トヨタ・プリウス プラグインハイブリッド(FF/CVT)【試乗記】
天下を狙える資質あり 2010.01.25 試乗記 トヨタ・プリウス プラグインハイブリッド(FF/CVT)……参考価格=525.0万円
好調が伝えられる「トヨタ・プリウス」に、家庭用電源からも充電できる派生バージョンが追加された。強化されたEV走行性能には、どんなメリットがあるのか? 肝心の乗り心地は? 『webCG』のコンドーと関がチェックしてみた。
ご心配にはおよびません!
関(以下「せ」):今回試乗するのは、いま一番ホットなエコカー……
コンドー(以下「コ」):なんぜよっ!? まさか「ホンダ・シ〜・ア〜ル・ズィ……
せ:それは、チョット気が早すぎ。
コ:なんや、「トヨタ・プリウス」やんか。いま一番売れてんのは知ってるけど、ちょっと見飽きた感あるで。
せ:ただのプリウスじゃないですよ。「プリウス プラグインハイブリッド(PHV)」って、名前からして長いんで。
コ:ぷら……ぐいん?
せ:プラグ、イン。つまり、「コンセント付き」。車外から充電するための。
コ:あ〜っ、ケータイやデジカメみたいに、家のコンセントから充電できるわけやな。ホンマや、左のフロントフェンダーに、プラグの差し込み口がある。
せ:横っ腹に、大きなプラグのイラストも。銀色に輝くサイドミラーやドアハンドル、リアガーニッシュも“並”のプリウスとの違いです。
コ:で、バッテリー使うて、モーターだけで走れて、それって電気自動車(EV)ちゃうん?
せ:普通のプリウスと同様、基本はエンジン+モーターで走るハイブリッド車。ただ、大きめのバッテリーに外部から充電することで、それなりに長いEV走行もできるというわけです。
コ:聞いてる限りは、なんとなく、中・途・半・端じゃのぅ〜……。
せ:EVは、ガソリンも使わなきゃ、排ガスも出しませんが、問題なのは航続距離。伸ばそうと思ったら、重いバッテリーをさらに増やすか、途中で充電しなけりゃならない。
コ:最新の「三菱i-MiEV」でも、1回の充電で100kmそこそこらしいね。
せ:使い切ったらその場で立ち往生だから、現実的に限界まで走らせるのは“チキンレース”。そんな不安感から開放してくれるのが……
コ:プラグインハイブリッド(PHV)やと。「極力EVで走りますけど、いざバッテリー切れたらエンジンも使えますから、心配いりません」いうわけやな? 肝心のEVモードは、どれぐらい走れるん?
せ:最長で、23.4kmです。
コ:短っ!! 近所の買い物ぐらいしか使われへんやん。
せ:それでも、閑静な住宅地とか、ここぞの一発でしか使えなかったノーマル(2km)に比べれば、10倍以上。EV走行できる最高速度も、ノーマルは50km/hそこそこだけど、PHVなら100km/hまでイケるんです。
コ:じゃあまあ、数字の話はそのへんにしといて、実際どれほどのもんか、イッてみるか。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
目からウロコのEVモード
コ:“並”やない言うわりには、インテリアも、ふつうのプリウスとまるで変わらへん。
せ:機能に関係あるところだけ変わってます。ノーマルのプリウスは、センターコンソールに「パワーモード」「エコモード」「EVモード」と、3つの走行モード選択ボタンがありますが、自動でEVモードが優先されるPHVには、そのボタンだけありません。
コ:ほとんど間違い探しやんか。あ、動力の伝達状況がわかる「エネルギーモニター」も違うてる。
せ:「EVであと何キロ走れるか?」って残距離表示がオリジナル。満充電だと23.4kmで、走り出すと同時に、23.3、23.2、……。
コ:みるみる減ってくな。でも、回生能力も上げてるいうだけあって、減速するたびに、チョコチョコ増えてくれる。
せ:電力を溜め込むバッテリーも大きくなって、車重は140kg増しになりました。ただ、加速感はそれほど変わりませんね。
コ:実際の0-100km/h加速は、ベースモデル「プリウスS」の10秒チョイから、さらに1秒ほど遅れるらしいけど、まぁ、気にならへんレベル。
せ:重さのおかげか、ゆるめのコーナーなどでの身のこなしは落ちついてる。乗り心地は良くなってると思います。
コ:足は基本的にノーマルのままで、スプリングを変えてある言うてはった。
せ:高速道路の継ぎ目など、急激な突き上げに対しては、はっきり弱さが出ますね。ベースのプリウスと比較しなくても、「ウッ!」と気になる。
コ:せやけど、クルマの静粛性は目からウロコや! 特にEV100km/h巡航の滑らかさはクセんなる。比較的エンジン回転数が高うなる高速域ほど、カルチャーショックや。
せ:急加速などアクセル踏み込むと、初めてエンジンかかって加勢してくれます。
コ:EV走行にカラダがなじんだら、エンジンのオンオフをいちいち意識させられるようになってまうなぁ。
せ:そうですね。稼動後のノイズやバイブレーションにも敏感になってしまう。ノーマルだったら気にならないのに、皮肉なもんです。
コ:そのアクセルひと踏みで、「EV走行可能距離」がいっきに5kmくらい減ってもうたで!
せ:ふつうのハイブリッドカー以上に、急加速はしないよう心がけたほうがいいみたい……。
残る課題は価格だけ
コ:この感覚いっぺん味おうたら、もう元には戻られへん。23.4kmなんて言わんと、もっともっとEVだけで走れるようにしてほしいわ。
せ:でも、トヨタが一般ユーザーの「1日あたりの走行距離」を調査したところ、過半数が20km以下という結果が出たそうですよ。
コ:でも、片道10kmて皇居2周やん? 20kmよりは30kmのほうが嬉しいし、40kmやったらもっと……
せ:荷室がバッテリーでいっぱいになりますよ! スペースやコストを考えて、うまいところで妥協したってのが、PHV。それに、出かけた先でまた充電するって手もありますから。
コ:まぁ、使うほどにお得なEVモードなんやから、余らすよりは使いきれるほうがええんかもしれんね。実際、コスト的にはどのくらいおトクなん?
せ:23.4kmまでにかかるエネルギーコストで比べれば、プリウス同等クラスのガソリン車が約240円、ハイブリッドのプリウスが約90円、EVモードのプリウスPHVが80円くらい。
コ:ノーマルのプリウスとは、10円しか違わへんやん。そっから先は、どっちもハイブリッド走行やから差は縮まれへんし。
せ:よりお安い夜間電力を契約すれば、30円くらいまで下がるから、差額は1回60円。
コ:毎日いちどはEVモード使い切るとして、1年で2万円のおトク。10年乗るとして、ベースの「プリウスS」(220万円)より20万円高やったら“買い”やと思うけど……?
せ:残念ながら、いまは法人向けのリース販売だけなんです。しかも、リース料の基準になる参考価格は、525万円だとか。
コ:高っ!!
せ:でも、国から132万円、東京だったら都からも(40台限定で)66万円の補助金が出ますから、実質負担は327万円です。ベース車両の価格も、細かい装備がSより増えて260万円くらいになっているから、ベラボーな差額というほどでもないですね。
コ:つまりは、まだまだ税金頼みやろ? ホントの意味で、納得価格とは言われへんな。ここはもひとつ、メーカーにがんばってもらって……一番負担になってるリチウムイオンバッテリーかて、いっぱい作ったら安くなるやろ。
せ:いまは600台の限定ですが、2年以内に、数万台規模で“手の届く価格”のPHVを市販化する計画だそうで。
コ:そりゃスバラシイ。数万どころか、数十万台作ってほしいなぁ。もちろん、今のノーマルと大差ない価格で。
せ:内容的には、3代目プリウスの大本命と思える完成度だし、この先「プリウスはPHVだけになる」ってシナリオも、あるかもしれませんね。
コ:楽しみに待っちょるき、よろしゅう頼んだぜよ!
(文=webCG近藤俊&関顕也/写真=webCG)

近藤 俊

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。




































