BMWアクティブハイブリッド7(FR/8AT)【海外試乗記】
世界最速ハイブリッド 2009.11.09 試乗記 BMWアクティブハイブリッド7(FR/8AT)……1280.0万円(国内販売価格)
「BMW7シリーズ」にハイブリッドモデルが登場。V8エンジンとモーターを併せ持つ大型セダンに“駆けぬける歓び”はあったのか? 本国ドイツで試乗した。
出血大サービス!
「いくらなんでも、やりすぎだろう」というのが正直な印象。最近ドドッとハイブリッド化に舵を切ったドイツの自動車界、まず先陣を受け持った「メルセデスSクラス」に続き、最強のライバルBMWからも、初のハイブリッド車(HV)が颯爽とデビューした。その名は「アクティブハイブリッド7 」。さっそく本拠地ミュンヘンに飛んで速攻試乗してみたら、なんとも呆れるほど速いのだ。さすがBMW というべきか、「走り」へのこだわりが深すぎる。
そういうわけで、このアクティブハイブリッド7(勝手に略してAH7)、何より運転が大好きなBMWファンから熱く歓迎されるのは確実。日本でも2010年の夏までに発売される見込みで、すでに価格も決まっている。ノーマルホイールベースのものが1280万円、リアシート部を14cm延ばしたロング仕様が1405万円。ベースとなった750i/750Liに対し、それぞれ80万円と75万円高というのは、高価なリチウムイオン電池などの内容を考えれば出血大サービスだ。
まず全体像を予習しておくと、パワー系の配置は前からエンジン→モーター→トルコン→AT→後輪という順番。つまり最もシンプルなパラレルHVで、エンジンとモーターは常にいっしょに回転し、走行中どちらかを完全に休ませるというパターンはない。エンジンは発進から走行のすべてを受け持ち、急加速など必要に応じてモーターが加勢するという組み合わせ。惰力走行や減速時には路面から後輪を介してモーターが逆駆動され、発電機に変身してバッテリーを充電する。私たち日本人の感覚では、HVというより「電動アシスト付きガソリン車」と呼ぶべきかもしれない。
「俊敏な走り」はゆずらない
そんな構成の一つ一つを見ると、やはり動力性能を重視した姿勢が明らかだ。たとえばエンジンも740iの直6ツインターボ(3リッター)ではなく750系の4.4リッターツインターボV8を使っているだけでなく、さらに高回転域をチューンして、407psから449psへと大幅に強化してある。「回転ゼロからググッと出るモーターと釣り合いを取るためです」と開発陣は説明しているが、両方のトルクを単純合計すると71kgm以上、つまり普通なら7000ccを超えるエンジンに匹敵する。
だから最初に報告したように、走りだす瞬間からとてつもなく速い。適当に踏むだけで「ビョオオオオオ〜ッ」と空気の壁を切り裂いて突進してしまう。アウトバーンではアッという間に220km/h を超え、周囲が止まっているように見えてビビった。それもそのはず、ゼロ発進から100km/h までの加速がわずか4.9 秒といえば、ポルシェ911と911Sの中間に当たるのだ。もちろんコーナリングの能力も高い。
その反面、ただただ速さに圧倒されるだけで、HVらしさを体感しにくいのも事実。クルマが完全に停止するまではエンジンが停止しないし、ちょっとでもブレーキペダルを放すとすぐ再始動してしまう。また全開加速ではモーターが助っ人に入り、そのエネルギー配分がダッシュボードの液晶モニターに表示され、その下に「e-boost 」の文字も出る。でも、これが純粋に電気の威力なのか、新開発の8段ATが自在にシフトダウンして低いギアを使っているためなのかは区別できない。
その画面から想像するかぎり、おそらくモーターよりエンジンとATの方が主役なのだろう。と言うのも、がんがん使ってもバッテリーの残量がなかなか減らないからだ。ちなみに、このバッテリー(幅22cm×奥行き23cm×高さ37cmの箱におさめられて重量27kg)はメルセデスSクラスのハイブリッド用と同じものだが、搭載方法は違う。エンジンルームに押し込んで、トランクを犠牲にしていないメルセデスに対し、こちらはトランクの奥に積んだため、少し容積が小さくなっている。「フロントを重くしすぎないように」という説明からも、俊敏な走りへのこだわりがわかる。
ハイブリッド戦争勃発か!?
注目の燃費は、アウトバーンをすっ飛んで5.9km/リッター、郊外を普通に流して7.9〜10.0km/リッター、ちょっと元気に走ると8.3km/リッターだった。ヨーロッパ流の計測方法でCO2排出量は219g/km 。ベースとなった750iより17%ほど改善された計算になる。これが日本の交通環境でどう出るかは予測できないが、レクサスはもちろんメルセデスより少し悪いかもしれない。でもBMWのファンなら、そんな差より性能を求めるだろうし、その点では文句なく世界最速のHVに違いない。
それに、あまり広く知られていないが、実はBMWはCO2削減に大きく貢献していて、AH7を出す前、すでに1995年から2008年までの間にCO2排出量を25%も減らしている。これはプレミアム・ブランドとしては最高で、鳩山内閣の大胆な目標も楽々クリアできそう。
その実績を踏まえて登場したAH7は、いわば小手調べの“マイルド”HV。その後には第二段階の“フル”HVであるX6アクティブハイブリッドも出番待ちとか。日独プレミアムHV戦争、いよいよ本格化しそうな雲行きになってきた。
(文=熊倉重春/写真=BMWジャパン)

熊倉 重春
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