メルセデス・ベンツE350クーペ(FR/7AT)【ブリーフテスト】
メルセデス・ベンツE350クーペ(FR/7AT) 2009.09.29 試乗記 ……890.0万円総合評価……★★★★
メルセデスのEファミリーに、2ドア4シーターの「Eクラスクーペ」が加わった。セダンよりひと回り小さく、スタイリッシュに仕上がったクーペの、走りと機能をテストする。
セダンとは別モノ
2代続いた「CLK」の後釜として、メルセデス・ベンツが世に送り出すミディアムサイズのクーペが、このEクラスクーペだ。Eクラスを名乗るだけあって、デザインはもちろんのこと、パワートレインや装備などはEクラスセダンに準ずる一方、ステアリングやサスペンションといったベースの部分は、どちらかというとCクラスに近い。このEとCのいいとこ取りが、ひと回り小さく仕上がったボディとスポーティな足まわりを実現し、Eクラスセダンとは違う、クーペならではの軽快感をもたらしている。このクルマにEクラスセダンの2ドア版を期待すると「ちょっと違う」ということになりかねないが、別の“人格”を求める人には、むしろこのほうがうれしいはずだ。
そんなEクラスクーペにおける一番の見どころは、セダンよりお似合いのエクステリアだろう。角目のツインヘッドライトやエッジの効いたフォルム、ドアに分断されずに済んだ特徴的なリアフェンダーなど、クーペスタイルとの相性はバッチリ。颯爽たる姿こそEクラスクーペの魅力なのだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「Eクラスクーペ」は、2009年5月に欧州デビュー、同年7月に日本に上陸した、メルセデスのミディアムクラスクーペ。2ドア4シータークーペとしては、「CLK」の後継モデルとなる。
「Eクラス」を名乗りながらもシャシーのベースは「Eクラスセダン」ではなく「Cクラス」であるため、セダンよりもコンパクトなボディサイズを持つ。ただしエクステリアデザインの意匠や、安全装備などはEクラスセダンに準ずるものが与えられた。0.24というCd値もセールスポイント。
エンジンは3.5リッターV6(272ps、35.7kgm)と5.5リッターV8(387ps、54.0kgm)のラインナップで、いずれも7段ATが組み合わされる。
(グレード概要)
テスト車の「E350クーペ」はエントリーグレードながら、前席にはシートヒーター付きの本革シートが標準で備わる。さらに「ラグジュアリーパッケージ」装着のテスト車では、細かいシート調整が行えるマルチコントロールシートバックとシートベンチレーターが付与される。
安全面では、衝突時にボンネットが浮き上がり歩行者の衝撃を軽減する「アクティブボンネット」や、タイヤ空気圧警告システム、ハイ/ローを自動的に切り替える「アダプティブハイビームアシスト」などを標準装備。E350クーペに採用される235/45R17のタイヤは、新開発となる低転がり抵抗タイヤで、メルセデスの最新環境対応技術「BlueEFFICIENCY(ブルーエフィシェンシー)」の一翼を担うものだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
直線を多用するデザインのインストゥルメントパネルは、Eクラスセダンのイメージを受け継ぎ、質感、高級感ともにこのクラスの平均レベル。セダンと異なり、センターコンソールにシフトレバーが備わるため、広々とした印象はないが、クーペという性格を考えると、このくらいタイトなほうがいいと思う。
セダンに搭載される数々のドライバーサポート機能、たとえば、「アダプティブハイビームアシスト」や「アテンションアシスト」、「インテリジェントライトシステム」などは、このクーペにも標準装備される。
「COMANDシステム」に統合されるナビゲーションシステムは当然スタンダードの装備となるが、ビーコンVICSの受信機はアクセサリー対応。この価格帯のクルマだけに、地デジよりもこちらを標準化してほしい。
(前席)……★★★★★
Bピラーのないクルマだと、シートベルトに手を伸ばすのが面倒な場合が多いが、このEクラスクーペでは「オートマティックベルトフィーダー」がベルトを手前に送り出してくれるので便利。シートベルト装着後に、ベルトの弛みを自動的に巻き取ってくれるのは、セダン同様である。
オプションの「ラグジュアリーパッケージ」が装着される試乗車は、サイドサポートやランバーサポートの調節が絶妙なことに加えて、シートベンチレーターがレザーシート特有のムレを解消してくれるのがいい。パッケージは30万円とそれなりの価格だが、オーダーして損のない装備といえる。
(後席)……★★★★
BピラーのないEクラスクーペは、後席に座らされてもさほど閉塞感を覚えないのがうれしい点。そのうえ、後席からもサイドウィンドウの操作が可能で、窓ガラスが完全に下がるのも見逃せない。
後席スペースそのものは決して余裕があるわけではないが、ヘッドルーム、レッグスペースとも必要十分で、大人でもあまり窮屈な思いをせずに過ごせるし、乗り心地も悪くなかった。
(荷室)……★★★
ボディサイズ相応の広さを誇るEクラスのラゲッジスペース。ふたり分の荷物なら余裕でのみ込み、さらに後席を分割して倒せるので、いざというときに長尺物を搭載することも可能だ。トランクルーム内のレバーにより、後席のロックが解除できるのも便利。荷室の床下にはスペアタイヤが収まっていて、小物なら余ったスペースに詰め込めそうだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
3.5リッターV6エンジンと7段ATの組み合わせは、Eクラスセダンと同じ。当然、性格も変わらず、低回転からトルクに余裕があるし、常用する回転域でストレスを覚えることもない。とりたててスポーティではないものの、回転を上げれば3500rpmを超えたあたりから勢いが増し、期待どおりの加速が得られる。エンジン、トランスミッションともにスムーズな動きを見せるのも、メルセデスならでは。セダンに比べると加速時のノイズや振動は大きめだが、とくに気になるほどではない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
以前E350セダンを試乗したとき、しなやかに動くサスペンションが終始快適な乗り心地を示したことに感心したが、このクーペはセダンと違って、やや硬めに味付けられているせいか、セダンほどのマイルドさはなく、路面によってはショックを拾うこともあった。そのかわり、明らかにセダンより身のこなしが軽快で、40kgという重量差以上にボディが軽く思えた。
セダンよりスポーティとはいえ、乗り心地はおおむね快適。日常の足に使っても、辛い思いはしないはずだ。高速道路での直進安定性はまずまずで、フラット感もまあ不満のないレベルである。
一方、ワインディングロードに持ち込むと、コーナリング時にはっきりとロールを示し、ハンドリングもとくにシャープというわけではない。こういった場面でスポーティなハンドリングを求めるなら、「ダイナミックハンドリングパッケージ」を含む「AMGスポーツパッケージ」を選ぶべきか?
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2009年9月1日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2009年型
テスト車の走行距離:3659km
タイヤ:(前)235/45R17(後)同じ(いずれも、コンチネンタル ContiSportContact)
オプション装備:ラグジュアリーパッケージ(本革巻ウッドステアリング&シフトノブ+前席マルチコントロールシートバック+前席シートベンチレーター+パドルシフト)=30.0万円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:316.7km
使用燃料:36.0リッター
参考燃費:8.8km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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