BMW 523d xDrive Mスポーツ(4WD/8AT)
たいしたモノ 2024.07.24 試乗記 BMWの新型「5シリーズ」で唯一となるディーゼルエンジン搭載車「523d xDrive Mスポーツ」に試乗。48Vマイルドハイブリッドが組み込まれた2リッター直4ディーゼルの特徴や、先にデリバリーが開始されたガソリン車との違いをチェックした。バリエーションはこれで完結?
BMWが“SAV”(Sport Activity Vehicle)もしくは“SAC”(Sport Activity Coupe)と銘打って、あえてSUVと呼ばない「X」から車名が始まるモデルたち。ラインナップのなかでは今や過半がそれに該当し、利益の多くもそれらが生み出しているであろうと容易に想像がつく現状でもなお、長い間ブランドを支えてきた“基幹モデル”と呼ぶべき存在が「3シリーズ」や5シリーズであることに異論を挟む人は少ないだろう。
そんなBMWの屋台骨のひとつを担う5シリーズが直近の世代交代を終え、日本への導入がスタートして1年余り。5シリーズ史上初の「i5」なる独立したネーミングを採用し同シリーズ内でも特に存在感が強調されたピュアEVバージョンと従来のガソリンエンジンバージョンに続き、今回、同時発表されていながらも日本上陸が遅れていたディーゼルエンジンバージョンをテストドライブした。
実はエンジンを搭載する5シリーズは日本導入モデルがかなり絞り込まれていて、ガソリン/ディーゼルともにフロントフード下に収まるのは4気筒ユニットのみ。少し前までこのブランドのコアコンピタンスとして珍重されていた直列6気筒はいくつかの市場向けには用意されているものの、インポーターの販売戦略上か日本導入のハナシが聞こえてこないのはやはり少々寂しい。
加えれば、ともにターボ付きの前出2リッター4気筒もしくは3リッターの6気筒エンジンをシステムに組み込んだプラグインハイブリッドバージョンも存在しているものの、やはり日本導入という話題は聞こえてこない。それどころか、セダンに半年遅れで発表された「ツーリング」を称するステーションワゴンでは、搭載されるエンジンがターボ付きの2リッター4気筒ディーゼルのみという徹底ぶり。
果たして日本の新型5シリーズは、「M5」を除くとこれでバリエーションが完結ということになってしまうのであろうか。
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エンジン車とピュアEVで骨格を共有
ちょっとばかりそうした危惧を抱きながらテストドライブを行ったのは523d xDrive Mスポーツである。日本に導入されるディーゼルのセダンは現在のところこのグレードのみだが、テスト車にはメリノレザー張りのフロントアクティブベンチレーションシートを装備する「エクスクルーシブメリノレザーパッケージ」やアダプティブサスペンション/インテグレイテッドアクティブステアリングなどからなる「コンフォートドライビングパッケージ」など、総額70万円に達するオプションアイテムが備わっていた。グレード展開はシンプルでも、自身でのカスタマイズの余地が残されているのは、輸入プレミアムモデルならではといえる見どころだ。
モデルチェンジの度にボディーが大型化するのにはもはや驚かない昨今だが、新型5シリーズの場合はそのレベルがなかなかのもの。
全長は5mの壁を軽々と乗り越え一挙に5060mmまで成長し、全幅もついに1.9m。当然ホイールベースも延びてその値は2995mmに。ボディーの大きさはもはや2世代前のF01系「7シリーズ」とほとんど変わらない水準へと至ったことになる。
ここで見逃せないのがBMWなりのEV戦略だ。最大のライバルたるメルセデス・ベンツがピュアEV版である「EQE」に電動車専用骨格を与え、新型「Eクラス」にはエンジン車専用構造を用いたのに対して、BMWの場合はエンジン車とピュアEVで骨格を共有。こうなると、ピュアEVではホイールベース≒搭載バッテリー量という公式が成り立つゆえに、今度の5シリーズでは可能な限り長いホイールベースを採用したかったのだろうという推測にたどり着く。
さらにいえば、新しい7シリーズがあれほど大胆で賛否の分かれるデザインへと飛躍することができたのも、この5シリーズの大型化を踏まえて、もはやパーソナルカーとしての上限はこちらで十分に賄えるという事前の判断があったからだと読み解くことができるのではないだろうか。
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スイッチオンで仰天
なるほど、あらためて実車を目の当たりにしても、“パンテオングリル”もかくやという顔つきで圧倒的存在感を誇示する7シリーズに比べれば、新型5シリーズのたたずまいはずっと常識的で平和な(?)、かねての流れをくんだBMWルックそのものに映る。
実はそれでもグリルは大きくなっているし、そんなキドニーグリルにはその縁取りがライトアップされるというやはり保守層が眉をひそめそうなギミックが組み込まれていたりもする。だが、最新型7シリーズを目にした段階で「次の5シリーズはどうなっちゃうのだろう」という不安に駆られていた人々にとっては、比較的すんなりと受け入れられるルックスであることは間違いなさそう。フロントマスクはもとよりリアビューでも同様の印象を受ける。
もっとも、そうした安心理論が通用するのはエクステリアだけで、7シリーズの斬新ぶりをちょっとだけ控えめにしたようなインテリアの雰囲気は、やはりなかなかの跳びようだ。
異形のステアリングホイールやバイザーレスの横長モニターを並べた“カーブドディスプレイ”にはもう慣れたとして、ハザードランプのスイッチを押した瞬間にキャビンを取り巻くクリスタルな「インタラクションバー」が真っ赤に点滅し始めたのには仰天。「驚かすのはこれくらいにしてヨ」と、思わずそう言いたくなる程度の斬新さを備えるのが新しい5シリーズのインテリアなのである。
こうしてクラシックなのかイノベーティブなのかとちょっと混乱気味になったところでエンジンに火を入れると、耳に届くのはまごうことなきディーゼルサウンド。ただし、それは決して騒々しいというわけではなく、“プルン”と滑らかに始動するのもガソリンユニット同様にこのエンジンにも5kWの最高出力を発する48Vマイルドハイブリッドシステムがアドオンされているため。その最大トルクも25N・mにすぎないから強い“電動感”が味わえるというわけにはいかないが、それでも1500rpmにしてすでに400N・mの最大トルクを発生するというエンジン特性のサポート役となっていることは確かである。
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トルクの太さが印象的
そうした街乗りシーンでの扱いやすい動力性能を筆頭に、走りは総じて好印象だった。
大柄なボディーや4WDシステムの採用もあって、4気筒エンジンながらも車両重量は1.9t近くとなかなかの重量級。しかし、混雑する街なかはもちろんのこと、高速道路へと乗り込んでも動力性能の面でその重さを意識させられることは皆無である。最高出力197PSに最大トルク400N・mだからスペックは特筆すべき水準にあたらないが、それでもガソリンエンジンバージョン「523i」の心臓が発する値は同190PSと同310N・mだから、数値的には同等以上。あちらは後輪2輪駆動ということもあって100kg以上軽量だが、実際に乗り比べて鈍重なイメージを受けることは一切ないし、高速クルージングシーンでは常にディーゼル特有のトルクの太さが印象に残る。
前出オプションのインテグレイテッドアクティブステアリングが功を奏していると実感するのは低速タイトターンでの舵の速さ。ただ、これによってボディーのサイズ感が帳消しというわけにはいかず「BMW車らしい人車一体感が得られる」とまでは言いかねるが、全般にステアリングの操作量が減るのでフラットボトムのステアリング形状がもたらす違和感の軽減に役立ったことは確か。さらに、ボディーサイズに対して相対的に小さく感じられる駐車枠に収める際には、非装着時の5.8mから5.4mへと最小回転半径が小さくなった効用も見逃せない。
19インチで45%偏平の「ピレリPゼロ」タイヤを装着しながら、ロードノイズの小ささやスムーズでフラットな乗り味などコンフォート性能の高さはさすがである。
個人的にビーエムに期待する方向性とはちょっとベクトルが違うような気もするけれど、「出来栄えはどうだった?」と尋ねられればやはり「たいしたもの」と答えるしかない新型5シリーズ一族なのである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
BMW 523d xDrive Mスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5060×1900×1515mm
ホイールベース:2995mm
車重:1870kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:197PS(145kW)/4000rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1500-2750rpm
モーター最高出力:7PS(5kW)/6000rpm
モーター最大トルク:25N・m(2.5kgf・m)/500rpm
タイヤ:(前)245/45R19 102Y XL/(後)245/45R19 102Y XL(ピレリPゼロ)
燃費:16.6km/リッター(WLTCモード)
価格:918万円/テスト車=990万2000円
オプション装備:ボディーカラー<ミネラルホワイト>(0円)/BMWインディビジュアルレザーメリノ<シルバーストーンII×アトラスグレー>(0円)/エクスクルーシブメリノレザーパッケージ(32万3000円)/コンフォートドライビングパッケージ(36万8000円)/BMWインディビジュアルインテリアトリム<シルバーブロンズ>(3万1000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2653km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:316.6km
使用燃料:18.0リッター(軽油)
参考燃費:17.6km/リッター(満タン法)/18.0km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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