メルセデスAMG GT63 S Eパフォーマンス クーペ(4WD/9AT)/メルセデスAMG GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディション(4WD/9AT)
なごりのハモの味 2026.03.31 試乗記 メルセデスAMGの「GT63 S Eパフォーマンス クーペ」と「GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディション」は、同じAMG GTを名乗りながらも片や2ドア、こなた4ドアのクーペモデルだ。この両者には、どんな特徴や違いがあるのか。クローズドコースで確かめた。“はしり”を選ぶか“なごり”を選ぶか
THE MAGARIGAWA CLUBの瀟洒(しょうしゃ)なロビーにて、われわれwebCG取材班は難しい選択を迫られていた。計12台が用意されたAMGの各モデルから、2台の試乗車を選ぶ必要があったからだ。
たとえば、超がつくほどの高級すし店で2皿だけ頼んでいいと言われたら、何を選ぶだろうか。卑しいと言われようがビンボー性だとさげすまれようが、1皿は大トロを頼みたい。はたして、もう1皿は……、旬を迎えたばかりの、いわゆる“はしり”を選ぶというのも一興だろう。食通っぽい。いっぽうで、旬を終えて間もなく姿を消すであろう、“なごり”にも心ひかれる。
といった逡巡(しゅんじゅん)の末、大トロにあたるメルセデスAMG GT63 S Eパフォーマンス クーペと、なごりのメルセデスAMG GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディションを指名した。前者は4リッターのV8ツインターボエンジンとプラグインハイブリッドシステムを組み合わせ、最高出力816PSと最大トルク1420N・mを発生するモンスター。後者は「ファイナルエディション」とあるとおり、メルセデスAMG GT 4ドアクーペの掉尾(ちょうび)を飾るモデルだ。
試乗に先立って、同コースのインストラクターより走り方のレクチャーが行われる。幸運にも筆者はこのコースを何度か訪れているけれど、F1コース設計の大家、ヘルマン・ティルケが手がけただけあって、どんなクルマで走ってもチャレンジングだ。一周3.5kmのコースには2本のストレートと22のコーナーが配置され、高低差は189m、最大の登り勾配は20%、下り勾配は16%と、アップ&ダウンにも富んでいる。そうこうするうちにAMG GT 63 S Eパフォーマンス クーペのセットアップが完了。ドライバーズシートに乗り込む。
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加速もハンドリングも繊細な味つけ
かねがね道を記憶する能力が著しく低いことを自覚しているけれど、THE MAGARIGAWA CLUBのコースは何度走っても、自分が情けなくなるほど覚えられない。急勾配の登り坂で空しか見えなくなった次の瞬間に右コーナー、といった具合に、このコースはレイアウトをしっかり頭に入れておかないとうまく走れないので、始末が悪い。
以前、レース経験も豊富な同業の大先輩にこのことを相談したところ、「速く走ることよりも、MAGARIGAWAは初めて訪れる海外のワインディングロードを楽しむような気持ちでドライブしたほうがいい」というアドバイスを受けて、なるほどと納得した。しかも今回はインストラクターがドライブする先導車両に追従する方式なので、速く走ることよりもクルマとの対話に意識を集中する。
AMG GT63 S Eパフォーマンス クーペには「Comfort」「Slippery」「Sport」「Sport+」「Race」「Individual」のほかに、EV走行を行う「Electric」、バッテリー残量をキープする「Hold」と多彩なドライブモードが用意されている。3周という制限がある今回は、「Sport+」に固定した。
クルマのキャラクターからして、試乗のハイライトは2本のストレートかと思いきや、そうではなかった。ストレートのトップスピードが150km/hに制限されていたという理由もあるけれど、コース後半のタイトなコーナーが連続するセクションで、軽やかに身を翻すハンドリングが心地よい。加えて、最高出力204PS、最大トルク320N・mと、2リッター直4ガソリンターボエンジン並みのスペックを誇るモーターが適宜プッシュしてくれるので、低速コーナーからの脱出も小気味よい。
ガーンと全開にしていたら、めっちゃ速いという感想が残ったかもしれないけれど、初めて訪れた海外のワインディングロードを味わうように走ると、このクルマが単なるモンスターというだけでなく、加速もハンドリングも繊細に味つけされていることがよくわかった。
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電気とガソリンがお互いを高めている
続いて、AMG GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディションに乗り込む。率直に言って、最初に2ドアクーペに乗ってしまうと、4ドアクーペでは物足りなくなると予想していた。というのも、メルセデスAMG GTというモデル名は共通だから、2ドアも4ドアもドアの枚数が違うだけで中身は一緒だろうと思っていたからだ。
大間違いである。アルミの基本骨格やエンジンを前輪軸より後ろに配置するフロントミドシップのレイアウトなど、2ドアが根っからのスポーツカーとして開発されているいっぽうで、4ドアはメルセデス・ベンツの後輪駆動車をベースに高性能を与えたモデルなのだ。
だから、THE MAGARIGAWA CLUBのようなクローズドコースで乗ると、圧倒的に2ドアのほうが楽しいはず……、と考えていたらそれほど単純な話ではなかった。
まず、走りだした瞬間に、3リッター直6の「M256」エンジンの回転フィールに心奪われる。適度な重みのあるものが滑らかに回転している感覚に、うっとりとしてしまう。最初に乗ったV8よりもキメの細かいフィーリングで、「絹ごし」「こしあん」「シルキー」といった言葉が脳内をぐるぐる巡る。
さらにアクセルペダルを踏み込むと、絹のような手ざわりを保ったまま軽やかに回転が上昇。耳には木管楽器のようにまろやかでありながら豊かな排気音が届くようになる。ヘアピンからの立ち上がりなどで鋭いピックアップを体感するのは、こちらもまたISGがエンジンを後押ししているからで、電気とガソリンがりくりゅうペアのようにお互いを高めている。
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AMGは入念につくり込まれている
コーナリングでも、AMG GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディションは好ましい一面を見せた。先導車両に追従する形式で、体感で6〜7割程度の“攻め具合”であることはお伝えしておく必要があるけれど、そうした領域だとAMG GT63 S Eパフォーマンス クーペと同等か、あるいはそれ以上に鋭いターンインを披露したのだ。
理由はいくつか考えられるけれど、ひとつには大きなV8を積む2ドアに対して、4ドアが直6で鼻先が軽いことが挙げられる。また、4MATICの4ドアでは、くるりと曲がるために4輪それぞれをつまんだり回したりするトルクベクタリングが効果的に作動している。さらに、筆者の運転スキルが本格スポーツモデルたるAMG GT63 S Eパフォーマンス クーペの性能を存分に発揮させられなかったという疑いも濃厚だ。
とはいえ、スペック的に劣るはずのAMG GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディションのほうが楽しいと感じたのには驚いた。もちろんタイムを計ればV8ツインターボ+プラグインハイブリッドの2ドアに軍配が上がるはずだけれど、クルマ趣味はスペックだけではないということを、あらためて思い知らされた。同時にAMGという冠を授かるモデルは、価格や車格にかかわらず、入念につくり込まれていることを肌で感じる。
大トロよりなごりのハモがうまいなんて書くと、まるで海原雄山のようであるけれど、どちらかを選べと言われたならAMG GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディションである。引退間際に乗ることができたのは幸運だった。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
メルセデスAMG GT63 S Eパフォーマンス クーペ
ディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1985×1355mm
ホイールベース:2700mm
車重:2170kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:612PS(450kW)/5750-6500rpm
エンジン最大トルク:850N・m(86.7kgf・m)/2500-4500rpm
モーター最高出力:203.9PS(150kW)/4500-8500rpm
モーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/500-4500rpm
タイヤ:(前)295/30ZR21 102Y XL/(後)HL305/30ZR21 107Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツS 5)
燃費:8.3km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:13km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:13km(WLTCモード)
交流電力量消費率:385Wh/km(WLTCモード)
価格:3085万円/テスト車=3468万9000円
オプション装備:ボディーカラー<MANUFAKTURスペクトラルグルーマグノ[マット]>(100万円)/パノラミックルーフ(14万7000円)/可倒式リアシート(26万2000円)/21インチAMGアルミホイール<鍛造>(3万5000円)/Burmesterハイエンド3Dサラウンドサウンドシステム(60万5000円)/AMGカーボンパッケージ(150万円)/内装<ナッパレザー/MICROCUT>(29万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
メルセデスAMG GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5050×1995×1440mm
ホイールベース:2950mm
車重:2100kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ+スーパーチャージャー
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:435PS(320kW)/6100rpm
エンジン最大トルク:520N・m(53.0kgf・m)/1800-5800rpm
モーター最高出力:22PS(16kW)/900rpm
モーター最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/500rpm
タイヤ:(前)275/35ZR21 103Y XL/(後)315/30ZR21 105Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:10.0km/リッター(WLTCモード)
価格:2550万円/テスト車=2550万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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