日産フェアレディZ バージョンST(FR/7AT)【ブリーフテスト】
日産フェアレディZ バージョンST(FR/7AT) 2009.02.16 試乗記 ……486万6850円総合評価……★★★★
さらなるパワーを手にしつつ、ショート&ワイド化を図った新型「フェアレディZ」。実際の走りはどうなのか? AT仕様の最上級グレードで探った。
求む! V8エンジン
一見すると旧モデルとあまり変わっていないように見えるものの、オーバーハングの詰まったスタイリングはホイールベースが短縮されて、かなりコンパクトに変貌していると感じる。それでも、オーバーフェンダーの張り出しなどボリューム感は十分で、これなら米国車のなかに混じっても決して引けをとらないだろう。実際の横幅は大きいものの、意外や取り回しはラク。ショートホイールベースなりの機動性も発揮される。
もしもこれにV8エンジンが搭載されたなら、欧米の大型スポーツカーとの上位決戦も夢ではない。北米でも売られることになった「GT-R」といっそうの差別化が図れるわけだし、V8エンジンはフェアレディZのキャラクターをより明確にするだろう。そのうえで排気量を3.5リッター程度に留めれば、燃費性能でもアピールできるというものだ。
「フェアレディZ」が世に出たときの開発背景は、マツダの「ユーノス・ロードスター」のケースに似ていた。つまり、比較的お手軽で安価なスポーツカーを狙って開発され、評価を得たのだった。それが今や、それなりのブランドとして十分認知されている。実力も認められているのだから、たとえそれほど数が期待できないことになっても、高品質なスポーツカーとして、また“日産の看板”として、長期の存続を期待したい。今回のフルモデルチェンジは、そんな気持ちにさせられるほど、意気込みが感じられる内容だ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行型の「日産フェアレディZ」は、「Z34型」として2008年12月1日にデビューしたモデル。開発キーワードは「Jump」で、「Z-ness」(Zらしさ)と、その時代にふさわしい「new-ness」(新しさ)を取り入れながら、走りをピュアに楽しめるスポーツカーとして、あらゆる性能を磨き上げたとされる。
先代に比べ、ボディは65mm短く、30mmワイドに。ホイールベースが100mmも短くなったのもポイント。シャシーは「スカイライン」のものをベースとするものの、ショートホイールベース化ほか味付けの違いにより、まったく別のクルマに仕立てられた。後退したキャビンの前方にフロントミドに搭載されるエンジンは、3.7リッターV6の一種類。トランスミッションには、6段MTとマニュアルモード付き7段ATが選べる。
(グレード概要)
「フェアレディZ」には、ベーシックグレードにあたる“素の”「フェアレディZ」、よりスポーティな「バージョンS」、本革シートやBOSEサウンドシステムなどの豪華装備をもつ「バージョンT」、それらSとTの要素をあわせもつ「バージョンST」の4タイプが用意される。
試乗車は、「バージョンST」のオートマチック仕様車。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ステアリングコラムは計器類のユニットと一体で動く機構だから、メーター類の視認性はどの角度でも良好。しかし、せっかくここまでやったのに、チルトのみでテレスコピック調整が無いのは惜しい。
ダッシュボードの形そのものは、立体的で計器の目盛りも見やすい。全体にすっきりとしたデザインで、かつスポーツカーらしい雰囲気を持たせることに成功している。
(前席)……★★★★
シートは調整機構を完備しており、ほぼ好みのポジションが得られる。サイズ、形状、横方向のサポートもまずまず。しかし座面のクッション材には不満が残る。単に薄いのか、それとも質的に硬いのか? 短時間の試乗でもお尻が痛くなってきた。シートとステアリングホイールの関係がうまく調整できたとしても、ペダル類との関係が上手くいかない。ステアリングホイールにテレスコピック調整機能が付かないならば、せめてペダルのアジャスト機構は欲しい。
(荷室)……★★★★
敷居は高いものの、ハッチはサイドまで回り込んで、大きく開く。フロアは浅いが、小型ハッチバック車以上の面積があり、思ったより積める。シート後方の物入れも有効だ。2人乗りスポーツカーのトランクとしては、長距離旅行まで想定した、十分な容量が確保されている。ボディ補強の部材であるタワーバーも、先代とは異なり、後方視界を妨げない低い位置になった。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
V6エンジンはスムーズにしてパワフル。7ATもGTカーの用途として満足できるレベルだ。変速パドルは固定されており使いやすい。が、その形状は、先端が尖っていて少し怖い。
もちろんV6でもパワーに不足はないものの、アメリカ市場のことを考えると、やはりV8が欲しくなる。3.5リッターくらいの小排気量V8を載せればプレミアム感はさらに増すだろうし、そもそもシャシーやデザインといったエンジン以外の部分でも、高価格で勝負できる内容を備えている。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
大きく重いボディは、スポーツカーにとって不利ではあるが、ホイールベースを詰めた効果は大きく、数字から想像する以上に身のこなしは敏捷だ。ハンドルの操舵力は重め。乗り心地は総じて硬めの設定ではあるが、姿勢変化は少なくダンピングも良好で、不快感はあまりない。ただしリアには、横剛性が不足しているような、ややグニャグニャする感覚がある。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2009年1月23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:4532km
タイヤ:(前)245/40R19(後)275/35R19(いずれも、ブリヂストン POTENZA RE050)
オプション装備:カーウイングスナビゲーションシステム+ETCユニット(33万2350円)/特別塗装色ブリリアントホワイトパール(4万2000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:421.8km
使用燃料:56.0リッター
参考燃費:7.53km/リッター

笹目 二朗
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。