シボレー・コルベットZ06コンバーチブル3LZ(MR/8AT)
気分はルマンレーサー 2026.06.18 試乗記 ルマンウイナーのパフォーマンスを、爽快なオープンエアで満喫! レース直系のV8エンジンと、圧倒的なシャシー性能が自慢の「シボレー・コルベットZ06コンバーチブル」に試乗。広く門戸が開かれた、アメリカンスーパースポーツの魅力の一端に触れた。ルマンを制した珠玉のレーシングユニット
トヨタの4年ぶりの総合優勝でわいた2026年のルマン24時間レースだが、市販車ベースで争われる“GT”のクラスでは、シボレー・コルベットが勝った。まずは、おめでとうございます。
ミドシップとなった8代目=C8コルベットのルマン参戦は2021年からで、市販車と同時並行で開発された「コルベットC8.R」がLM-GTEクラスを走った。ファンならご承知のように、そのC8.Rのために開発されたエンジンが、標準の6.2リッターV8 OHVの「LT2」とはまったく別物の、5.5リッターV8 DOHCの「LT6R」である。
コルベットといえば吸排気バルブをプッシュロッドで駆動するOHVの伝統を今も守り続けているが、その70年以上にわたる歴史のなかで、LT6は2例目のDOHCエンジンである。コルベットで最初のDOHCは1989年に登場したC4の「ZR-1」に搭載された「LT5」で、当時ゼネラルモーターズ傘下にあった英ロータスが設計した。
閑話休題。そんなレーシングコルベット用の謹製ユニットを引き継いだ市販カタログモデルが、Z06というわけだ。Z06のエンジンは“R”の文字が省かれた「LT6」となるが、ボア×ストローク=
104.25×80mmという超ショートストローク型のシリンダーレシオや高回転化に有利なフラットプレーンのクランクシャフトなどの基本設計は、LT6Rと共通である。さらに、ドライサンプの潤滑方式、超ミニスカート型アルミ鍛造ピストン、チタン鍛造コンロッド、チタン吸気バルブにナトリウム封入排気バルブ、12.5の圧縮比……と、並べられるスペックも、まさにレーシングユニット直系といっていい。
コルベットC8.Rは、参戦3年目にしてGTEクラス最終年となった2023年のルマンで、見事に初クラス優勝を達成。GT3規定に移行した2024年からはマシンが「コルベットZ06 GT3.R」にスイッチしており、2026年の優勝はZ06 GT3.Rとしては初のルマン制覇となる。
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刷新されたインターフェイスとインフォテインメント
そんなモータースポーツ直系コルベットであるZ06は、2023年夏の国内導入当初はクーペのみだったが、本国では2024年モデルからコンバーチブルも追加されていた。で、そのZ06の“コンバチ”が2025年夏から国内にも導入された(参照)。というわけで今回の試乗車は、『webCG』ではこれが初となるZ06コンバーチブルである。
コンバチといっても、頭上が片道約16秒で開閉する電動格納ハードトップになる以外、既存のZ06クーペと基本的に同じクルマなのは、標準のコルベットと変わりない。ドライバー背後に搭載されるLT6の性能はもちろん、専用の拡幅ボディー、冷却性能と空力性能を高める専用バンパーやスポイラー、専用タイヤとシャシーなども、Z06クーペに準じる。
さらに2026年1月に発表された最新仕様のZ06(参照)では、もうひとつ大きなトピックがある。それはインテリアデザインが新しくなったことだ。インテリア刷新は日本ではZ06が先行発表されたが、実際には2026年モデルのコルベット全体に共通する改良である。このような規模で改良・変更の手が入るのは、2019年≒2020年モデルで本国デビューしたC8コルベットとしては初といっていい。
その新インテリアの最大の変更点は、コックピットまわりの液晶ディスプレイが“運転席12インチ+センター8インチ”から、“運転席14インチ+センター12.7インチ+サブ6.6インチ”という、大画面化+3枚構成化されたことだ。さらに、インフォテインメントシステムもGoogle化されたほか、専用アプリ「myChevroletアプリ」をスマートフォンにダウンロードすることで、車両状態の確認や空調の操作などが、遠隔で可能となるという。
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コンバーチブル唯一にして最大のデメリット
ドライバーズシートにおさまると、上下がチョップされたステアリングホイールやその背後のカーボンシフトパドル、シフトセレクター、そしてシート形状などは不変のようで、ドライビング環境は従来のままである。ただ、シフトセレクターそのものは変わらずとも、その周辺を中心にセンターコンソールのデザインや配置は変わっている。
たとえば、助手席側の壁の“尾根”に1列で配置されていた空調スイッチは、センターパネルの一般的なタイプに変わった。今のオートエアコンは頻繁に操作することもないので、これまでのデザインでも不満はなかったが、新しいほうが操作に迷いにくいのは事実である。また、以前はダイヤル式だったドライブモードセレクターも、小さなトグルスイッチに変わっていて、空いたスペースにはスマホ用ワイヤレス充電器が用意された。
従来と変わらないスターターボタンで目覚めさせるLT6は、同じ自然吸気V8ながら、OHVのLT2とはまるで別の顔をもつ。LT2が鋭いアクセルレスポンスながらも、ある種のタメや重みをあわせもつのに対して、LT6は右足のわずかな力加減にも、まさに食いつき、突き刺さるように反応する。その気になれば8600rpmの高みまで一気に吹け上がるが、高回転自然吸気ユニットらしく、回転上昇とともにエンジンの勢いと音色がどんどん変化していくのが、ちびりそうなくらい快感だ。
このようにLT2とはまた別のカリスマ性をたたえる“ご神体”の姿を、通常はガラス越しに、バックドアを開けば直で拝むことができるクーペに対して、そのLT6が通常は完全にお隠れになっているのが、エンジンの真上にトップが格納されるコンバチ最大のデメリットといっていい。熟練職人が1基ずつ手組みするLT6には、クーペでは担当者のネームプレートが貼られるが、このコンバチはどうか……も、今回は確認できなかった。
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見どころはエンジンだけにあらず
6000rpmくらいから勢いがさらに増すLT6は、7000rpmを超えたあたりからクライマックスめいていく。そして、8000rpm前後のトップエンド領域では、たとえばフェラーリのように絞り出す類いのクリアなハイトーンとは異なり、音程こそ高いが“咆哮(ほうこう)”とでもいうべき迫力である。
このLT6エンジンがZ06最大の武器であることは間違いないが、それに劣らず魅力的なのがシャシーだ。簡単にいうと、646PS、623N・mという最高出力、最大トルクを、RWDで完全に支配下に置いている。よほど舗装が荒れているか、ヘビーウエットでもなければ、不意にブレークする気配すらない。考えてみれば、その最大トルクは絶対的には強大だが、800N・mだの900N・mだのが常態化している最新ターボよりは控えめだ。ルマンも制した世界最高水準のシャシーのフィジカルには、まだまだ余裕があるということだ。
標準コルベットと比較すると、サスペンションをもっともソフトな「ツアーモード」に設定しても、フットワークはそれなりに引き締まっているが、同時におらかな上下動も見事に消えうせているので、Z06のほうが素直に快適と感じる向きも少なくないはずである。スポーツカーとして無駄な動きがなく、すこぶるシャープでありながら、その肌ざわりにとがった部分も皆無……という味わいには、ただただ感心するしかない。
またZ06のクーペとコンバチの車重差は40kg。動力性能も、厳密にはまったく同じではないはずだが、2.6秒という0-60mph(約96km/h)のカタログ公表値に影響を与えるほどの差でもない。また、コルベットはクーペといってもルーフが脱着式のタルガトップなので、それを外せばクーペでもコンバチと大差ない開放感を味わえるいっぽうで、逆にコンバチでも車体剛性面に決定的な不利はないように思える。
快感のかたまりであるLT6をアマチュアドライバーにも安心・安全に味わわせて、ルマンに思いをはせさせてくれるZ06も、コルベットの名に恥じない民主的スーパーカーだ。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=ゼネラルモーターズ・ジャパン)
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テスト車のデータ
シボレー・コルベットZ06コンバーチブル3LZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×2025×1225mm
ホイールベース:2725mm
車重:1740kg
駆動方式:MR
エンジン:5.5リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:646PS(475kW)/8550rpm
最大トルク:623N・m(63.5kgf・m)/6300rpm
タイヤ:(前)275/30ZR20 97Y XL/(後)345/25ZR21 104Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S ZP)
燃費:--km/リッター
価格:3020万円/テスト車=3027万7000円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット(4万6200円)/ETC2.0車載器(3万0800円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1256km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(5)/山岳路(2)
テスト距離:422.9km
使用燃料:87.19リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:4.9km/リッター(満タン法)/5.3km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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