、Low-Eコート、調光機能>(40万7000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:468km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
レクサスRZ550e“Fスポーツ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1895×1635mm
ホイールベース:2850mm
車重:2140kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:227PS(167kW)
フロントモーター最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
リアモーター最高出力:227PS(167kW)
リアモーター最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
システム最高出力:408PS(300kW)
タイヤ:(前)235/50R20 104V XL/(後)255/45R20 104V XL(ダンロップSPスポーツマックス060)
一充電走行距離:582km(WLTCモード)
交流電力量消費率:144Wh/km
価格:950万円/テスト車=1033万6000円
オプション装備:ボディーカラー<ブラック&ニュートリノグレー>(16万5000円)/デジタルキー(3万3000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(23万1000円)/パノラマルーフ<IR&UVカット機能付き、Low-Eコート付き、調光機能付き>(40万7000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:500km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
レクサスRZ600e“Fスポーツ パフォーマンス”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4860×1965×1615mm
ホイールベース:2850mm
車重:2140kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:227PS(167kW)
フロントモーター最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
リアモーター最高出力:227PS(167kW)
リアモーター最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
システム最高出力:426PS(313kW)
タイヤ:(前)255/40ZR21 102Y XL/(後)295/35ZR21 107Y XL(ヨコハマ・アドバンスポーツV107)
一充電走行距離:525km(WLTCモード)
交流電力量消費率:159Wh/km
価格:1216万5000円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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