レクサスGX550“オーバートレイル+”(4WD/10AT)
パワフル……なんだけど 2026.03.30 試乗記 スタッドレスタイヤ装着の「レクサスGX」でウインタードライブへ。クルマ好きにとってはいかにも胸がふくらむシチュエーションだが、刻一刻と変化する自然環境が相手ゆえに、なかなか一筋縄ではいかないものだ。山に分け入る際には引き返す覚悟もお忘れなく。ところで買えるんだっけ?
なかなか路上で出会えないクルマの代表格がレクサスGXである。予定よりかなり遅れた2025年4月の発売(さらにその1年前には“オーバートレイル+”が100台限定で先行発売)からそろそろ1年たつが、まだほとんど見かけない(と思っていたら、この撮影中に蓼科のスキー場で1台発見!)。レクサスのGXや「LX」は現在も「詳しくは販売店にお問い合わせください」とのことで、ホームページ上では納期の目安さえも明らかにされていない。そもそもトヨタ&レクサスの大半の車種が同様である。ランクル一族は世界中から引きがあるとはいえ、そろそろ本腰を入れて対策しないとトヨタの面目にかかわるのではないだろうか。
レクサスGXは「ランドクルーザー」の“300”や“250”と同様のラダーフレーム「GA-Fプラットフォーム」を使用する本格的なクロスカントリーSUVである。海外市場向けには以前から「ランドクルーザー プラド」のレクサス版として存在したGXだが、日本ではこの3代目が初登場である。「GX550」にはオンロード志向でより豪華な仕様の“バージョンL”と、オフロード向けの装備をもれなく備える“オーバートレイル+”の2車種がラインナップされているが、パワーユニットはどちらも3.5リッターV6ガソリンツインターボで変速機も10段ATとなる。前:ダブルウイッシュボーン/後ろ:リジッドのサスペンションは“250”と同じだが、ナビ連動AVS(電子制御可変ダンパー)が備わるなど、上級コンポーネントが盛り込まれている。
明らかにパワフル
日本仕様のパワートレインはレクサスLXやランクル“300”などと同じ3.5リッターV6ツインターボエンジンのみ(正確な排気量は3444㏄だがエンジンの型式名がV35A-FTSなのでそちらに倣う)。最高出力と最大トルクは353PS/4800-5200rpmと650N・m/2000-3600rpmというもので、ランクル“250”に積まれている2.8リッター4気筒ディーゼルターボの204PS/3000-3400rpmと500N・m/1600-2800rpm、同じく2.7リッター自然吸気ガソリンの163PS/5200rpmと246N・m/3900rpmと比べると圧倒的な差がある。しかも“250”はディーゼルターボが8段、ガソリンが6段のATであるのに対して、レクサスGXはダイレクトシフト10段AT(もちろんローレンジ付き)を採用しているから、“250”の「ディーゼルZX」より100kg重い2.5t近い車重をものともせずに加速する。
ランクル“250”がオンロードではやや非力で、特に高速道路での合流加速や高速巡航では物足りないと感じるのとは対照的に、GXは当然ながらどんな場面でも余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で、フルスロットルを与えれば豪快に回って、ちょっとびっくりするぐらいの怒涛(どとう)の加速を見せる。一族で随一の俊足ではなかろうか。
オフロードも万全……とは言い切れない理由
パワフルこの上ないGX550ではあるが、この“オーバートレイル+”(2列シート5人乗り/バージョンLは3列シート7人乗り)には本格的なオフロード走行用の機能がもれなく搭載されている。ランクル同様、路面状況に合わせてオートからロック(岩場)まで6種類の駆動モードを選択できる「マルチテレインセレクト」をはじめ、センターに加えてリアのデフロック、クロールおよびダウンヒルアシストコントロール、「E-KDSS」(電子制御スタビライザー)などを装備。各部がブラックアウトされたボディーに加え、アンダーガードやホイールアーチモールなども専用装備である。さらにタイヤも21インチが標準の“バージョンL”に対して18インチとなり、この試乗車は季節に合わせてブリヂストンの最新スタッドレス「ブリザックWZ-1」を履いていた。
もっとも、その走破性をちょっと試してみようと、踏み跡のない雪の林道を登ってみようとしたが歯が立たなかった。もちろんローレンジを選び、センターとリアのデフもロックしたにもかかわらず、である。この日は気温が高く、溶け残った雪はいわゆるクラスト状で、一見硬い表面の下はザクザクの柔らかい雪であり、サイプが細いブリザックではまるで食いつかなかったのだ。GX550のような本格派SUVに乗っていると、つい試したくなるのがクルマ好きの性(さが)というものだが、リアルな雪道は千差万別であり、特に最近のスタッドレスはアイスバーン性能を重視する代わりに溶けかかったかき氷のような雪は苦手である。レクサス最強ともいえるGXでも決して過信は禁物である。
乗り心地に難あり
余裕たっぷりのパワートレインのおかげで高速道路は快適安楽、と言いたいところだが、実際はそうでもなかった。というのも、ちょっと舗装が荒れているところではなぜかドタバタと落ち着きがない乗り心地をみせたからである。
リアサスペンションがリジッドのクロスカントリーSUVだとはいえ、何しろレクサスなのだからもう少しバタつきを抑えたフラットな乗り心地を期待するのが当たり前と思うが、これでは正直ロングドライブはちょっとしんどい。スタッドレスタイヤの影響があるのかもしれないが、これまでに乗ったランクル各車やLXはここまで気にならなかったからどうも腑(ふ)に落ちない。
パワーは限られているが、割り切りがあるランクル“250”(こちらはダンパーも通常タイプ)のほうがまだましと感じたほどだ。家族からの苦情でせっかく手に入れた新型SUVやミニバンを手放さざるを得なかったという話も最近時々耳にする。着座位置の高いSUVなどは前後左右の揺れが後席の乗員にはとりわけ気になるものだ。フレーム構造の本格的な4WDなのだから、そのぐらいは当然と割り切れる人ならもちろん問題ないだろうが、プレミアムなオールラウンダーを期待するユーザーは要確認である。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
テスト車のデータ
レクサスGX550“オーバートレイル+”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5015×2000×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2490kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:353PS(260kW)/4800-5200rpm
最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
タイヤ:(前)265/65R18 116Q/(後)265/65R18 116Q(ブリヂストン・ブリザックWZ-1)
燃費:8.1km/リッター(WLTCモード)
価格:1195万円/テスト車=1256万7100円
オプション装備:ボディーカラー<ムーンデザート&ブラック>(7万7000円)/トーイングヒッチ<ウェイトディストリビューションタイプ、カバー付き>(7万7000円)/ドライブレコーダー<前後方>(4万2900円)/デジタルインナーミラー(4万4000円)/デジタルキー(3万3000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(24万0900円) ※以下、販売店オプション 盗難防止セット セットB<ホイールロックナット、ハンドルロック、カーロック>(10万2300円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:8563km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:532.3km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.6km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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