第335回:水平尾翼が効いてるのかな
2026.05.11 カーマニア人間国宝への道EV系以外は全部このパワートレインに?
担当サクライ君からメールが届いた。
「次回の首都高試乗ですが、『シトロエンC5エアクロス』がご用意できます。いつもの1.2リッター直3ターボの48Vマイルドハイブリッドですが、乗り心地はきっとシトロエンなはずです」
えー、またステランティスの1.2リッター直3マイルドハイブリッド? と思ったが、他に適当なネタもないし、元シトロエンオーナーでありシトロエンファンとして、乗っておくべきかもしれない。そう思い直して「乗る乗る~」と返信したが、釈然としない思いが残った。
試乗当日、私はサクライ君に質問した。
オレ:首都高での試乗車って、特に車種を選んではいないんだよね。
サクライ:そうです。たまたま編集部にあって、夜空いてる試乗車をお持ちしてます。
オレ:それにしても、なんでこんなにステランティスばっかりなの?
サクライ:たまたまそうなっちゃいました。すみません。
いや謝ってもらうことじゃないんだけど、もっといろんなクルマに乗りたいとは思ってる。内燃エンジン系の開発が停滞しまくってる欧州車より、国内メーカーのニューモデルに乗りたい。なのに回ってくるのはステランティスばっかり……。
オレ:ステランティスって、EV系以外は全部このパワートレインにするつもりかな。
サクライ:そうなんでしょうね。
オレ:全ブランドの上から下まで全部コレ。徹底したコストダウン策だね!
サクライ:ですね。
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水平尾翼っぽいテールランプ
C5エアクロスの車重は1630kg。1.2リッターで大丈夫かと思ったが、ずうたいに似合わず軽快に走りだした。モーターのトルクのおかげで、東京・杉並の住宅街での加減速感は良好だ。
オレ:あれ、意外と曲がりもシャープだね。
サクライ:そうなんですよ。
オレ:そのかわり乗り心地はそれほどフワッとしてないな。
サクライ:かもしれません。
外はかなりの雨。これじゃ辰巳PAで写真を撮るのはムリだろうということで、代々木PAの屋根のあるスペースにクルマを止め、照明の下でデザインを眺めた。
顔は「C3」同様、個性薄めのフォルクスワーゲン風だ。フォルムにもこれといったものは感じない。最大の特徴は、テールランプの一部が水平尾翼のように飛び出していることか。
男は本能的にウイングが好きである。羽が生えてると、翼を授けられた気分になる。しかも左右にチョコンと突き出した水平尾翼。こういう形状の羽は初めて見た。実にユニークだ。
とはいうものの、シトロエンのデザインは本来、こういうギミックではなく、難解な芸術性が持ち味ではないだろうか。
オレ:シトロエンが小細工でごまかすなんて、嘆かわしいな。
サクライ:そうですか? 悪くないと思いますけど。
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アブラギッシュな要素は飽き飽き
オレ:いや、シトロエンファンが求めるのはこういうのじゃない。もっと大人のデザインだよ。
サクライ:たとえばどのモデルですか。
オレ:古くは元祖「DS」や「アミ6」。最近では「C6」がベストだな。
サクライ:C6なんてどこがいいんですか。カッコ悪いじゃないですか。僕、オーバーハングが長いクルマって大っ嫌いなんですよ。
オレ:なにぃ!? カーマニアのくせにC6を否定するの!?
サクライ: はい。カッコ悪いです。
オレ:し、信じられん!
激しい怒りがこみ上げてきた。崇拝するC6のデザインを否定されて黙ってられるか! 私は激しく反論した。
オレ:逆だよ! オーバーハングが短くてワイドトレッドでガバッとオーバーフェンダーで大径タイヤ履いてボディーツライチのクルマなんて、もう飽き飽きなんだよ! そんなのカッコよくなるに決まってんじゃん!
サクライ:ま、そうですけど。
オレ:そういうアブラギッシュな要素ゼロでカッコいいクルマをさ、いま俺は求めてるんだ! 本来シトロエンは、そういう内股で上質なデザインを提案すべきブランドじゃん! アブラギッシュがいいなら新型「ヴァンキッシュ」でも乗ってろや!
サクライ:新型ヴァンキッシュ、最高ですね。
俺はサクライ君と絶交したい気分になった。同時に、久しぶりに熱くなっている自分にハッとした。老いてもカーマニア魂は死なず! しみじみ。
追伸:C5エアクロス、首都高でも走りは悪くなかったです。水平尾翼が効いてるのかな。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一/車両協力=ステランティス ジャパン)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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