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【スペック】全長×全幅×全高=4250×1790×1290mm/ホイールベース=2495mm/車重=1600kg/駆動方式=FR/3リッター直6DOHC24バルブターボ(306ps/5800rpm、40.8kgm/1300-5000rpm)/価格=695.0万円(テスト車=733.7万円/マルチスポークスタイリング293アロイホイール=12.6万円/アダプティブMサスペンション=20.1万円/アッシュウッドトリム=2.5万円/スルーローディングシステム=3.5万円)

BMW Z4 sDrive35i(FR/7AT)【試乗記】

気分がアガる 2009.06.02 試乗記 島下 泰久 BMW Z4 sDrive35i(FR/7AT)
……733.7万円

BMWの2シーターロードスター「Z4」が第2世代へと移行。リトラクタブルハードトップを得たことで、変わったものは? 新型の魅力を探る。

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見た目はパーフェクト

新しいZ4はリトラクタブルハードトップを採用する。最初にそう耳にした時点では、不安が無かったわけではない。プロポーションには制約が生まれるだろうし、ソフトトップ特有のエレガントな雰囲気こそが、ロングノーズ・ショートデッキという、古典的ロードスタールックのZ4にはよく似合うと思っていたからだ。

それだけに、実物と出会った際の第一印象が、とてもポジティブなものだったのは嬉しかった。その姿はいかにもZ4らしく、それでいて新鮮味に満ちていて、なにより開けても閉めても理屈抜きにカッコ良い。その抑揚に富んだボディラインから、さぞ大きくなってしまったのだろうなと思いきや、全長4250mm×全幅1790mm×全高1290mm(アダプティブMサスペンション付きの試乗車は1280mm)と、全長が150mm伸びた以外、サイズもほとんど変わっていない。とりあえず外観については、仕事はパーフェクトに成し遂げられたと言えるだろう。

室内の雰囲気も悪くない。円形に並べられたスイッチ類など、デザインは細部まで凝っており、クオリティ感もハイレベル。8.8インチという特大のモニターもインパクト大だ。なにしろロードスターにとって、インテリアはエクステリア。これは大事なポイントである。

居住空間はそれなりにタイトだ。特にセンタートンネルに圧迫されて、左足の置き場が狭いのは気になる。逆にありがたいのは、シートの背後にブリーフケースなどを載せられるだけの場所が確保されていることである。2人で乗る時にも、これなら困らない。


BMW Z4 sDrive35i(FR/7AT)【試乗記】の画像 拡大
シートには、日射による温度上昇を抑える「サンリフレクティブテクノロジー」レザーが用いられた。
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ゆっくり走らせても楽しい

まずはトップは閉じたままで走り出す。Aピラーが太く視界を遮る以外、取り回しに大きな不満は見当たらない。ソフトトップだった従来のZ4より、横や後ろの視界が開けていること、そしてやはり静粛性が増していることなどは、先代のオーナーならすぐに気付くはずだ。

続いてはトップを開けて。操作自体はワンタッチ。複雑な開閉機構は、しかし至極スムーズに、約20秒で動作完了する。ただし、その複雑さゆえ走行中に開閉することは叶わない。せめて4〜5km/hくらいまででも動作を許容してくれると赤信号の際、完全に停止する前から開け始めることができて助かるのだが。

開けてみて気付くのは、室内への風の巻き込みが大きいことだ。100km/hくらいなら無風とすら思えるクルマも多い昨今だけに、おそらく敢えてこうしているのだろう。せっかくのロードスター、風を感じて走ったら? ということか。まあ自分はいいとして、髪の長い人を乗せる時には、一言断っておく必要はありそうである。

トップを開けていると、直接的に耳に届くエンジンサウンドと排気音がさらに昂揚感を高める。試乗した「sDrive35i」が積む直列6気筒3リッター直噴ツインターボエンジンの全域で力強いトルクと心地良い回転フィーリングと、7段DCTのダイレクトなレスポンスとが相まって、街中をゆっくり走らせていても楽しい。M3では不満も覚えたDCTだが、熟成が進んだのか、あるいはM3とは乗る時の心構えが違うという部分もあるのかもしれない。


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ルーフは2分割され、トランクルームに格納される。
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太鼓判を押せない理由

標準装備のダイナミックドライビングコントロールによってステアリング、スロットル、変速ロジックを3段階に切り換えることができる。「スポーツプラス」では相当シャープな特性になりDSCの介入も制限されるが、段差を超えただけでもスロットルが過敏に反応してしまうこのモードは、さすがにやり過ぎ。「スポーツ」で十分だろう。DSCは単独でも設定変更が可能だ。

乗り心地は、普通に走っている限りは上々。これには、4輪の減衰力を自動的に独立して調整する、オプションのアダプティブMサスペンションの効果も大きいに違いない。しかしコーナリングに関しては、まだ満足できなかった。あるコーナーに対して、これぐらいかな……とステアリングを切り込んだつもりが舵角が足りず、あとで切り足さなければいけないかと思えば、次のコーナーでは切り過ぎてしまったりと、どうも感覚どおりにいかない。うまく決まれば、リア寄りの前後重量配分も相まって気持ち良く曲がっていけるのだが、そこに持っていくのがどうも難しいのだ。アダプティブMサスペンションのせい? と疑いつつも、今回は未装着車には乗れなかったので断言は避けておく。また、オープン状態で路面のギャップを強行突破すると、結構大きく横っ飛びするのも要改善と言っておきたい。

個人的には、肝心要な、この走りの部分が引っ掛かって太鼓判を押すには至らないのだが、しかしデザイン、快適性、なによりスタイリッシュさという点で、Z4が明らかに進歩を遂げたことは間違いない。荷物も沢山入るようになったし、ともにある日常を想像して、ロードスターとしては久しぶりに気分がアガッた1台である。

(文=島下泰久/写真=郡大二郎)


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標準は17インチとなるが、テスト車はオプションの18インチホイールを装着する。タイヤは前後ともランフラット。
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荷室容量は、ルーフクローズ時で310リッター。オープン時は180リッターとなる。
クリックすると、ルーフオープン時のトランクルームがごらんいただけます。
荷室容量は、ルーフクローズ時で310リッター。オープン時は180リッターとなる。
クリックすると、ルーフオープン時のトランクルームがごらんいただけます。 拡大
島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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