マツダ・ロードスターRS(FR/6MT)/VS RHT(FR/6AT)【試乗速報】
ベストセラーは、まだイケる 2009.01.28 試乗記 マツダ・ロードスターRS(FR/6MT)/VS RHT(FR/6AT)……274万1750円/301万3000円
マツダのオープンスポーツ「ロードスター」がマイナーチェンジ。外装だけでなく機関にもさまざま手が加えられ、走りはどう変わったのか? MT、ATとりそろえて試してみた。
ロール感はクラシカル
「ロードスター」が最初に登場した時には、「ロータス・エラン」の再来のように見られたが、すでに20年の歳月が流れ、累計生産台数80万台以上という偉業を達成(スポーツカーのギネス世界記録を更新中!)、今では独自の地位を確立している。
特に三代目は、それまでスリムだったボディも拡幅されて高級化。よりアメリカ市場を意識したスタイリングとなった。
今回のマイナーチェンジモデルは、そのさらなるリファイン版だ。実際、クルマの熟成には3年を要するというから、いわば今回のは、三代目としての完成形。マツダが作るスポーツカーの集大成そのもの、とも言える。
ロードスターの誕生の原点と目されるロータスはと言えば、ガチガチに足を固めてカクカク操縦するタイプのクルマではなく、しなやかにロールさせてグリップを得るのが流儀であった。今回のロードスターは図らずも、そのロータスのようにクラシカルなロール感を再現させている。
最近のチューニング傾向とは逆行するが、ロールセンターを更に26mm下げたのはご愛嬌。三代目ロードスターに関しては、ロールセンターは逆に上げて重心高に近づけた方が、ロール角そのものも減るし、タイヤの横移動が減るから接地性は向上する。また、モーメント的に楽になるからスプリングレートを下げることも可能で、ここでもさらに接地性は上がるし、乗り心地だってよくなる方向にある。机上の学問と実際の感覚の間には少なからぬ差はあるものだ。
とはいえ、昔のエランさながらに傾けるチューンは、スポーツカーのコーナリング姿勢の雰囲気をそれなりによく伝えてくれる。
スポーティグレードとしては、伸び側の減衰力が高く、内輪の浮きを効果的に抑えてくれる「ビルシュタイン」のダンパーを標準装備した「RS」もある。が、コーナーを本格的には攻めないまでも、オープンスポーツの雰囲気を味わいたいユーザー層にはリトラクタブルハードトップのAT仕様なども用意されている。こちらの足は純正ノーマルなので、ロール感という意味では、先の“ロータス風味”が存分に味わえる。
特筆すべきはギアボックス
従来のロードスターは、オープン2シーターとしてのデザイン的な美的感覚を優先させており、スポーツカーにしては高速走行時や横風を受けた時の安定性はさほど重視していない印象だった。今回はフロントまわりなど、やや空力的な対策も盛り込んで、ノーズを押さえ込む方向のデザインとなっている。
エンジンにも手が入れられた。しっかり回して楽しみたい人のために、最高回転数が500rpm上がって、7500rpmまでスムーズに使えるように改善された。これはクランクシャフトを鍛造とし、剛性を上げ、ピストンをフルフローティング化。さらに、バルブスプリングを新設計するなどした結果だ。滑らかさは十分、レブリミットまでストレスなく楽しめる。
なかでも興味深いのは、音のチューン。一定走行時などでは静かなままだが、スロットルオンの時だけ昔のキャブレターを彷彿とさせる吸気音を聞かせる工夫がなされている。
このエンジン以上に良い印象だったのは、ギアボックスだ。6MTの3、4速のシンクロ容量をアップ、1〜4速のトリプルコーンシンクロのアウター側をカーボンコーティングとした。
操作力は軽いしフリクションも少なく、短いストロークで決まる。このダイレクトなフィーリングは国産MT車の中でも白眉の存在と言えよう。
カスタムベースとしてもいい
マツダと言えばロータリーエンジンが有名で、それゆえにレシプロエンジンは比較されては不利な境遇にあった。しかし、このエンジンならば胸を張って、4気筒エンジンならではの良さを誇れる。たとえ、先に述べた新開発「インダクションサウンドエンハンサー」の援護射撃がなくとも、スポーツカーエンジンの歯切れの良さが味わえるのだ。
スポーツカーは絶対値で決まるものではない。本来、主観的な乗り物である。よって、メーカーのお仕着せのまま乗るのもいいが、自分の好みに合うようにチューニングする楽しみも大きい。だから、好きなようにして乗るベース車両としても、今度のロードスターは恰好のスポーツカーと評価できる。
奇怪な形相のミニバンが繁殖しつつある最近の路上において、今度のロードスターはちょっと愛嬌もあって可愛らしく、見ているだけでも清涼剤的な癒し効果さえある。操縦すること自体を楽しむ、「クルマ」本来の姿がここにあり、ベストセラーを続ける理由が自ずと知れる。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)
拡大 |
拡大 |
拡大 |

笹目 二朗
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
アウディS6スポーツバックe-tron(4WD)【試乗記】 2025.12.8 アウディの最新電気自動車「A6 e-tron」シリーズのなかでも、サルーンボディーの高性能モデルである「S6スポーツバックe-tron」に試乗。ベーシックな「A6スポーツバックe-tron」とのちがいを、両車を試した佐野弘宗が報告する。
-
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.12.6 マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。 -
ホンダの株主優待「モビリティリゾートもてぎ体験会」(その2) ―聖地「ホンダコレクションホール」を探訪する―
2025.12.10画像・写真ホンダの株主優待で聖地「ホンダコレクションホール」を訪問。セナのF1マシンを拝み、懐かしの「ASIMO」に再会し、「ホンダジェット」の機内も見学してしまった。懐かしいだけじゃなく、新しい発見も刺激的だったコレクションホールの展示を、写真で紹介する。





































