BMW528i(FR/8AT)【試乗記】
体も器も大きくなった 2010.06.11 試乗記 BMW528i(FR/8AT)……745.6万円
ドライバーズサルーンとして人気の「5シリーズ」。BMWのおはこ「直6NA」を搭載するベーシックグレードに試乗した。
ダイナミックなフォルム
試乗会場に並んでいた新型BMW「5シリーズ」は、「7シリーズ」のように見えた。片隅に“本物”も置かれていたが、即座に両車を見分けることはむずかしかった。
それもそのはず、新型は大きい。4910×1860×1475mmというサイズは、旧型より55mm長く、15mm幅広く、5mm低いが、7シリーズと比べて160mm短く、40mm狭く、15mm低いだけでもある。旧型から80mm延長されたホイールベースは、100mmの差しかない。
でもじっくり観察すると、ノーズは低く、サイドパネルには彫刻的なラインが入り、よりダイナミックなフォルムになっている。2つのシリーズの違いは車格というより、乗る人間の身分にあるのかもしれない。
スカットルから前をアルミ製とした旧型に対し、新型はボンネットやフェンダー、ドアなどのパネルをアルミ化した。おかげでドアは軽いが、閉まり音に安っぽさはない。開閉感に重みを出すのは過去の演出になりつつあるようだ。
高級な空間、というのが室内に入っての第一印象だった。ウッドパネルやスイッチのふちなど、あちこちにシルバーの装飾が入る。試乗車は「528i」「535i」「550i」があるラインナップでいちばんベーシックな528iなのに、7シリーズに匹敵するラクシャリーな雰囲気を醸し出している。
しかも広い。後席は身長170cmの僕が足を組めるほどだ。ただしヒップポイントは前席同様低めで、明確なサイドサポートを持つあたりに、5シリーズのパーソナリティを感じる。
気になったのは、3シリーズや7シリーズに続いて採用された新型「iDrive」のコントローラー。最初はダイヤル1個だったのに、保守的なユーザーの声に押され、従来型のスイッチを増築してしまった。同じiで始まる「iPhone」や「iPad」のような分かりやすいユーザーインターフェイスは、自動車には望めないのだろうか。
しかしそんな不満も、走り出してまもなく雲散霧消してしまった。
まるでロールスのよう
路面の凹凸をすべてオブラートに包み込み、おだやかな揺れとして送り届けるフィーリングは、7シリーズを飛び越えて、ロールス・ロイスさえ連想させる。ランフラットタイヤの欠点はほとんど克服したと断言できる。
新型には全車に、ノーマル/スポーツ/スポーツプラスという3モードの走行特性を任意に切り替えられる「ダイナミック・ドライビング・コントロール」がつく。ロールスを想起させた乗り心地はノーマルモードによるものだが、スポーツプラスを選んでもやや骨っぽくなるだけで、まったく不快ではなかった。
BMW初のエコカー減税対象車でもある528iのエンジンは、車名からは分かりづらいが、3リッターの直列6気筒である。スペックは258ps/31.6kgmと控えめなのに、箱根の山でも1770kgのボディを過不足なく走らせるのは、6段から8段になったATのおかげだろう。
変速はいたってスムーズで、多段のせわしなさを感じさせないまま、スロットル操作に合わせて最適なギアを選んでくれる。でもクルマ好きならマニュアルモードでストレート6を回し、うたわせたくなるだろう。
「7」の快適性、「3」の身のこなし
かつてBMWの代名詞だった自然吸気の直6は、いまや少数派になりつつある。だからこそ、排気音が主体の過給機つきでは味わえない健康的なサウンドと素直な吹け上がり、力の盛り上がりが心地いい。減税目当てではなく、エンジン目当てでベーシックグレードを選ぶのもありだと思う。
ただしこういう走り方には、ノーマルモードはソフトにすぎる。スポーツに切り替えると足が少しハードになり、ATは低いギアをホールドし、スロットルやステアリングの反応が鋭くなるが、本気モードにはさらにフラットな姿勢と鋭いレスポンスが手に入るスポーツプラスがベストだった。
タイヤが前後とも225/55R17と、車格を考えれば控えめなので、グリップレベルはほどほどだが、「インテグレイテッド」という枕詞が付いた4輪アクティブステアリングに違和感はなく、BMWならではの前後バランスの高さを満喫できる。
街中では7シリーズに匹敵する快適性を味わわせながら、山道では3シリーズの身のこなし。最後は車体の大きさより、器の大きさのほうが印象に残った。
(文=森口将之/写真=郡大二郎)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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