第100回:小学生が続々フェラーリ&メルセデスで運転デビュー。その裏にある深〜いワケ?
2009.07.18 マッキナ あらモーダ!第100回:小学生が続々フェラーリ&メルセデスで運転デビュー。その裏にある深〜いワケ?
「17歳で運転免許」なるか?
イタリア国会では道路交通法の改正案が審議されている。法案が通ると、一部の高速道路の制限速度が、従来の130km/hから150km/hに緩和される。
同時にこの法案、「すでに原付免許を取得していて、かつ運転経験10年以上のドライバーが同乗する」という条件付きではあるが、免許取得年齢を18歳から17歳に引き下げるというのも話題になっている。
最近はどうか知らないが、ボクが子供の頃は、早く免許が取得できる年齢になりたくて仕方がなかったものだ。
小学生の頃には、すぐに免許をとって、最初のクルマはフォルクスワーゲン(初代)シロッコと決めていた。何のことはない。東京多摩地区在住だったボクにとって、自動車雑誌『CAR GRAPHIC』でもっとカッコいいクルマをたくさん知ってはいても、近くに輸入車販売店がヤナセしかなかったのである。
我が家にはミハエル・シューマッハーの実家と違い、カート場などなかった。それに、そもそもボク自身は閉鎖されたサーキットなどではなく、広い世の中を走ってこそ運転だと思っていた。
しかし免許取得前にクルマの運転などというのは、たとえ公道でなくてもご法度の風潮が、当時はあった。だから「クルマを運転してみたい」などとは、親の前では口に出しにくいムードが漂っていた。
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スーパーカードライブ体験
ところが、たとえ小学生でもスーパースポーツカーを運転できるという企画が、イギリスで始まっている。ウエストミッドランズの「6th gear experience(6thギア・エクスペリエンス)」という会社が企画しているものだ。
もともと大人向けのスーパーカードライブ体験を実施していたところ好評だったので、子供版も開始したらしい。
用意されるのはいずれもシーケンシャルシフトの「フェラーリ360モデナ」「ランボルギーニ・ガヤルド」「アストン・マーティンDBS」である。
運転できる条件は、フェラーリが身長4フィート10インチ(約124.9cm)以上、あとの2台が5フィート(約152.4cm)だ。
インストラクターがパセンジャーシートに同乗し、テストトラックの中、15分の体験ドライブを楽しめる。
会場は英国内の4カ所。運転証明書も交付される。料金は89ポンド(約1万4000円)である。オプションとして、インストラクターによるデモ走行同乗や、記念写真撮影も用意されている。
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子供にクルマを運転させるワケは?
もう少し違う観点から、子供にクルマを触れさせようという企画もある。
メルセデス・ベンツの英国法人が企画しているドライビングアカデミーのひとつ、「Kids’ Driving Experiences(キッズ・ドライビング・エクスペリエンシーズ)」である。メルセデス・ベンツがパトロンを務めるブルックランズ・サーキットに隣接したスキッドパッドで、子供に「メルセデスAクラス」のステアリングを握らせる。
特製シートが装着されているが、とりあえず体格制限はあって身長1.5m以上、年齢は10歳以上が条件だ。
なぜ免許取得年齢前の子供に運転体験を?
インストラクターのネフ・プーリー氏に聞いてみると、彼は8歳でカートに乗り始めたルイス・ハミルトンを例に出して
「子供は小さいほど習熟度が高いからです」と答える。
そして彼は「楽器だって、小さいほど早いでしょう?」と付け加えた。
そのことは子供時代、3歳で弾き始めた子がウヨウヨいたヴァイオリン教室に、6歳になってから放り込まれて苦労したボクには痛いほどわかる。
「やがて免許を取得する17、18歳になると、受験をはじめ、考えることが多すぎてしまうのです」
そうだよなあ。その頃になると、女子のことも大いに気になるし、というのもボクの感想である。
プーリー氏は「キッズ・ドライビング・エクスペリエンシーズ」の目的について、さらに説明する。
「今日の車両はABSやESPの恩恵により、状況に応じてステアリングを的確に操作することで、障害物を避けられる可能性は高くなっています。その認識がないと、避けられるチャンスがあることを知らず、そのまま先行車に追突してしまったりするのです。それから、運転中、会話やラジオの操作に気をとられることが、いかに危ないかも、体験して学びます」と言う。
携帯電話片手どころか、メールまで打っているバカヤローなドライバーはヨーロッパにも多い。そうした中、大変有意義なレッスンである。
料金は30分の個人レッスンで40ポンド(約6000円)から。5時間の個人レッスン+1時間のセミナーを組み合わせた「Kids’ Driving Package」もある。免許取得までレッスンを続けられるよう、上級コースとして15歳から17歳を対象とした「プレ・ロード・セッションズ」も用意されている。
トレーニングの模様は終始車載カメラのSDカードに記録されていて、終了後保護者と確認できる。
なお、このメルセデスのトレーニングにはマニュアル・トランスミッション車も用意されている。
その昔クラッチ操作の覚えが悪く、この世でクラッチを発明した人を恨んだボクである。そして後年、GMの元デザイン担当副社長チャック・ジョーダンによる「子供の頃、なぜクラッチが必要なのかわからなかった」という回想録を読んで、ああオレだけじゃないんだと胸をなでおろした。
だから、クラッチ操作のできる子供とは、えらく尊敬してしまう。
しかし、メルセデスの上達進度を記録する「ログブック」において、「クラッチ操作ができる」は8段階のうち、真ん中に近い4段階目に到達して、やっと出てくる項目だ。
その前に、「シートベルトやシート・アジャストメントがいかに重要か?」「タイヤのダメージが与える影響」といった、安全や命にかかわるレッスン項目がずらりと並んでいるのだ。実にメルセデスらしい企画といえまいか。
カタログやパンフレットでは往年より安全に対する啓蒙的メッセージがソフトになった感のあるメルセデスだが、その伝統はかくも続いているのである。
しかしながらこうしたプログラムに参加した子供たちというのは、大人になってから「最初に乗ったクルマは?」と聞かれたとき、「ランボ」とか「アストン」とか「メルセデス」とか答えるのだろうな。
聞いた瞬間思わず「生意気だーッ」と怒鳴ってしまうに違いないボクは、初代トヨタ“山崎務”クレスタ教習車が、人生最初に運転した自動車だった……。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA/写真=6th gear experience)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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