トヨタiQ 100G“レザーパッケージ”(FF/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタiQ 100G“レザーパッケージ”(FF/CVT) 2009.01.07 試乗記 ……193万2955円総合評価……★★★
2008年度の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した「トヨタiQ」。小さな巨人と誉れ高い同車の実力を、最上級グレードで試してみた。
課題は山ほどある
一見すると「パッソ」の後半部分を切り詰めて短期間で造りあげたような印象を受ける。実際には、FFユニットを前後さかさまにしてデフ側を前にし、エンジンを後退させるなどの工夫までもして全長を切り詰めてある。
四隅に位置するタイヤのレイアウトからみても、非常に小回りは利きそう。しかし実際に狭い場所に出入りしてみると、意外にボディの大きさを持て余してしまう。各コーナーに配した、バンパーに相当する「コーナーパッド」も、本来こすれてもいいパーツではあるが、気になってしまうもの。自信をもって障害物ギリギリをかすめることはできない。
これは、ひとえに視界の問題だけではない。詳しくは後述するが、天地寸法が大きなドアとシートポジション、タイヤの位置関係や操舵フィールなど、まだまだ初期段階で検討もしくは実験すべきことは残されているように思われる。そのなかでも外観デザインに起因する乗りにくさこそ、大きなマイナスポイントになっている。
はっきり言ってしまえば、メルセデス製コンパクトカー「スマート」の2匹目のドジョウを狙ったものと思われるが、徹底して相手を凌駕するまでレベルを上げてしまわないと、パクリであるという評価を払拭することは出来ない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「iQ」は、2008年10月15日にデビュー(同年11月20日発売)したトヨタのコンパクトカー。 軽自動車より短いボディが最大の特徴で、現在国内で新車販売されている4人乗り乗用車の中では最短となる。
パッケージングの工夫により4名の定員を確保。エアコンユニットの小型化やシートの薄型化など、機能性を確保した上で室内空間を最大化したとされる。
パワーユニットは、可変バルブタイミング機構付きの1リッターエンジンに、CVTの組み合わせ。最高出力68ps、最大トルク9.2kgm。10・15モード燃費は23km/リッターと、多くの軽自動車を凌駕する数値をマークする。
「100X」と「100G」の2モデル構成でラインナップ。2008年11月には、「日本カー・オブ・ザ・イヤー2008-2009」を受賞した。
(グレード概要)
試乗車は「100G“レザーパッケージ”」。エアコンがマニュアルからオートにアップグレードされ盗難防止装置が標準で装備される、上級の「100G」に設定される高級仕様で、シートの一部に本革が用いられている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ソツなくまとめてあるが、現代のコミューターらしさというか、いわゆる可愛らしさのような雰囲気は感じられない。この部分だけみればパッソ用のデザインと言われて妥当なところだ。サイズのわりには高価(160万円)なクルマゆえ、豪華に見せたいという気持ちは伝わってくる。が、中央のナビや空調関連を囲む飾り枠は、その光沢が目にうるさい。広い棚も、高いがゆえに圧迫感を感じてしまう。
(前席)……★★★
大きなドアに対してインナーハンドルは短いし位置が前過ぎ。操作は重く使いにくい。当初の開発計画としては、4ドアだったのかもしれない。シートは普通のサイズがちゃんと二脚納まり、狭苦しさはない。ホールド云々よりも乗降性を重視しているようで、落ちつかないながらも短時間ならこんなもの、と納得はできる。サイドブレーキを手動レバー式に戻したのは賢明といえる。
(後席)……★★
このクルマの主旨から言って、納得できるレベル。乗車の機会も少ないだろうし、畳んで荷室に繋げるとしたら、むしろこんなに厚いクッションは要らない。なまじ前席と同じ仕立てをするものだから、シートとしてのレベルに期待してしまうところもある。
サスの張出部分は大きすぎる。何かの流用ではなくコンパクトな専用品こそ望ましい。
(荷室)……★
リアシートを起こした状態では無に等しい。デッキボードの下にも多少の小物は入るが、コンビニの買い物程度でもリアシートに載せることになるだろう。そもそも、シートではなく荷箱でも作ってその蓋にひとを座らせても、駅までの送迎程度なら許されるのではないか。もっと自由な発想があってもいいと思う。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
ブルブル震えるアイドル振動は興ざめ。いくら3気筒といえどももう少しなんとかしてほしい。せめてスマート程度に。動力性能としては十分でむしろ速過ぎるほど。フロアシフトのレバー周辺など、既成パーツの流用が前提とはいえ、このクルマなりのもう少し新しい発想が欲しい。価格を考えても、せめてスマートのようなアイドルストップ程度の省燃費対策は必要だろう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ホイールベースが極端に短いが故のヒョコヒョコしたピッチング気味の乗り心地は致し方ないところではあるが、さらにチューンの余地もありそう。目地段差などのハーシュネスは巧く納めている。広いトレッドによるコーナーでの安定性は期待以上。ホイールベースが短いため小回りが効く点は、このクルマの最大の美点かもしれない。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2008年12月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:3402km
タイヤ:(前)175/65R15(後)同じ(いずれも、ブリヂストン ECOPIA EP25)
オプション装備:シークレットトレイ(8400円)/オーディオレス(−1万9950円)/HDDナビシステム G-BOOK mx proモデル(32万7600円)/ETC車戴器ブラックボックスタイプ(1万6905円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:268.9km
使用燃料:20.00リッター
参考燃費:13.45km/リッター

笹目 二朗
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