BMWアクティブハイブリッド7 L(FR/8AT)【試乗記】
目下最強のハイブリッド 2010.07.28 試乗記 BMWアクティブハイブリッド7 L(FR/8AT)……1526万7000円
BMWがハイブリッドの高級セダンを作ると、どんなクルマができあがる? 都会の道で、その実力を試してみた。
プリウスではなくインサイトの仲間
たとえばグリルをちょこっと変えるとか、ヘッドランプをLEDにして未来的な目つき(?)にするとか、せっかくのハイブリッドなんだから、さりげなく特別感をアピールしたっていいと思うのだが、この「アクティブハイブリッド7」はあっさりとしたものである。車名のバッジが通常より多め(トランクリッドのほかにCピラーにもある)に貼られているぐらいで、特にこれといった“光りモノ”ものは見つからない。実は「ブルーウォーター」というボディカラーと、タービンを思わせるデザインの19インチホイールはハイブリッド専用なのだが、派手派手しいところがなく、オトナっぽくキメているので、専用と気付かない人も多いかもしれない。
エフィシェント・ダイナミクスをうたうビーエムだけあって、中身もエフィシエントだ。このクルマに搭載されているハイブリッドシステムは、BMW独自のものではなく、メルセデスと共同開発したもの。つまり「Sクラス ハイブリッド」と基本は同じなのだ。2台はモーターの出力(15kW=20ps)やリチウムイオンバッテリーのセル数(35セル)が同じなら、周辺のパーツを含めたシステム全体の重量も同じ。どちらも75kgでピタリと合っている。BMWとメルセデスといえば自他ともに認めるライバル同士だが、共通の敵(つまりレクサスだ)に立ち向かうときはしっかりスクラムを組み、最大の効果を狙うというわけである。
ハイブリッドシステムの主役であるモーターは、エンジンとトランスミッションの間に配置されている。主役はあくまでエンジンで、モーターはそれの補助に徹するパラレル式と呼ばれる構成をとるので、シリーズパラレル式の「トヨタ・プリウス」のようにモーターだけで走行することはできない。いわゆるマイルドハイブリッド車であり、「ホンダ・インサイト」の仲間といえる。
ビーエムならではのこだわり
しかしそこはビーエム、「駆けぬける歓び」を社是にかかげるメーカーだけあって、共同で開発したコンポーネントをそのまま組み込んでおしまい、というような手ぬるい仕事では終わっていない。彼らなりの解釈がしっかり入っている。まずただでさえ強力な「750i」の4.4リッターV8ツインターボユニットを42psも強化して449psとし、これに前述の20psのモーターを組み合わせて、パワーユニット全体のシステム出力では465psと71.4kgmという、スーパースポーツカーもかくやの数字を実現している。0-100km/hはわずか4.9秒。これは「M3」や「ポルシェ911カレラ」に匹敵する。
さらに単体で27kgあるバッテリーの搭載位置にもこだわりを見せる。「Sクラス ハイブリッド」ではエンジンルームに収めていたが、こちらではトランク内搭載として重量配分を50:50にしているという。車検証を見たら、前軸重1110kg、後軸1100kg、車重2210kgとあった。前後輪にマツダ・デミオが1台ずつ乗っかっているようなものかと思うと重いな……という話ではなく、計算したら前50.2:後49.8と、確かに彼らの言うとおりだった。
もっとも、さすがに車重2トン超になると、27kgを前輪に負担させたところで約1%の移動でしかないから、静的重量配分が50:50という言葉の意味は、3シリーズほどシビアではないだろう。また7シリーズの場合、仮にバッテリーをエンジンルームに搭載しようとしても、V8エンジン自体がかなりキャビン側に寄せられているので、スペースを捻出(ねんしゅつ)するのは困難と思われる。広大なトランクルームに飛び出したバッテリーボックスも、「46インチクラブ用のゴルフバッグなら4個収納可能」というが、なければないに越したことはない。そうでなければ、「Sクラス ハイブリッド」の苦労が報われない。
エフィシェント・ダイナミクスの延長線上にある
乗るともう明らかに独自の世界である。ハイブリッド車はダイエット食というか、食品成分的に十分なことはわかっていても、ガツンとこないのがどうもねえ……という人は、考えを改めざるをえないだろう。スロットルペダルを深く踏み込むと、もしやノーズが浮いているのか? と思えるくらい強烈な勢いで全長5.2mのロングボディが加速し始める。その時、モニターに映し出されたエネルギーフローでは、水色のラインが後輪にサッと伸びてモーターが駆動アシストを行っていることを示すと同時に「eBOOST」という文字が表示される。ビーエムの場合、「ASSIST」や「SUPPORT」ではなく「BOOST」(過給)という考え方なのだ。これならちょいギラ系の肉食男子でも満足するだろう。
そのエネルギーフローモニターを見ていて、ライバルの「Sクラス ハイブリッド」と違うなと思ったのが、駆動アシストのタイミングというか頻度である。「アクティブハイブリッド7」では深めにスロットルペダルを踏み込まないとアシストされないので、都市部の道をごく普通にさらりと流しているかぎり、水色のラインはほとんど後輪に伸びない。しかしSクラスはもっと頻繁に伸びて(こちらは赤いラインで表示される)、ハイブリッドであることを頻繁に主張する。
逆に減速時のエネルギー回収(回生)の方はSクラスに負けず劣らずこまめに行われ、アイドリングストップ機能もよく働く。そういう意味では「アクティブハイブリッド7」は、プリウスのような“電気自動車の入門編”的なクルマというよりも、あくまで内燃機関の効率を高めるエフィシェント・ダイナミクスの延長線上のクルマと見ることができる。
後輪アシストに個体差あり?
今回はまとまった燃費を測る時間はなかったが、カタログ値では「750i」の10・15モードが6.6km/リッターであるのに対し「アクティブハイブリッド7」が9.3km/リッター、JC08モードだと順に6.7km/リッターおよび9.1km/リッターと、35%から40%もの燃費向上がうたわれている。後輪アシストよりエネルギー回生の方がよほど燃費改善に効果的、ということのようである。
また、これはちょっと大事な余談なのだが、別の機会に乗った他の広報車は、今回のクルマより深々とスロットルペダルを踏み込まないと後輪をアシストしなかった。つまり個体差を感じたということだ。現実はアシストしているのにエネルギーフローモニターの表示が“辛かった”のでそう感じたのか、あるいは実際に後輪アシストの頻度に差があったのか(電気仕掛けのクルマだから、メーカーとしてはソフトウェア的に操作するのも難しくはないはずだ)、本当のところはわからない。ひとつ言えるのは、ドライバーはモーターがアシストする瞬間を、トルク変動や音などで察知するのは不可能ということである。
ガソリンエンジンは高回転で伸びがいいとか、ディーゼルエンジンは低速トルクが潤沢だとか、それぞれの動力機関にはそれぞれの特徴がある。しかし、いまやガソリンもターボ技術で低速トルクが太ったし、ディーゼルも気持ちよく吹け上がるようになった。技術の進歩は、従来のイメージをいかようにも変える。ハイブリッドもそろそろその階段を上り始めたのかもしれない。走りにどん欲なヨーロッパ勢が出てくると、“走らないハイブリッド”なんて、ますます過去のものになるだろう。いずれにしても、ハイブリッドはプリウスだけではない、ということだ。
(文=竹下元太郎/写真=峰昌宏)

竹下 元太郎
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