プジョー308CC プレミアム(FF/4AT)【試乗速報】
経験のなせるワザ 2009.05.18 試乗記 プジョー308CC プレミアム(FF/4AT)……420.0万円
まもなく日本での販売が開始される「プジョー308CC」に初試乗。そのスタイルと存在感に強烈な個性を感じさせる新型オープンモデルの走りやいかに。
ダイナミックなスタイル
昨年秋に「プジョー207CC」を愛車に迎え入れて以来、クーペ・カブリオレの魅力を再認識している。開ければオープンカーの開放感、閉めればクーペの快適性が享受できる「ひと粒で2度おいしい」キャラクターは、高温多湿で駐車場事情に恵まれない日本向きとさえ言えるのではないか。
となると気になるのが、フランスでは昨年発表された「308CC」だ。207CCのコンパクトネスは魅力だが、反面、後席はプラス2以下で、おとな4人乗っての移動は難しい。しかもハッチバック同士で比べると、308のほうがプジョーらしい乗り味を色濃く残していて、その点も興味を抱く理由だった。
その308CCに、6月1日の日本発売を前に、試乗会で対面した。先代モデル「307CC」に比べ75mm長く、60mm広く、5mm低くなったボディは、おっとりしたたたずまいの307CCとは逆に、かなりダイナミックだ。
尻下がりのラインがスポイラーの装着で矯正され、ランプを両端に寄せてワイド感を強調したリアビューは、数字以上の迫力を感じさせる。放物線状のプレスラインを入れたサイドビューや「GTi」と同じフロントマスクも、かなり大胆だ。
見られることにコダワル
キャビンはセンターパネルをピアノブラックとし、ステアリングやメーター、ドアトリムも308CC専用とした。それ以上に目立つのはハイバックタイプのシート。首まわりを温風で暖めるネックウォーマーのルーバーを巧妙に内蔵し、後席も同じデザインでそろえている。表皮はベースグレードの「プレミアム」でも本革で、上級の「グリフ」ではインパネやドアトリムもレザーで覆われる。オープンカーが見られる乗り物であることを熟知したプジョーらしい粋な演出だ。
ルーフは307CCと同じシンプルな2分割で、開閉時間は20秒と5秒短くなった。ヒップポイントがハッチバックより15mm低い前席は、プジョーとしては大柄な造り。後席は背もたれが立ち気味だが、ルーフを閉じた状態でも身長170cmの自分が座れる。
トランクはスペアタイヤを廃したおかげで、オープン時226リッター、クーペ時403リッターと先代より広くなった。4つ折りのウインドデフレクターをスペアタイヤ格納跡地にきっちり収められるのは、CC作りの経験豊富なプジョーならではの技だ。
活発な走り、しっとりした乗り心地
エンジンは、ハッチバックと同じ1.6リッター直噴ツインスクロールターボで、シトロエンの「C4ハッチバック/ピカソ」にも使われている。愛車の「207CC GT」も基本的に同じユニットだ。トランスミッションは4段ATのままである。
1.6t弱の車重は、ハッチバックより200kg、207CCより150kgほど重い。これでしっかり加速してくれるのか、疑問を持つ人もいるだろう。でも実際は、100kgほど軽いボディに2リッター自然吸気を積んだ307CCより活発に走る。
アイドリングのすぐ上から過給を開始し、1400〜3500rpmという幅広い領域で、24.5kgmの最大トルクを発生するウルトラフレキシブルな特性が、ギアの少ないハンデを巧妙にカバーしてくれるからだ。
BMWが開発に絡んだだけあって吹け上がりはなめらかで、音は静か。クーペにするとロードノイズがキャビンに反響する場面もあったけれど、オープンでは逆に外の音がはっきり聞き取れるほどだった。
手前にせり出したウインドスクリーンのおかげもあり、一般道を流す程度のスピードなら、デフレクターを装着しなくても風の巻き込みは気にならなかった。
プラットフォームは、307CCの発展型だが、フロアを二重とし、床下には7mm厚のバーを追加するなど改良を施してある。サスペンションのチューニングがホットハッチの「308GTi」と同等と聞いて、乗り心地が懸念されたが、実際はこの高剛性フロアに加え、ボディの重さもいい方向に働いて、持ち前のしっとり感に落ち着きをプラスした、上質なひとときを味わうことができた。
開けても閉めてもニュートラル
それ以上に印象的だったのがハンドリングだ。シャープでニュートラルな特性はプジョーそのものだし、しなやかな足さばきは207CCを上回る。しかも屋根を開けても閉めても性格がほとんど変わらない。多くのライバルが開閉による重心や荷重の変化に抗しきれず、明確に操縦性を変えてしまうなかで、これはスゴイことである。
プジョーは、2000年に「206CC」を送り出して以来、「307CC」「207CC」と3つのクーペ・カブリオレをリリースしてきた。累計販売台数は65万台にもおよぶ。この種のボディに関して群を抜く経験の持ち主なのである。308CCにはその経験が、デザインからハンドリングまであらゆる部分に生かされていた。
(文=森口将之/写真=峰昌宏)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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