第130回:新型三菱パジェロ(前編) ―泥や雪より都会が似合う!? 高級&上質に進化した“関越キング”に思う―
2026.09.30 カーデザイン曼荼羅 拡大 |
いよいよ登場した新型「三菱パジェロ」。復活を遂げたクロスカントリーSUVの雄だが、そのデザインは海や山やスキー場より、むしろ都会が似合うものに仕上がっていた!? 三菱が世に問う渾身の力作、その造形をカーデザインの識者とともに考察した。
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土臭さより上質感で勝負!
webCGほった(以下、ほった):今回は新型三菱パジェロについて語っていこうと思います。三菱としては久々の、記事を出せばなんぼでも読まれるネタですからね。稼がせていただきますよ~(笑)。
渕野健太郎(以下、渕野):自分はほったさんと一緒に、三菱の撮影会で実車を見たんですよ(参照)。そのときは会場が結構暗くて、しかもクルマが白だったもので、自然光の環境とはちょっと違う見え方だったかもしれません。ただ第一印象としては、すごく上質さを感じました。
ほった:ですね。三菱は「クロスカントリーSUV」って言ってますけど、そのジャンルの国産車としては、かなり乗用車寄りのイメージ。
渕野:ほかのラダーフレーム車と見比べても、一番上質な感じがしましたよ。むしろ高級SUVみたいな雰囲気がありました。
清水草一(以下、清水):トヨタの「ランドクルーザー“250”」(参照:その1、その2)と比べて、どっちが上質ですか?
渕野:こっち(パジェロ)ですね。レクサス版である「GX」と比べてもです。GXは“250”と同様、ラギッドな面もかなりドライな感じで演出していますが、パジェロはもっとボディーの面にアプローチが入っていて、すごく高級感を出そうとしている。
清水:そのへん、微妙な違和感もありますけど。
渕野:確かに、「これがパジェロなの?」と言われると皆さんいろいろ思うところはあるでしょう。でも考えてみると、パジェロって初代から、ラダーフレーム車のなかでは一番乗用車らしいポジションだったわけですよね。それを考えると、現代のパジェロはこれでもいいのかなと。
ほった:クルマの中身にしても、パジェロは3、4代目でモノコックを使っていましたしね。フレームをモノコックに溶接してある構造で、「ビルトインラダーフレーム」ってやつです。そういう点でも、国産の本格クロカンのなかでは乗用車らしい洗練さを重視したクルマだったと思います。「ランドクルーザー プラド」あたりと並んで。
渕野:なるほど。
強烈な塊感と気になる浮遊感
清水:というか、パジェロって前はモノコックだったのに、新型はラダーフレームなんだね。当時の世の中は、より快適で乗用車的なクロカン4WDを求めていたけど、今は逆に、より本格派が求められている。実際にはオフロードなんか走らなくても。そういうことなのかな。
ほった:いや、新型はピックアップトラックの「トライトン」がベースなんでラダーフレームになったってだけでしょう。それに、ラダーフレームとモノコック、どっちがクロカンとして商品力が高いのかは分かんないですよ。たとえば「ディフェンダー」はモノコックじゃないですか。でも、本格派として完全に認知されてる。
清水:そのへんはホント、イメージだよね。でも新型パジェロの場合は、「ラダーフレームに戻った」って言ったほうが、みんな喜ぶでしょ。
ほった:それは思いますね(笑)。
渕野:デザインの面でも、サイドシルやフロントバンパー、リアバンパーの下部を、かなり内側に絞り込んでいますよね。これはやっぱり、ラダーフレームのクルマだからできるデザインなんじゃないかと思います。それによって、すごく強い塊感が出ている。
ほった:モノコック車と違って、ボディーの下に高さがありますからね。サイドシルに剛性を保つ骨格を入れる必要もないし。
渕野:それとサイドから見ると、ボンネットのシルエットから窓枠のラインまで、フェンダーを補完するコブのような流れがあります。これも、新型パジェロの基本的なデザインの狙いかなと思います。(写真参照)
一方でちょっと思ったのは、「軸が高すぎるのかな」ということです。多分、ヘッドランプぐらいの高さに軸があると思うんですけど。
基本的にこのクルマって、すごく背が高いですよね。そこに、モノコックのSUVを高く、大きく見せようとして使うデザイン手法を、そのまま持ってきたような部分がある。だから余計に背が高く感じるんです。タイヤよりもすごく高いところに、ボディーがあるようなイメージです。
清水:確かに。ちょっとお神輿っぽいかも。
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日本車よりむしろヨーロッパ車に近い
渕野:それとこのクルマ、ランクル“250”と比べると、ボンネットの高さはそこまで変わらないけど、サイドガラスの下端のラインが高いんですよ。つまり、ロワボディーの厚さがめちゃくちゃある。それもあって、実車を見るとすごく背高に感じるんです。全高が1900mm以上あるうえに、ボディーの厚みもすごいので、「これはデカイ!」って印象でした。
清水:ランクル“250”のほうは、あえてサイドウィンドウの下端を“下げている”ようなデザインですよね。(写真参照)
渕野:それに対して、パジェロはとにかく、キャビンよりもその下の部分、ロワボディーをしっかり見せている。
清水:そのせいか、パジェロのほうが都会派っぽく見えるんですけど。
渕野:確実にそうですね。ランクル“250”はラギッドなデザインで、アウトドアで使い倒すようなイメージです。どちらかというと、若い人をターゲットにしているんでしょう。対するパジェロは狙いが違います。サイズはランクル“250”に近いけど、コンセプトは同じランクルでも“300”に近い。“250”よりもう少し年齢層が高めで、高級感を求める層がターゲットなのかな。
ほった:確かに、ランクル“300”の普及版、みたいな感じしますね。
渕野:パジェロをランクル“300”と比較すると、ランクルのほうがフロントとリアが重くて、サイドシルエットも結構とりとめのないデザインだなと思ったりします。対するパジェロはすごく正統派で、日本車というよりもヨーロッパ車のような塊感がある。ランドローバー系のような。
ほった:それ、褒めすぎじゃないですか?(笑)。
清水:いや実際、ランドローバーの、それも「レンジローバー」系の雰囲気があるよね。部分的に。
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“高級なパジェロ”をファンはどう受け止めるか
渕野:細かいところを見ていくと、フロントとリアのデザインは、バンパーコーナーをしっかり見せるために角にランプを配置して、これによってワイド感をしっかり強調しています。ただ、ディテールがやや繊細な感じもする。よりラギッドなバージョンも見てみたいところですね。
ほった:繊細というか……ちょっとせわしないかも(笑)。もうちょいシンプルでもいい気はしますね。
清水:パジェロのイメージからすると、ちょっと都会派過ぎるよ。
渕野:そこは世間が三菱に求める水準より、明らかに高級に仕上げていますからね。でも、それはそれで狙いなんでしょう。実際、価格も高いみたいですし。
ほった:正式発表前ですけど、報道だと600万~800万円って情報が出ていますね。
渕野:実際、それぐらいの気合でつくったデザインですよ。基本的にはすごくよくできている。ランクル“250”とは、ターゲットもデザインの狙いも違うので比較は難しいのですが、ランクル“300”よりは、明らかにデザインはいいです。セオリーどおりにつくっています。
ほった:ランクル“300”って、あんまりバランスはよくないですからね。
清水:サイドから見るとお尻が高すぎるよね。その点パジェロは、全体のバランスがいい。
渕野:ただ最初に言ったように、パジェロは軸が高いので、ちょっと浮遊感みたいなものがある。ふわっと浮いているような。初代パジェロを見ると、デザインの軸はボディーのピーク位置、ホイールアーチの上端よりも下ぐらいのところにきていたんですが、新型はそれがずいぶん高くなった。だから、実際に街なかを走っているところを見てみたいんです。これが街なかでどう見えるのか。
清水:それで余計に高級SUVっぽく見えるのかもしれませんよ。世俗から浮いてるみたいな。
渕野:確かにすごく高級に見えますよね。
ほった:パジェロがこんなに高級車になってどうするよ。冬の関越走れないじゃん! という点はともかくとして(笑)。
(後編へ続く)
(語り:渕野健太郎、清水草一、webCG堀田剛資/まとめ=清水草一/写真=JLR、トヨタ自動車、三菱自動車、webCG/編集=堀田剛資)
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渕野 健太郎
プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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