スバル・インプレッサXV(FF/4AT)【試乗記】
失ったものは何もない 2010.08.06 試乗記 スバル・インプレッサXV(FF/4AT)……210万円
インプレッサシリーズの派生モデルとして2010年6月に追加された「インプレッサXV」。SUV風の外観を特徴とする同モデルは、乗るとどうなのか? 売れセンの1.5リッター・FFモデルを試した。
いわゆるオプティカルチューン
前後フェンダーをはじめとする、クルマの周囲をぐるりと取り囲むように取り付けられたあえてブラックのままの樹脂製パーツや、存在を主張するラダータイプのルーフレールなどでコーディネートされたエクステリアを見れば、「インプレッサXV」のコンセプト、おおむね理解できるだろう。かつて「レガシィツーリングワゴン」にSUV的なテイストを付け加えた「レガシィグランドワゴン」を世に問うたスバルは、インプレッサでまた同じことをしようとしているわけである。名前の「XV」も、“X”はCrossover、“V”はVehicleの意というから、まさにそのままだ。
とは言いつつ、車高アップやオールシーズンタイヤの採用、さらには当然の前提としての4WDなどによって走破性に関してもこだわりを見せたレガシィグランドワゴンから現在のアウトバックに至る系譜とは違って、インプレッサXVのベース車からの変更点は主に見た目の面に終始している。最低地上高は変わっておらず、タイヤもいわゆるサマータイヤ。4WDだけでなくFFも用意されている。要するに“なんちゃってSUV”的な、もっと軽いノリのモデルなのだ。今回の試乗車も、まさにそれである。
外観は案外よくまとまっている。すっぴんの5ドアは正直ちょっと線が細い感じもするが、「XV」は全体に力強さが増していて貧相に思わせない。効果的なのはサイドまで大きく回り込んだリアスポイラー。これがDピラーをガッシリ骨太に見せ、だからこそ下半身のボリュームアップもまた映えているのだと思う。その分、タイヤが小さく見えるのはいかんともしがたいところではあるが。
速くはないが気持ちよく曲がる
インテリアはシートやアームレスト、センターコンソールなどにブラウンがあしらわれ、またホワイトメーターを採用することで、雰囲気をちょっと変えることができている。全体のクオリティ感に違いはないが、まあ良いかと思わせるものになっているのは確か。要は見せ方なのだ。
動力性能には違いはない。水平対向1.5リッターユニットは低回転域で力感に乏しく、ATが4速でギア比が離れ気味なことも相まって、実用域ではしばしばもどかしい思いに駆られる。だからといってむやみに踏み込むとすぐにキックダウンしてしまうこともあり、ドライバビリティは良いとは言い難い。
活気づくのは3500rpmを超えた辺りから。ここから先の吹け上がりは、さすが水平対向らしく滑らかで、しかも7000rpm手前のレブリミットに至るまで、サウンドの変化も含めて爽快(そうかい)感をも持ち合わせている。絶対的には速くはないが、回して走るのも悪くないかと思わせるところが確かにある。
それ以上にマニアックな喜びが隠れているのがフットワークだ。タイヤのグリップ力は高くなく、ちょっとペースを上げると交差点でも盛大にスキール音が鳴るほどだが、シャシーのしつけ自体は良い案配で、ステアリングを切り込むと適度なロールとともにノーズがすっとインに切れ込み、ほとんどニュートラルな姿勢を保ったままコーナーを抜けることができる。
見た目で選ぶのが正解
元々の素性の良さに加えて、「XV」専用のリアスタビライザーの装着とダンパー減衰力の変更が効果を発揮しているのだろう。一方、乗り心地はまったく悪化を感じさせない。4名乗車でも不満を覚えることはなかった。
そんなわけで、このインプレッサXV。そのクロスオーバー性やら何やらについては、あまりまじめに評価しても意味がないというか、方向性が違うだけで考え方はフルエアロ仕様と同じようなものであり、つまり見た目が気に入ったらどうぞ、という存在だ。「XV」となったことで失ったものはほとんどないし、あったとしてもそれは代わりに得た、たとえばその見た目などと十分相殺できるものだろう。
もっと真剣にSUV的要素を…などと思われる方も居るかもしれないが、クロスオーバーとはまさに何でもアリなのだ。素の5ドアに約30万円足すだけで、ちょっと違ったテイストを楽しめるこういうクルマもいいのでは? どのみち本格的なオフロード性能が必要になる場面なんて、少なくともここ日本ではそれほど遭遇することはないのだし。
(文=島下泰久/写真=小林俊樹)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】 2026.7.18 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。





























