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【スペック】全長×全幅×全高=4425×1695×1495mm/ホイールベース=2600mm/車重=1040kg/駆動方式=FF/1.2リッター直3DOHC12バルブ(79ps/6000rpm、10.8kgm/4400rpm)/燃費=22.6km/リッター(JC08モード)/価格=169万8900円(テスト車=174万6150円/SRSカーテンエアバッグシステム=4万7250円)

日産ラティオ G(FF/CVT)【試乗記】

なんとかならんもんかねえ。 2012.11.07 試乗記 佐野 弘宗 日産ラティオ G(FF/CVT)
……174万6150円

8年ぶりにフルモデルチェンジを果たした「日産ラティオ」。世界150カ国以上で販売されるコンパクトセダンの仕上がりを、上級グレードで試した。

地味に売るにはワケがある

なにはなくとも、これはあの「トヨタ・カローラ」の唯一無二のライバルである。1200台という月間販売目標も、ボディー形式が1種類であることを考えれば、希少なカルト商品というほどでもない。そんな新型「ラティオ」は、しかし、やけにヒッソリと売られている。

「ラティオは新規需要を積極的に開拓するクルマではありません」と断言する日産の担当氏は「既存のお客さまのところに営業マンが出向いてご説明する。あるいはディーラーに来ていただいたときに買い替えをご提案する。ラティオについては、そういう昔ながらの販売法がメイン」と説明してくれた。だからテレビCMは最初から打たれないし、派手なキャンペーンも企画されないのだ。

現在の日本で、この種のコンパクトセダンの需要は大きく二つしかない。
ひとつが「ウチのクルマはこういうものと心に決めた人」の代替需要であり、ラティオではそうした個人ユーザー平均年齢は65歳を超えるという。
もうひとつは営業車需要であり、中でも「小さくて小回りがきくに越したことはないが、セダンのカタチをしてないといけない」という業種。代表的なのは不動産業や医薬・医療関係だそうだ。

フロントシート。全車、表皮はブラックのトリコットのみとなる。
フロントシート。全車、表皮はブラックのトリコットのみとなる。 拡大
流麗なシルエットが自慢の「ラティオ」。「見るからに中が広そうなエクステリアを目指してデザインした」とは開発者の弁である。
流麗なシルエットが自慢の「ラティオ」。「見るからに中が広そうなエクステリアを目指してデザインした」とは開発者の弁である。 拡大
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後席と荷室の広さに驚く

日本のコンパクトセダン市場はもはやそういう世界なので、それをビジネスとして成立させられるのは今ではトヨタと日産だけ。しかも、トヨタですらカローラと「ベルタ」を統合したくらいだから、新型ラティオも徹底して効率的な商品企画となっている。

すでにご承知の人も多いはずだが、日本で販売される新型ラティオも「マーチ」と同じくタイ製だ。グレードは4種あるが、パワートレインやシャシーのチューニングも1種類のみで、メーカーオプションも数えるほど。試乗車に装着されていたフォグランプやナビもディーラーオプションである。

新型ラティオのボディーサイズやホイールベースは、先代モデルにあたる「ティーダラティオ」とほぼ同等だが、新しいVプラットフォームが採用されたおかげで室内もトランクも広い。特に後席レッグルームはちょっとビックリするくらいで、前後ともに平均的体格の人が座れば、後席で足が完全に伸ばせる。トランクもカローラより大容量だ。

ダッシュボードデザインはマーチに酷似するが、上級モデルのセンターパネルは専用デザイン。中央には立派なルーバー式の通風口を備えており、このクラスの日本車にはめずらしく、そこに開閉シャッターも付くのは、エアコン非装着での使用も想定しているからか。

ラティオは日本でこそカルト一歩手前(失礼!)だが、その実体は中国やアジア、北南米、欧州の一部……で大量に売られる日産屈指のグローバルカーである。

上級グレード「G」の、運転席まわりの様子。エントリーグレードでは、センタークラスターや中央エアコン吹き出し口が、丸みを帯びた別形状のものになる。
上級グレード「G」の、運転席まわりの様子。エントリーグレードでは、センタークラスターや中央エアコン吹き出し口が、丸みを帯びた別形状のものになる。 拡大
身長178cmの筆者が後席に腰掛けたところ。上級セダン「ティアナ」に匹敵する室内長が確保されているという。
身長178cmの筆者が後席に腰掛けたところ。上級セダン「ティアナ」に匹敵する室内長が確保されているという。 拡大
荷室の容量は、先代モデルにあたる「ティーダラティオ」に比べて23リッターアップの490リッターが確保される。9インチのゴルフバッグならば4つを飲み込む。
荷室の容量は、先代モデルにあたる「ティーダラティオ」に比べて23リッターアップの490リッターが確保される。9インチのゴルフバッグならば4つを飲み込む。 拡大

活発にして静か、だが……

新型ラティオで走ってみると、全体の剛性感は高く、リアスタビリティー優先の安定志向。ステアリングの中立付近にカチッと手応えがあって、直進性も問題ない。マーチよりノイズ対策が徹底されており、静粛性も高い。
パワートレインは基本的にマーチと共通。スロットルを“早開け”にしたピックアップ重視の特性になっているだけだが、マーチより車重が100kg近く重いとはあまり感じられない。1〜2人乗車で市街地や都市高速を走るかぎり、意外なほど活発だ。

ただ、運転フィールや乗り心地については、スタビライザーレスの14インチタイヤ……という割り切った仕様なので、実用車の域を出ない。ステアリングのフィードバックは希薄で、ちょっと残念。特別にスポーティーに走る必要はないけど、こういう「さしたる思い入れのない人が乗るクルマ」こそ、運転の実感が得られるチューンにしていただかないと、日本人の平均的な運転技量レベルは落ちるいっぽう……だと私は思う。まあ、これはラティオというより日本車全体の問題なのだけれど。

ただ、マーチの海外仕様や「ノート」などの経験からすると、Vプラットフォームの基本能力は低くない。海外で販売される1.6リッター車やスポーティーモデルはそれなりに味わい深いはずと確信するが、それを日本で売れというのも、日本市場の現状を考えると酷な注文だろう。なんとかならんもんかねえ。

前記のように新型ラティオは全長も先代ティーダラティオとほとんど同じだが、フロントオーバーハングがバッサリと短くて、その代わりにリアのそれが長い。
基本プロポーションはティーダラティオとは大きく異なる。ゆるやかに弧を描くルーフラインは日産ブランドの国際フラッグシップ「ティアナ」に通じる伸びやかなモチーフで、実物のラティオのデザインは独特のオーラを放つ。今回の試乗でも、何度となく、街ゆく人に振り返られた。

新型ラティオは北米では若者のためのスポーティーコンパクトであり、アジアではハッチバックを卒業した若き成功者の証しである。つまり、このクルマは国際的にはけっこう若くてアツいユーザーに向けた商品であり、すでに北南米ではこのデザインがウケて近年にないヒット作となっているという。

シツコイようだが、そんな新型ラティオが日本ではヒッソリと売られる。この状況、ホント、なんとかならんもんかねえ。

(文=佐野弘宗/写真=峰昌宏)

高速道路を走行する「ラティオ」。長さと幅は先代「ティーダラティオ」とほぼ変わらないが、全高は40mm低められている。
高速道路を走行する「ラティオ」。長さと幅は先代「ティーダラティオ」とほぼ変わらないが、全高は40mm低められている。 拡大
最上級グレードでも、ホイールは、スチールホイールにカバーをかぶせるタイプ(写真)。アルミホイールはディーラーオプションとして用意される。
最上級グレードでも、ホイールは、スチールホイールにカバーをかぶせるタイプ(写真)。アルミホイールはディーラーオプションとして用意される。 拡大
エンジンは、自然吸気の1.2リッター直3「HR12DE」ユニットのみ。「マーチ」や「ノート」に採用されているものと同じである。
エンジンは、自然吸気の1.2リッター直3「HR12DE」ユニットのみ。「マーチ」や「ノート」に採用されているものと同じである。 拡大
 
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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