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第160回:【Movie】アウディが考える近未来のモビリティー 独アウディ本社主催の技術ワークショップ報告

2012.10.19 エディターから一言

第160回:【Movie】アウディが考える近未来のモビリティー独アウディ本社主催の技術ワークショップ報告

2モーター方式を採用する「アウディA1 e-tronデュアルモードハイブリッド コンセプト」。
第160回:アウディが考える近未来のモビリティー アウディAG主催の技術ワークショップ報告

ドイツ・アウディ本社主催の技術ワークショップの今回のタイトルは「Audi future lab: mobility」。当日はさまざまなテーマが用意されていて、すべて紹介するには一体どれだけの文字数が必要なのか……というところ。なので、ここでは特に次世代パワートレイン、そして燃料ストラテジーにフォーカスしてお伝えしたいと思う。

モーターで駆動する「電動ターボチャージャー(コンプレッサー)」。
モーターで駆動する「電動ターボチャージャー(コンプレッサー)」。 拡大
電動ビターボ(ツインターボ)のイメージ図。通常のターボチャージャー(メイン。吸気口とインタークーラーの間に位置)を、電動コンプレッサー(セカンダリー。インタークーラーとスロットバルブの間に位置)が補助する形態をとる。
電動ビターボ(ツインターボ)のイメージ図。通常のターボチャージャー(メイン。吸気口とインタークーラーの間に位置)を、電動コンプレッサー(セカンダリー。インタークーラーとスロットバルブの間に位置)が補助する形態をとる。 拡大
電動ターボのテストカーとして「A6」の3.0TDIエンジン搭載車が使用された。
電動ターボのテストカーとして「A6」の3.0TDIエンジン搭載車が使用された。 拡大

立ち上がりが早い電動ターボチャージャー

TFSI、そしてTDIというパワートレインの革新により、エンジン効率を著しく向上させてきたアウディ。ハイブリッドのラインナップもいよいよ充実しはじめた。そんな彼らが近い将来導入しようとしている3種類のパワートレインを、今回試すことができた。

まずは「3.0TDI with electric Biturbo」、つまり電動ターボ付きのTDIユニットである。これは排ガス流量が十分ではない低負荷域において、電動ターボチャージャーを使って過給を速やかに立ち上げようというものだ。

乗ると違いは明白。ベースのTDIでも何が不満なの? というぐらい充実した低速トルクを発生しているが、こちらは立ち上がりが一拍分は素早い。実際、ゼロ発進から3秒で1車身の差がつくという。ちなみにターボを駆動する電力は回生エネルギーをキャパシターに蓄えておいて使うというから、その意味で効率性も向上しているのだ。

 
「アウディA1 e-tronデュアルモードハイブリッド コンセプト」
「アウディA1 e-tronデュアルモードハイブリッド コンセプト」 拡大
ダッシュボード上のモニターに、エンジンとモーター作動状況が表示される。
ダッシュボード上のモニターに、エンジンとモーター作動状況が表示される。 拡大
1.5リッター3気筒エンジン+モーター1のセットとモーター2が同軸上に並ぶ。エンジン+モーター1とモーター2が状況に応じて連結/切り離しされる仕組み。
1.5リッター3気筒エンジン+モーター1のセットとモーター2が同軸上に並ぶ。エンジン+モーター1とモーター2が状況に応じて連結/切り離しされる仕組み。 拡大

オリジナリティーに富んだ2モーターPHV

続いては「デュアルモードハイブリッド」。パリサロンで発表された「クロスラインクーペ」に積まれていた新しい2モーターのプラグインハイブリッドシステムを搭載した「A1 e-tronハイブリッド」テストカーに乗り込んだ。

同じ2モーターのプラグインハイブリッドでも、そのシステムはトヨタ式とはまったく異なる。最高出力130ps、最大トルク20.4kgmを発生する1.5リッター3気筒エンジンは、同68ps/21.4kgmの電気モーター1と連結されている。電気駆動を担うのは同116ps/25.5kgmの電気モーター2。これには1段トランスミッションが連なり、エンジン+電気モーター1とは必要な時に連結される。

発進には電気モーター2のみが使われる。EVモードのまま、55km/h近辺まで加速するとエンジンと電気モーター1のクラッチがつながりハイブリッドモードとなる。システム出力は177psと強力。3気筒特有の振動もほぼ気にならず、気持ち良く走れる。ちなみに0-100km/h加速は9秒未満とのことである。そして130km/h以上では、ほぼエンジンだけでの走行となり、電気モーターはアシストに徹する。

トランスミッションが1段なのは、低速域では強力な電気モーターが駆動に使われるため必要がないから。おかげでハイブリッドモードでも加速は非常にダイレクト感に富む。高速域に合わせたギア比のため、万一バッテリーが空になったら、エンジンだけでの発進はキツそうだが、当然そうならないように電力マネジメントが行われるという。

バッテリーの容量は17.4kWhで、EV走行可能距離は最高90km。燃費は1リッター/100km、つまりそのままリッター当たり100kmという驚異的な数値となる。CO2排出量は23g/kmである。よりEVらしい面と、より高いダイレクト感というトヨタ式とは違った走りの魅力に、この環境性能を両立しているとなれば、これは相当魅力的だというのが実感だ。

さらに「iHEV」搭載の「A7スポーツバック」も試すことができた。iHEVとは、電気モーターによる駆動システムは持たないものの、アクセルオフ時にはコースティングだけでなくエンジン停止まで行うシステムである。

「iHEV」システムを搭載する「A7スポーツバック」。「iHEV」とは「intelligent hybrid electric vehicle」の頭文字をとったもの。
「iHEV」システムを搭載する「A7スポーツバック」。「iHEV」とは「intelligent hybrid electric vehicle」の頭文字をとったもの。 拡大
モーターによる駆動システムは持たないが、アクセルオフ時にはコースティングだけでなくエンジン停止、および回生を行う。
モーターによる駆動システムは持たないが、アクセルオフ時にはコースティングだけでなくエンジン停止、および回生を行う。 拡大

走行中のエンジン停止はハイブリッド車で慣れているため特に違和感はナシ。では効果はと言えば、これにナビゲーションシステムとの連動で高効率なドライブを可能とするPEA(予測型効率アシスタンス)を組み合わせることで、実験では12%の効率改善を実現できるという。

再生可能エネルギーから「e-gas」を生成

アウディはEVの開発にも積極的ではあるが、やはり中期的には主流はハイブリッドを含めた内燃機関だとあらためて定義している。それが、こうした積極的なパワートレイン開発につながっているわけだが、彼らはさらにその先、燃料をどうするかということにも真剣に取り組んでいる。

そんなわけで、続いて燃料ストラテジーに軽く触れたいと思う。実は個人的には、こちらの方がはるかに衝撃的であった。

「アウディe-gasプロジェクト」は、すでに発表済みなのでご存じの方も多いだろう。これは風力や太陽光など自然エネルギーによる発電の弱点である供給力のムラを解消し、これらのエネルギーを現実的に利用するための方策だ。

具体的には、風力発電で起こした電気を使って、水(H2O)を酸素(O2)と水素(H2)に分解する。そしてe-gasでは、その水素をさらにメタン化するのが特徴だ。つまりH2とCO2を組み合わせることで、H2OとCH4(メタン)を生成するのである。

ここでCO2を取り込めば、カーボンニュートラルが実現できる。またメタンすなわちe-gasは、貯蔵にも運搬にも天然ガス(CNG)の既存インフラがそのまま使えるし、何よりCNG車両用の非常に純度の高い燃料とできるのがポイントだ。

実際、アウディは2013年に北ドイツにこのe-gasプラントを立ち上げる予定。ここでは年間1000トンのメタンを生成できるという。これは2800トンものCO2を取り込み、1500台の「A3スポーツバックTCNG」を年間1万5000km走らせられるという。

自然エネルギーで発電をし、しかしそれを電気としてではなくガスとして使って自動車を走らせる。燃料としての運搬性に優れるのはもちろん、EVよりはるかに長い航続距離を確保できる。もちろんグリッドにはEVも、燃料電池自動車も接続することができる。驚きの、されど実に理にかなった発想である。

「A3スポーツバックTCNG」
「A3スポーツバックTCNG」 拡大
圧力タンクが2基、荷室フロア下に設置される。ここにもアウディのライトウェイトコンセプトが貫かれており、軽量なコンポジット材で造られているのが売り。
圧力タンクが2基、荷室フロア下に設置される。ここにもアウディのライトウェイトコンセプトが貫かれており、軽量なコンポジット材で造られているのが売り。 拡大
まず、風力などで発電した電気で水を分解し、水素を生成する。その水素に、家庭やクルマから排出された二酸化炭素を合成し、メタンガス(CH4)を作る。そのメタンガスを使って、天然ガス(CNG)車を走らせるという考え。
まず、風力などで発電した電気で水を分解し、水素を生成する。その水素に、家庭やクルマから排出された二酸化炭素を合成し、メタンガス(CH4)を作る。そのメタンガスを使って、天然ガス(CNG)車を走らせるという考え。 拡大
「e-gas」(メタンガス)生成のイメージ図。水素(H2)に二酸化炭素(CO2)を加える。
「e-gas」(メタンガス)生成のイメージ図。水素(H2)に二酸化炭素(CO2)を加える。 拡大
「e-fuel」は実用化を目指す現実のプロジェクトとして進められている。2014年には生産施設が完成する予定。
「e-fuel」は実用化を目指す現実のプロジェクトとして進められている。2014年には生産施設が完成する予定。 拡大
水とCO2と日光、そして藍藻(らんそう。シアノバクテリアという光合成を行う細菌)によってエタノールとアルカンを作り出す。
水とCO2と日光、そして藍藻(らんそう。シアノバクテリアという光合成を行う細菌)によってエタノールとアルカンを作り出す。 拡大
 
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CO2、水、日光で燃料を作る!?

そして「e-ethanol」と「e-diesel」。これらは天然ガスもバイオマスも使わずに作り出される新燃料である。必要なのはCO2、水、そして日光。これにある藍藻(らんそう)を加えることで、エタノールとアルカン(軽油の重要な主成分)を作り出す。

バイオマス貯蔵用の土地は要らず、特にきれいな水は必要はないので飲料水とのバッティングもない。当然、食糧と競合することもない。

しかし、生成されるバイオエタノール(e-ethanol)はガソリンと混ぜられてE85燃料として使うことができる。一方のe-dieselは石油由来の軽油と違って硫黄や芳香族を含まないこと、そして軽油の倍以上となる100前後というセタン価の高さが大きな特徴となる。そのまま使う手もあるが、これを混ぜれば、粗悪な軽油でも劇的にエミッションを改善できるから、利用方法にはたくさんの可能性がある。

このプロジェクトはアウディとアメリカのベンチャー、ジュール社が共同で行っている。今は研究段階ではあるが、すでにニューメキシコ州に実験プラントの建設が進んでおり、2014年には商業用としての生産施設も完成する予定だ。

アウディがこうして未来のモビリティーに関して巨額の投資をし、さまざまな実験を行い、新しいパワートレインを世に出しているのは、地球の数十年後の姿を見据えているからである。人口は70億人を超え、そのうちの半数以上が都市部に住む時代のモビリティーはどうあるべきか。彼らは自分たちの問題として真剣に取り組んでいる。

正直言って、最近何となく形骸化している感もあった「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」というスローガン。しかし今回のワークショップでは、まさにその言葉をありありと実感させられた。非常に駆け足でざっと紹介するだけになってしまったが、ライフスタイルうんぬんではないアウディの本当の実力そして哲学が少しでも伝わればと思う。

(文=島下泰久/写真=アウディ)

 
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