フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/6AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/6AT) 2009.09.28 試乗記 ……395万4000円総合評価……★★★
6代目「ゴルフ」に、人気のスポーティグレード「GTI」が加わった。最新ゴルフの造りと走りを河村康彦がテストする。
ドライビング流儀の変革
実用的なだけではなく、スポーティなゴルフを創りたい−−そんなエンジニアの夢から生まれたという初代「ゴルフGTI」が世に生を受けたのは1976年のこと。以来すでに33年。そしてその時間の流れの中に、6代のモデルが提案されてきたこの「GTI」という記号を持つブランドは、弟分である「ポロ」、さらにはフォルクスワーゲンの末っ子モデルとして生まれた「ルポ」にまでその血統を分け与えながら、コンパクトなスポーツモデルとしての地位を確立させてきた。
そうはいっても、他のモデルと同様にゴルフGTIにも、長い時の流れがそれなりの成長の過程をもたらしてきたことは当然だ。それを象徴するのが、ボディサイズとそこに搭載されるエンジン出力の変遷。たとえば初代モデルでは3.7m級だった全長は、いまや50cmもの拡大が図られた計算になるし、110psだったエンジン出力も最新モデルでは、そこからさらに100ps以上ものアップ。そもそもはスペース効率重視で考案された四角いボディを、限られた排気量のエンジンをガンガン回してスポーティに走らせる……というのが初代ゴルフGTIに固有だったドライビングの流儀。しかし、そんな走りのスタンスも、“今は昔”のハナシ。いわゆる2ボックスハッチバック車中では、最大級のボディと200psを遥かにオーバーする最高出力を発するターボエンジン搭載の最新モデルでは、このあたりの作法にも変革が求められるということなのかもしれない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「GTI」は、初代「ゴルフ」以来設定されるスポーティグレード。現行モデルは6代目となり、日本では2009年8月に発表された。フロントグリルの赤いラインや、シート生地にチェック柄が配されるなど、伝統のディテールは随所に見ることができる。
ベースとなる「ゴルフ」同様、基本的なプラットフォームは先代を引き継ぐが、11ps増しの2リッター直噴ターボエンジンや、電子制御式ディファレンシャルロックの「XDS」などを新たに採用。ゴルフとしては初採用となる、アダプティブシャシーコントロール「DCC」もオプションで用意される。
13.0km/リッター(10・15モード)の燃費や、ユーロ5適合の排ガス性能など、時代に応じた環境対策も施された。
(グレード概要)
2リッター直噴ターボの「TSI」エンジンは、最高出力211ps/5300-6200rpm、最大トルク28.6kgm/1700-5200rpmを発生。日本市場に用意されるトランスミッションは、2ペダルMTの湿式6段DSGのみとなる。前マクファーソンストラット、後4リンクというサスペンション形式はスタンダードグレードと同型だが、GTI専用にチューニングされ、フロントを22mm、リアを15mmローダウン化される。リアスタビライザーもこれに応じて最適化された。ダイナミックコーナリングライト付きバイキセノンヘッドライトやネット付きトノカバーなどは、GTI専用装備となる。
テスト車には、HDDナビ「RNS510」と、iPodなどの携帯音楽プレイヤーを接続できる「MEDIA-IN」、ETC車載器がオプション装着される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
角張ったダッシュボードにこれもまた“四角い弁当箱”のようなメータークラスターを載せるなど、ボディプロポーション同様に異彩を放った初代モデルのインテリア。比べれば最新モデルのダッシュボード周りに「個性が薄い」印象が漂うことは否定できない。が、メーター類の視認性やスイッチ類の操作性が非常に高いのは事実。自動防眩ルームミラーやドアミラー鏡面のヒーター機能、リアビューカメラなど、全ての運転操作の基本となる、視界の確保に重きが置かれているのは好ましい。一方で、ステアリングホイール上に操作ロジックが複雑なスイッチ類を多数並べるのは感心できない。
(前席)……★★★★★
GTIの歴史を知らない人から見れば「どうして今どき……」と言われかねない、クラシカルなチェック柄ファブリックを採用のフロントシートは、ハイバックのヘッドレスト部分に「GTI」の文字が刻まれた専用デザイン。見かけ上はサイドサポートの張り出しが大きいが、乗降性は良好。長時間の連続走行でも疲れ知らずの面圧分布も優秀だ。ヒーター付きで8ウェイの電動調整機構が組み込まれたレザーシートは、オプション設定される。
(後席)……★★★★
前席同様のチェック柄シートが標準仕様。見た目は特に変哲のない普通のシートだが、着座感はしっかりしていて日本のライバルに差をつける。全3名分の3点式ベルトが備わるのはもちろん、左右席分にはフォースリミッター付きのテンショナーやサイドエアバッグを標準装備するなど、安全性向上にも知恵とお金がかかっている。
(荷室)……★★★★★
驚くほど深い位置にあるフロアは、特大サイズのスーツケースを楽に平積みできる面積を確保する。日本での常識的な使われ方を考えれば過剰と思われるほどのボリュームだが、大きいことで損をすることはない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
「ダウンサイジング・コンセプト」がじわじわと広がるVW車だが、このモデルは旧来どおりのターボ付き2リッター直噴エンジン(設計は新しい)を搭載。1.4トンの車両重量に211psと28.6kgmのパワー、トルクは十二分で、6段デュアルクラッチトランスミッション「DSG」の賢い働きと共に、息の長いパワフルな加速を実現する。タコメーター上のレッドラインは6200rpmと低めだが、DSGのプログラムは、なぜかそれを大幅に超えた6600rpmで自動シフトアップという設定。実際、そんなポイントまで全くストレスなく回るので、前出レッドラインは不当に低いという印象アリ。
日本仕様車のトランスミッションはDSGに限られる。その動作の巧みさは認めつつも、ドライビングプレジャーの演出からは、MT仕様の導入も検討されて然りでは?
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
日本仕様車のフットワークの設定は2種類。標準がコンベンショナルサスペンション+17インチシューズの組み合わせで、オプションでは、電子制御式の可変減衰力ダンパー「DCC」+18インチシューズという組み合わせも用意される。前者である今回のテスト車は、正直なところ「驚くほどの感動」は味わわせてくれなかった。常に強めの揺すられ感が伴う乗り心地は少々粗く、微舵操作に対する応答もあんまり正確とは思えなかったからだ。
一方、別機会にテストをした前述後者の仕様でスポーツモードを選択すると、ハンドリングの正確さは明確に増し、「GTI」の記号に、よりふさわしい動きを得ることができた。ただし、こちらはサスペンションの動きのしなやかさは標準仕様を上回るものの、タイヤが拾う細かな入力はかなり直接的。というわけで、おそらくベストはDCC+17インチに違いない。この組み合わせの設定が是非ともほしいところだ。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2009年8月19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2009年型
テスト車の走行距離:5184km
タイヤ:(前)225/45R17(後)同じ(いずれも、ミシュラン PRIMACY HP)
オプション装備:HDDナビゲーションシステム「RNS 510」+MEDIA-IN&ETC+リアビューカメラ=29万4000円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:259.4km
使用燃料:23.4リッター
参考燃費:11.1km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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