トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)
プラスαの優等生 2026.06.20 試乗記 トヨタからワゴンのようなボディーの新型電気自動車(BEV)「bZ4Xツーリング」が登場。いわば既存の「bZ4X」のロングボディー版だが、試乗した4WDモデルはよりパワフルになっているなど、長さ以外も結構違う。350km余りをドライブした印象を報告する。BEV普及期を迎えたニッポン
2026年3月の販売台数は3300台超と、驚くほどの伸びをみせたBEVといえばトヨタbZ4Xだ。まあ決算月だし……となめてかかっていたが、続く4、5月も2000台ペースで実績を積んでいる。完全に勢いを見くびっていたわけだが、中の人に話を聞くと、今はきちんと吟味を重ねた個人のお客さんが主だったところだという。
もちろん補助金バブルの一面もあるにせよ、個人ユーザーが自分の使い方に合わないクルマに手を出すことは考えにくいわけで、そういう意味では航続距離700kmオーバーを達成した先の大幅アップデートの影響は大きかったのだろう。ともあれ、日本もいよいよ本気でBEVが普及モードに入ってきたことは間違いない。
そこに援護射撃を加えるのがbZ4Xツーリングの主たる役割ということになるのだろうか。ツーリングの名が示すのは、ロングトリップにも対応する積載力などの多用途性が加わったということだ。ちなみに米国では「bZウッドランド」としてすでに販売が始まっている。
拡大するe-TNGA商品群
と、察しのいい方ならお気づきだろう。bZ4Xツーリングは、いってみれば「スバル・トレイルシーカー」の兄弟的存在だ。TNGAのGA-KプラットフォームをBEV向けに最適化したe-TNGAを軸に、トヨタは主に欧州向けの「C-HR+」とbZ4X、このbZ4Xツーリングと、さらに大きな米国向けの3列シートSUVを「ハイランダー」として展開。スバルは同様の位置づけで「アンチャーテッド」と「ソルテラ」、トレイルシーカーそして「ゲッタウェイ」を展開している。
先出しのbZ4X/ソルテラではさまざまな方角から商品力不足をツッコまれ、特にBEV推しの方面からはマルチパスウェイが口ほどにもないと散々な言われようだったわけだが、ここで腐らず見放さず、eアクスルだけでも40%の消費電力節減を果たすなど、地道に既存アーキテクチャーの改善を積み重ねたのが功を奏した。それは先述の売れっぷりをみても伝わってくる。性能がユーザーのデマンドと合致していなければ、ここまできちんと売れ続けることは難しいはずだ。
一方で、これは既定路線だっただろう、e-TNGAの多機能化と多面展開を進めることでBEV単独での収益体質もじわじわと改善されつつある。ちなみにソルテラはbZ4Xと同じトヨタの元町工場で生産されるが、このbZ4Xツーリングはスバルの矢島工場での生産だ。お互いのアセットをうまく差配するための作業も含めて、両社の担当エンジニアたちは豊田市と太田市を行き来し、その移動機会をライバル車のチェックなどにも費やしているという。
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速さに価値のない時代に
bZ4Xツーリングのラインナップは「Z」のみ、つまり一番いいやつ・全部付きのモノグレード構成となる。駆動方式は1モーターFWDと2モーター4WDが選択でき、その価格差は65万円だ。ちなみにbZ4Xの同名グレードと比較するとFWDで25万円、4WDで40万円の開きがある。4WDのほうが価格差が大きい理由は、bZ4Xツーリングは積載による高負荷を想定してより大出力のリアモーターを採用しているからだろう。bZ4Xの4WDも動力性能は当初より随分盛られたが、bZ4Xツーリングはそれをあっさり上回り、例えば0-100km/h加速は4.6秒と、同門で比較すれば5リッターV8を搭載する「LC500」や「IS500」に匹敵する瞬発力を誇る。
今回の試乗車はその4WDの側だったが、一瞬で周囲を後方に置き去りにする、それはもはや普段使いには有り余るほどの速さだ。リアルワールドでは最高速の優位性に意味はなくなりつつある。それは二次曲線的に電費が荒れるBEVであればなおさらのことだが、同時にモーターの特性上、常速域での速さによる商品力の差別化や対価への換算も内燃機より難しくなっている。この先、BEVは速さではないクルマの価値を、何をもって示していくのかは大きな課題だろう。
運転席環境や居住性は基本的にbZ4Xと同じで、bZ4Xツーリングのほうが荷室部はひたすら広い。さすがスバルが「アウトバック」のBEV版を想定してしつらえたハコだけのことはある。キャンプやスキーや各種アウトドアスポーツや……といった趣味とは無縁の自分に積むものは全くないが、この大きな荷室のおかげで外見がワークホースのように牧歌的に見える、その理由だけでこちらを選びたくなる。それだけに、もう少しかわいげのあるソリッド系のボディーカラーも加えてほしいところだが、生産工場がスバルゆえ、選択肢に限りがあるのかもしれない。
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積極的に出かけたくなる
相変わらずひとつ気になるのはコックピットの視覚的インターフェイスだ。メーターの液晶パネルはサイズもともあれ位置も微妙で、視認できるドラポジをとるとステアリングの上縁に画角がかぶってしまうため、チルト角を下げ気味に定めることになる。スバルがソルテラのマイナーチェンジ以降、このアーキテクチャーに限って異型のステアリングを採用している理由はまさにそこではないだろうか。プジョーの「i-Cockpit」もしかりだが、ドラポジ側がクルマに合わせなくてはならないようなレイアウトは一考すべきだと思う。
試乗車はオプション扱いとなる20インチタイヤを履いていたが、乗り心地はbZ4X以上にこなれた感があった。動力性能的に4WDと標準の18インチタイヤとの組み合わせはちょっと心もとないのではと想像もするが、BEVならではの緻密な駆動制御によって回生減速時の姿勢や旋回時のライントレース性なども洗練されたものになっているから、ここで帳尻が合わせられているのだろう。ちなみにかつてトレイルシーカーのプロトタイプで雪上路を経験した際は、走破性はもとよりパワーも持て余さない操縦安定性の高さに驚かされた。となると、航続距離的にも有利な18インチは、乗り心地も含めてツアラーとしての適性がより高い組み合わせとなっているのかもしれない。
BEVとして全方位にソツなくまとまり誰にでもオススメできる優等生となったbZ4X。でも「ならでは」のものがないから、かえって財布を開くには至らない。bZ4Xツーリングはそんな旅行好きやアウトドア好きの方々の背中を押すにうってつけの一台といえる。こういう方々はクルマと過ごす時間が長い、要はドライブ好きだろう……と察すれば、bZ4Xツーリングには「ならでは」のドライビングプレジャーがあることも買いの動機となるはずだ。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
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テスト車のデータ
トヨタbZ4XツーリングZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1860×1675mm
ホイールベース:2850mm
車重:2030kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:227PS(167kW)
フロントモーター最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
リアモーター最高出力:227PS(167kW)
リアモーター最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
システム最高出力:380PS(280kW)
タイヤ:(前)235/50R20 104V XL/(後)235/50R20 104V XL(ダンロップSPスポーツマックス060)
一充電走行距離:627km(WLTCモード)
交流電力量消費率:134Wh/km(WLTCモード)
価格:640万円/テスト車=662万3080円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルブラックシリカ×ブリリアントブロンズメタリック>(5万5000円)/225/50R20タイヤ&20×7 1/2Jアルミホイール<ブラック塗装、マットブラック塗装エアロホイールカバー、センターオーナメント付き>(8万2500円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(4万1800円)/前後2カメラドライブレコーダー<TZ-DR212>(4万3780円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1126km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:352.2km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.5km/kWh(車載電費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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