第159回:まるで運転がうまくなった気分 横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤを体験
2012.10.16 エディターから一言第159回:まるで運転がうまくなった気分横浜ゴムの新スタッドレスタイヤ「アイスガード ファイブ」を体験
横浜ゴム自らが「最高傑作」とうたい、自信をのぞかせる新スタッドレスタイヤ「アイスガードiG50(愛称:アイスガード ファイブ)」。従来品と比較して、アイス性能や耐久性、低燃費性能を向上させているのはもちろんだが、同社のエコタイヤで用いられる「BluEarth(ブルーアース)」の刻印が入れられていることからみても、燃費や環境への対応には特に力が入れられているようだ。日本国内のタイヤメーカーとしてはいち早くエコタイヤの展開を始めた横浜ゴムならではのこだわりなのだろう。
氷上性能、そして燃費にも配慮
低燃費化を図るには、タイヤのゴムの動きを抑制してエネルギーロスを低減するのが一つの手法だが、アイスガード ファイブではサイドのたわみを適正化している。これはミニバン専用プレミアム低燃費タイヤの「ブルーアースRV-01」の技術を応用したものだ。従来品に比べて5%のころがり抵抗の低減を果たすと同時に、ミニバンにスタッドレスタイヤを装着した時に起こりがちな「ふらつき」の抑制にも貢献しているという。
このサイドのたわみの適正化は、ステアリングフィールの面でも大きな変化をもたらしていた。これまでの横浜ゴムのスタッドレスタイヤは、どちらかというと穏やかな反応を示す傾向にあったが、アイスガード ファイブはステアリングを切り込んでいく際の手応えがしっかりしていて、スッとクルマの向きを変えていけたのだ。
また、デコボコが多い雪道の直線路で速度を上げていくと、ボディーがフラットに保たれて安定感があった。剛性感の高さが実に頼もしい。
スノー路面では、この舵(だ)の効きの良さが大いなる武器になる。反応の鈍さを見越してあらかじめ早めにステアリングを切り込むなんていうスノー特有のテクニックを使わなくても、無意識に運転していれば思い通りに走れるといった感覚。ただし、調子にのって飛ばしていくと、やや曲がりすぎるきらいがなくもない。また、姿勢を崩し始めてからのコントロールは、従来品のように曖昧さがあったほうがラクだったりもするのだが、絶対的なグリップ性能ではアイスガード ファイブのほうが圧倒的に高いので、一般的な走行では安心だろう。
ブレーキングの違い歴然
グリップの高さによる安心感という点では、アイス路面でのブレーキングが圧巻だった。従来品との比較テストでは制動距離が短くなっているのはもちろん、ブレーキをかけた瞬間からグッと路面に食い付いていくような感触がある。
アイス路面でスリップしてしまう最大の要因は、路面とタイヤの間に水が入り込むこと。スタッドレスタイヤは、いかにこれを排除するかが課題となる。アイスガード ファイブでは、「新マイクロ吸水バルーン」と「吸水ホワイトゲル」を新たに採用した「スーパー吸水ゴム」を開発し、吸水量が従来比で21%向上しているという。ミクロの水膜を取り除き、氷に密着させる効果を高めている。
またアイス路面での食い付きを重視したトレッドパターンや新開発のコンパウンドなどと合わせて、アイス路面でのブレーキ性能は従来比で8%向上しているという。
ミニバンとの相性良し
トレッドパターンは、横浜ゴムのスタッドレスタイヤとしては初めて非対称とされた。低速域で有効なイン側は主にアイス性能を重視しており、大きな接地面積による密着力、高いサイプ密度によるエッジ効果などで貢献している。一方、速度域が上がると旋回時に使われるようになるアウト側はスノー性能を意識しており、直線の溝をイン側より多い3本としてコーナリングでのエッジ力を確保。ブロックも大きめとされ、剛性感のあるハンドリングを実現している。
ブロックやサイプの形状にもさまざまな工夫が凝らされているが、今回初採用となったのが「トリプルピラミッド ディンプルサイプ」だ。センターブロックのサイプの端に切り込みを入れることで、吸水した水を縦方向の溝に排水するとともにエッジ効果も発揮。一般的に切り込みは剛性低下をまねくが、上下に配置した大型ディンプルがこれを抑制するという。
今回はハッチバックやセダン、FF、FR、4WDとさまざまな車種で試したが、最もアイスガード ファイブの進化の恩恵を感じやすかったのはミニバンだった。やはり、ふらつきを抑える「たわみ制御プロファイル」が大きな効果を発揮しているようで、スノー路面でのハイスピードドライビングでも背の高さを感じさせない安定感が得られた。
また、どの車種で試してみてもステアリングレスポンスの良さは共通するところで、従来品よりもグッと安心感が高まっている。そのうえ、思った通りのラインを描けるため、まるで自分の運転がうまくなったようで、楽しくドライブできるのが印象的だった。
(文=石井昌道/写真=横浜ゴム)
