トヨタiQ 130G →(ゴー)レザーパッケージ(FF/CVT)【試乗記】
iQゴーでGO! 2011.03.02 試乗記 トヨタiQ 130G →(ゴー)レザーパッケージ(FF/CVT)……176万5700円
「iQ」に追加されたスポーティグレード「→(ゴー)」。CVT仕様とマニア向け(?)MT仕様の、走りの違いをたしかめた。
“幻のiQ”復活?
最近のトヨタはエコカーの一方でちょっとおもしろいことをする。「ノア/ヴォクシー」に走りを磨いた“G SPORTS”バージョンを加えたり、日本ではずっと売ってこなかった「FJクルーザー」の販売を始めたりして、クルマ好きの虫をこちょこちょとくすぐるのである。昨2010年の夏に「iQ」に加わった「→」(“ゴー”と発音する)という新グレードにも、その“くすぐり”がちょっとあるように思う。
「→(ゴー)」とは平たく言ってしまえばスポーツパッケージ装着車である。フォグランプが装着された専用のフロントバンパーが与えられて顔つきが変わっているほか、リアバンパー下にはディフューザーが与えられ、全体的な見た目がちょっとたくましくなっている。標準型の「iQ」だとドラム式になるリアブレーキがディスクに格上げされるのもけっこう大きなポイントだ。
さらに、これこそが「→(ゴー)」バージョンの見どころなのだが、6段MTを搭載する「130G MT→(ゴー)」というモデルが昨年秋、ワンテンポ遅れてラインナップに加わった。MT仕様の「iQ」といえば、かつて100台だけ限定販売された「iQ GRMN」が思い出される。この「iQ GRMN」とは、そのままサーキットに持ち込んでも楽しめてしまうスポーティな仕様で、発売からわずか1週間で完売となってしまった“幻のiQ”のことである。
以前、この「iQ GRMN」に富士のショートサーキットで乗せてもらったことがあるが、その走りはこの小さなボディに似つかわしくないほど堂々たるものだった。「130G MT→(ゴー)」はその再来か? と期待はふくらむばかりだ。
毎日乗るには……
まずは6MTではなく、より売れるであろうCVT仕様から試乗してみる。この小さなボディに対して94psの1.3リッターエンジンは十二分にパワフルで、その気になればかなり速い。スロットルを踏み込むとCVTは滑らかに回転を上げていくので、ガツンとパンチの効いた加速感ではない。しかしそこがクセモノで、あれよあれよという間にスピードが乗っていて、気がつくとけっこうな勢いになってしまっている。“つじつまを合わせてくる速さ”とでも言おうか。
この威勢のいいエンジンを支える足まわりもかなりスポーティである。路面が平滑ならフラットで快適なのだが、実際の道路はなかなかそうもいかず、毎日乗るにはこれはちょっと硬すぎるか、と思えるほどだ。
路面にはツギハギ状の工事跡があれば、段差もそこかしこにある。それを通過するたびにゴツッときつめのハーシュネスを伝えてくるのは、運転手なら我慢ができるかもしれないけれど、助手席の乗員にとってはあまり気持ちのいいものではないだろう(もっとも、iQは一人で乗るケースが多いだろうが……)。
また、高速道路で路面がグワンと一発うねっているような大きな入力に対しても、しなやかにストロークして収めるというより、ピシッと突っ張って姿勢を維持しようとする傾向が強い。高速走行で一定の条件がそろってしまうと、ヒョコヒョコと小刻みな上下動を繰り返してしまうのも歓迎しかねるところ。
なんだかちょっと前の“タイプアール”系のクルマを思わせる、少々荒っぽい仕上がりである。
どうせ乗るならMT
その後、場所を移して6MT仕様を試す機会を得た。こちらも足まわりは同様に固められていて、ノーマル「iQ」に比べたらハードなことに変わりはなかったけれども、結果として心に残ったものがだいぶ違った。CVT仕様には申し訳ないが、6MT仕様の方がクルマとして“原始的”な分、愛嬌(あいきょう)が感じられたというか、ちょっとぐらい荒っぽいところがあっても「許せるな」という気持ちにさせられた。
ワインディングロードを目指すと、これがとても愉快で、思わず笑ってしまった。ホイールベースがわずか2mしかなく、しかも後輪の直前に座っていることもあって、大きなクルマではあまり感じることのないピッチング方向の動きが、少々オーバーな言い方をするとシーソーのように感じられたのだ。CVT仕様ではここまではっきりしていなかったが、ドライバーの意思をよりダイレクトに伝えるMTがこういった傾向を強めているのだろうか。
前後の荷重がこれだけ動けば、ちょっとした拍子に一気にテールアウトするかも……と警戒してはみたものの、意外に粘るのも発見だった。リアのスタビリティは思っていたよりずっと高く、ちょっとやそっと攻めた走りをしても音を上げない。シフトフィールもいいし、ブレーキのペダルタッチも剛性感があって好ましい。これはもはや立派なホットハッチである。最近クルマを運転してニヤリしたおぼえがないのなら、CVTではなく6MTの方が絶対にお薦めである。
(文=竹下元太郎/写真=峰昌宏、荒川正幸)

竹下 元太郎
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