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【スペック】全長×全幅×全高=5180×1875×1475mm/ホイールベース=3090mm/車重=2400kg/駆動方式=4WD/5リッターV8DOHC32バルブ(394ps/6400rpm、53.0kgm/4000rpm)、交流同期電動機(224ps、 30.6kgm)/価格=1550万円(テスト車=1794万2550円/ナイトビュー=31万5000円/ムーンルーフレス=▲9万4500円/DSRCユニット=2万2050円/L-Select(セミアニリン本革パッケージ)=100万円/L-Select(本木目パネル)=120万円)

レクサスLS600hL バージョンUZ(5人乗り)(4WD/CVT)【試乗記】

レクサスだったらできるはず 2010.03.10 試乗記 島下 泰久 レクサスLS600hL バージョンUZ(5人乗り)(4WD/CVT)
……1794万2550円

レクサスブランドのフラッグシップサルーン「レクサスLS600h」がマイナーチェンジ。ハイブリッド化の波が押し寄せるこのクラスで勝ち抜くために必要なものとは?
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先進性を演出

2009年秋に行われた初のマイナーチェンジで、「レクサスLS460」は大幅な進化を果たしていた。とは言っても、見た目が大胆に変わったとか、スペック表の数値が目に見えて大きくなったというわけではなく、そういう意味では変更点はむしろ目立つものではない。しかし乗れば明らかに、クルマとしての質の高まりを実感できる。そんな進化を遂げていたのである。
では、その時には試すことのできなかった「LS600h」については進化の度合いはどれほどのものなのか。今回じっくり試すことができたので報告したい。

まず目を引くのはエクステリアの変化だ。今度のモデルはハイブリッドであることをアピールするべくフロントマスクのデザインをLS460と違えている。3連LEDのヘッドランプやグリル、バンパーなどを専用デザインとしているのだ。ただし、これについては評価は難しい。たしかに空気を思い切り吸い込みそうには見えないという意味で違いはアピールできている。しかし特にそのグリルは、近寄ると安っぽく見えてガッカリさせられる。

インテリアでは、カラーTFT液晶を使ったファイングラフィックメーターの採用がトピックである。中心に置かれた280kmスケールの速度計の中に、ハイブリッドシステムの動作状況やナビの案内表示、ナイトビューなどを鮮やかに映し込むこのメーターは、個人的には回転計が隅っこに追いやられてドライバーズカー的なムードが後退してしまったことが気にはなるが、機能としては時代の先端を走るモデルにふさわしい雰囲気を演出するものだと言えるだろう。


レクサスLS600hL バージョンUZ(5人乗り)(4WD/CVT)【試乗記】の画像 拡大

レクサスLS600hL バージョンUZ(5人乗り)(4WD/CVT)【試乗記】の画像 拡大
マイナーチェンジと同時に設定された、オプションの内装カスタマイズプログラム「L-Select」を使うことで、シートやドアトリム、ルーフ、本木目パネルなどの組み合わせを自由に選ぶことができる。
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一体感を削いでいる

あるいはもっとも注目を集めるのは、ラゲッジスペースの容量拡大かもしれない。これまで平面に積まれてスペースを侵食していたバッテリーを小型化し2段重ねとするレイアウトの変更を実施し、さらにスペアタイヤの代わりにパンク修理キットを標準設定とすることで、容量は330リッターから420リッターまで大幅に拡大。ゴルフバッグを指標にすれば9.5インチのそれを4個積めるというから、ようやくこのクラスにふさわしい広さを得たと言えるだろう。

走りに関する部分については、特に変更はアナウンスされていない。しかし実は、磨きがかけられたその洗練度こそ、今回のマイナーチェンジの一番のポイントだ。

たとえば乗り心地。従来のLS600hはエアサスペンションに、ややブルブルとした振動感があり快適性を損ねていたが、今回はそのあたりが俄然滑らかさを増し、よりしなやかなストローク感を得ている。特に減衰力可変ダンパーの「AVS」をコンフォートにセットすれば、乗り心地は快適そのもの。標準モデルに対して200kg以上もかさむ車重を、とりあえず乗り心地の面では支配下に置けるようになったという印象である。

一方でステアリングフィールは褒められたものではない。全般に手応えが薄く操舵の実感を得にくいし、据え切りすると妙に重くなったりもする。車重の重さに合わせて操舵力の設定を違えているのかもしれないが、思い通りに動いてくれない感覚は、かえってクルマとの一体感を削いでいる。


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トランクルーム容量は、バッテリーの搭載レイアウト変更により、90リッター拡大した。
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パワーフィールは絶品

しかしながら洗練されたパワー感と吹け上がりによるハイブリッドパワートレインの他では味わえない感動は、今もまったく色褪せていない。停止中のアイドリングストップがもたらす、おごそかな静寂感、モーター走行時の極上の滑らかさ、そこからエンジンが始動した時の振動、騒音の違和感の無さ、段付き感とは無縁にどこまでも伸びていくような加速感など、その魅力は挙げていけばキリが無い。回転計をないがしろにしてほしくなかったのは、この感動を視覚的にも味わいたかったからだ。

ハイブリッドシステム、そして空調の制御を変更するエコドライブモードスイッチも備わる。空調に関しては真夏に試してみないとなんとも言えないが、少なくとも動力性能については、エコドライブモードでまったく問題は無かった。今の時代、これが標準モードでもいいのに、とすら思えたほどである。

2007年のデビュー当時はこのクラスのハイブリッド車が他には無く、LS600hの独壇場といえる状況だった。しかし今やメルセデス・ベンツが参入し、BMWも投入秒読み段階と、競争は激化している。狙っている動力性能と燃費のバランスはそれぞれ違っているとはいえ、価格も含めて直接比較されると考えれば、LS600hにはまだ、特にフットワークと乗り心地の面で改善の余地は少なくない。

とはいえ、その絶品のパワーフィール、あるいは回生ブレーキを協調させたブレーキのタッチなどは、今もって大きなアドバンテージである。その魅力を一層生かすべく、さらなる進化、熟成を期待したい。レクサスにはできるはずだ。

(文=島下泰久/写真=高橋信宏)

島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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