フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/6AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/6AT) 2010.04.14 試乗記 ……417万4500円総合評価……★★★★
ホットハッチの代名詞たる「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」。6代目となる最新型の走りを、18インチホイール装着車で試した。
昔のアメ車を思い出す
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」は、標準的な1.4リッターモデルでも十分に速いクルマではあるが、やはり排気量の大きな2リッターエンジンがもたらす余裕は絶大だ。強いて言うならば、この「GTI」にはマニュアルトランスミッションの設定もあってしかるべきだろうが、日本市場で売れないとなればやむなし。“努力せずして速く走れるモデル”が主流となれば、メーカーとしての商品構成もそうなって当然だ。フォルクスワーゲンの場合には「1.2リッターや1.4リッターの標準モデルこそが良心」という大義名分もある。
そんないまの「GTI」に乗っていると、昔のアメリカ車を思い出す。コーナーを攻める気にもならないし、とくにスピードを楽しむ気分でもない。前に速いクルマが走っていたとしても、追いつくのは簡単。でも、前に出ようという気にならない。おうように構えて、いつでも追い越せるんだという可能性だけで満足してしまえる。これもひとつの時代を反映した進化形ではあるが、「これでどーだ?」といわれても、昔モンには感服いたしましたとは納得しがたい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「GTI」は、初代「ゴルフ」以来設定されるスポーティグレード。現行モデルは6代目となり、日本では2009年8月に発表された。フロントグリルの赤いラインや、シート生地にチェック柄が配されるなど、伝統のディテールは随所に見ることができる。
ベースとなる「ゴルフ」同様、基本的なプラットフォームは先代を引き継ぐが、11ps増しの2リッター直噴ターボエンジンや、電子制御式ディファレンシャルロックの「XDS」などを新たに採用。ゴルフとしては初採用となる、アダプティブシャシーコントロール「DCC」もオプションで用意される。
13.0km/リッター(10・15モード)の燃費や、ユーロ5適合の排ガス性能など、時代に応じた環境対策も施された。
(グレード概要)
2リッター直噴ターボの「TSI」エンジンは、最高出力211ps/5300-6200rpm、最大トルク28.6kgm/1700-5200rpmを発生。日本市場向けに用意されるトランスミッションは、2ペダルMTの湿式6段DSGのみとなる。前マクファーソンストラット、後4リンクというサスペンション形式はスタンダードグレードと同型だが、GTI専用にチューニングされ、フロントを22mm、リアを15mmローダウン化される。リアスタビライザーもこれに応じて最適化された。ダイナミックコーナリングライト付きバイキセノンヘッドライトやネット付きトノカバーなどは、GTI専用装備となる。
テスト車にはさらに、18インチホイール&タイヤと路面状況にあわせダンパーの減衰力や電動パワステの特性などを3段階で変更できる「DCC」(アダプティブシャシーコントロール)など、走りを意識したオプションが備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
標準車のソレより、やや光りモノが増えた印象。インフォメーションは、まるで子供のオモチャ箱のようにたくさん詰め込まれているが、ドイツ的にキチンと整理されている。280km/hまで目盛られた速度計と各所に配された赤糸のステッチが、ホットハッチたる「GTI」の証し。ダンパー減衰力の切り替えや、ESPのスイッチはコンソールに備わる。DSGはフロアのレバーだけでなくステアリングホイールのスポークにあるシフトパドルでも変速できる。ライトスイッチがダッシュボードにあるのもドイツ流。
(前席)……★★★★
シート表皮のタータンチェック柄が雰囲気を盛り上げる。それはともかく、この絶妙な座面傾斜角こそフォルクスワーゲン車である端的な証拠。ハードなブレーキング時に身体にかかる前後Gを支えてくれるのが、見ただけでもわかる。上体を背もたれにあずけて、腰への負担も軽減してくれる。「GTI」をそれらしく操る“仕事場”としての機能は万全だ。ハンドル下端を切除しフラットな形状としたのは肥満者対策なのだろうか。そうでない向きには回しにくいと思うが、切った角度の目安にはなる。
(後席)……★★★★
定員は5名だが、後席は、2名の背中がすっぽりと包まれるようにくぼんだデザイン。横G対策としては、ありがたい形状だ。座面の先端はちょっと盛り上がっており、腰が前にずれるのを防ぐ。ゴルフには4WDモデルもあるので、センタートンネルは高く、3人目の人は足の置き場が限られる。両脇のふたりにとっては、ひざや靴先のスペースは十分。ルーフも高い。ハッチバックゆえ、セダンのリアウィンドウ位置より後方まで空間的余裕がある。なお、敷居は高いものの、ボディ剛性に寄与するものであり、乗り込みの際もさほど邪魔には感じられない。
(荷室)……★★★
フロア面積としても十分広い。これだけあれば、このクラスのセダンと対等。フロアボードの下にはテンパーのスペアタイヤが収まる。内張りも丁寧にキッチリ仕上げられている。リアシートのセンター部は通常のアームレスト以上の幅がある。ここから荷室にアクセスして、室内側からバッグなどを取り出せるのは便利だ。ハッチゲートはフォルクスワーゲンのエンブレムそのものをめくり上げて開ける。ここにリアビューカメラも入っている。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
2リッターのTSIエンジンは211ps/5300-6200rpm、28.6kgm/1700-5200rpmと広い幅をもってパワーを発生。6段DSGも守備範囲が広く、文字どおり緩急自在である。それゆえにどう運転しても流れをリードするのは簡単、反面で操作はズボラで雑になりがち。
ステアリングホイールの操作とともに動いてしまうシフトパドルはコーナーで探すことになる。フロアから伸びるレバーに頼ることもできるが、どちらも可能であるがゆえに、それが一瞬の迷いにつながる。結果はどうあれ、「コレがダメならコッチはどうか?」という思考(=操作の遅れ)はストレスになりうる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
前後・左右・上下の3軸方向全てにおいて無駄な動きが少なく、ブッシュ類のヒステリシスが少ないのが最近のフォルクスワーゲン車の美点だ。動きがスッキリしている。
乗り心地は、サスペンションのストローク感があって、バネ下がしっかり動いてショックを吸収する感覚が良好だ。ハンドリングは素直で、ドライバーの意思に忠実に反応する。
ハード面での設定や造りのよさから、クルマとしての完成度の高さを感じる。残る小さな不満は、量産車であることに起因する精度の部分。たとえば、タイヤやホイールのユニフォーミティであるとか、ボディ剛性はさほど低くないはずなのに、段差などを斜めに通過するとき内装材の擦れる音などが価格相応に聞こえてしまう点である。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2010年3月1日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:13495km
タイヤ:(前)225/40R18(後)同じ(いずれも、コンチネンタル スポーツコンタクト2)
オプション装備:18インチアルミホイール&タイヤ+DCC(21万円)/HDDナビゲーションシステム(30万4500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:237.1km
使用燃料:22.3リッター
参考燃費:10.63km/リッター

笹目 二朗
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