フォルクスワーゲン・シャラン1.4TSIブルーモーション(FF/6AT)【海外試乗記】
存在感よりスマートさ 2010.07.23 試乗記 フォルクスワーゲン・シャラン1.4TSIブルーモーション(FF/6AT)再び日本上陸をうかがうフォルクスワーゲンのMPV「シャラン」。1.4リッターターボエンジンを搭載した新型に、ドイツ・ミュンヘンで試乗した。
2.8リッターが半分に
フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンが、2011年、新型「シャラン」の導入を予定している。シャランといえば、日本でも初代が1997年から1999年まで販売され、見かけによらずダイナミックな走りっぷりが印象的だった。そんな快速のミニバンが、10年以上のブランクを経て日本再上陸を狙っているということで、ひとあし先にドイツでその実力を試してきた。
2000年以降、2度のマイナーチェンジを実施し、そして2010年にフルモデルチェンジにより3代目へと進化したシャランは、旧型よりも全長で約230mm、全幅で約90mm大きなボディを手に入れた。全長4854mm×全幅1904mm×全高1720mmというサイズは、日本ではLクラスミニバン、すなわち「トヨタ・アルファード」や「日産エルグランド」と張り合うものだ。ただ、この2台に比べると全高が控えめで、遠目にはゴルフと間違えそうなフロントマスクが与えられたこともあって、見た目の印象はライバルとは大きく異なる。押し出しがあまり強くないかわりに、漂うさわやかな雰囲気が、なんともフォルクスワーゲンらしい。
フォルクスワーゲンらしさという意味では、搭載されるエンジンもユニークだ。排気量を小さくして低燃費化を図る“ダウンサイジングコンセプト”はこのシャランでも例外ではなく、これだけ立派なボディに、1.4リッターのガソリンエンジンを搭載するのは驚きだ。
「1.4 TSI」と呼ばれるエンジンは、日本でもおなじみのターボ&スーパーチャージャーを備えた直噴エンジンで、日本導入の最有力候補になっている。かつて販売されていたシャランには、2.8リッターV6が搭載されていたから、それに比べると排気量は半分。これはタダゴトではない!
アウトバーンをそつなく走る
いわゆる“ツインチャージャー”エンジンは、150ps/5800rpm、24.5kgm(240Nm)/1750-4000rpmの実力で、日本に導入される場合はデュアルクラッチギアボックスのDSGと組み合わされるはずだ。残念ながらこの組み合わせの試乗はかなわず、代わりに6段マニュアル仕様がテストできた。ちなみに、240Nmという最大トルクなら乾式クラッチタイプの7段DSGが搭載できそうだが、車両重量が重いということから実際には湿式クラッチの6段DSGが組み合わされている。
さっそく走り出すと、約1700kgのボディが相手では、出足はのんびりとした印象を受けるし、街なかで2000rpmを下まわるような状況では、余裕たっぷりとはいかない。それでも、必要十分な加速性能は持ちあわせているし、アクセルペダルを大きめに踏み込んでやれば、流れに乗り遅れる心配はない。
一方、アウトバーンでは、自然吸気2リッターエンジン以上の力強さを存分に発揮し、実に活発な印象である。5000rpmを超えるとやや加速が鈍ってくるが、トータルでみれば十分満足できる内容だ。
新しいシャランの走りは、乗り心地の良さと、キャビンの静かさが印象的だ。試乗車には「DCC」と呼ばれる連続可変ダンピングシステムが装着されており、「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」のスポーツでも乗り心地は快適で、高速域でのフラット感やステアリングの座り具合も好ましかった。
反面、ノーマルがややソフトな味付けで、個人的には積極的に選ぶセッティングではない。コンフォートはさらにソフトだったから、現状のスポーツをノーマルとしてもいいのではないかと思う。残念ながら、DCCなしのモデルには試乗できなかったが、少し硬いかなぁというくらいの味付けであればいうことはない。
「ブルーモーション」仕様ということで、街なかではエアコンがオンの状態でもアイドリングストップ機構が頻繁に働く。ガソリンエンジンはこの1.4 TSIのほかに、「ゴルフGTI」に載る「2.0 TSI」もラインナップされるのだが、こちらにはブルーモーション仕様が用意されないというから、やはり日本仕様の本命は1.4 TSIだろう。
使い勝手も向上
新型シャランは、ミニバンとしての使い勝手も向上している。旧型がヒンジドアを採用していたのに対し、新型は両側スライドドアを搭載。電動開閉機構もオプションで用意される。
標準が2列5名、オプションで3列6名または7名が選べるシートも、旧型ではシートアレンジのためにいちいち取り外さなくてはならなかったが、新型はセカンドシート、サードシートともに、不要の時は簡単に収納できて、フラットな荷室が短時間で手に入るようになった。
特筆すべきはセカンドシートの居心地の良さ。シートにリクライニング/スライド機構が備わるのはいうまでもないが、フロアから座面までの高さが適切で自然な姿勢で座れるのと、前席よりも一段高いアイポイントが開放感をもたらしている。オプションの「パノラミックサンルーフ」を装着すれば、さらに開放感がアップするから、日本でもぜひオプション設定をお願いしたい。
セカンドシートの中央に、大人がガマンすることなく座れるのもシャランの長所である。両サイドに比べると少し狭いが、それ以外に劣るところはない。5人で乗るなら3列目を使うよりは、ここに座った方が断然快適だろう。一方、サードシートは足を伸ばせないぶん、ゆったりとはいかないまでも、大人でもさほど窮屈な思いをせず移動できそうだ。なお、すべての席にヘッドレストと3点式シートベルトが備わるのはいうまでもない。
決して派手さや豪華さはないが、フォルクスワーゲンならではのスマートさでまとめられている新型シャラン。日本のLクラスミニバンとは明らかに違う雰囲気やつくりに新鮮みを覚えるのは私だけではないだろう。ぜひとも日本導入を実現してほしいと思う。
(文=生方聡/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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