トヨタ・ヴィッツ“TRDターボM”(FF/5MT)/カローラアクシオ/フィールダー“スポーツM”(FF/CVT) 【試乗記】
試す価値あり 2008.12.17 試乗記 トヨタ・ヴィッツ“TRDターボM”(FF/5MT)/トヨタ・カローラアクシオ/フィールダー“スポーツM”(FF/CVT)……295万7850円/295万7950円/302万7350円
自動車メーカー直系のカスタマイズモデルに試乗。ベースモデルと同様にマイナーチェンジを受けたモデルはどのように変わったのか。
足まわりにこだわった
ディーラーで買える安心のチューンドカーとして、2007年8月の登場以来、約400台が販売された「トヨタ・ヴィッツTRDターボM」。ベースモデル「ヴィッツRS」のマイナーチェンジを受け、2008年9月にバージョンアップを果たした。
専用のターボを装着し、最高出力150ps/6000rpm、最大トルク20.0kgm/4800rpmを発生するエンジンのスペックはそのままだが、このクルマを手がけるトヨタモデリスタインターナショナルによれば、サスペンションの開発をイチからやり直し、「スプリングとダンパーをバランス重視のセッティングにしました」。それこそが、新型のポイントらしい。ちなみにトランスミッションは5段マニュアルのみとなる。
試乗車には、ヴィッツTRDターボM専用のオプション「マスターキット」が装着されていた。運転席正面にアナログのブースト計、油圧計、油温計が備わるほか、専用の本革ステアリングホイールやセンタースポーツマフラー、スポーツパッド、17インチアルミホイール&205/45ZR17タイヤ、センターマフラーガーニッシュがセットで加わるというものだ。そんなクルマを前にして、気分はおのずと高まりをみせる。
山でも街でも
さっそくいつものワインディングロードを目指すことにするが、走り出してすぐに気づくのが乗り心地の良さ。といっても、もちろんソフトなわけではなく、やや硬めの味付けが施されているのだが、不快な突き上げなどが上手にカットされ、スポーツモデルにありがちなピッチングもよく抑えられている。これなら日常の足として使ってもガマンは無用だ。
ワインディングロードにたどりつくと、その走りの気持ちよさが際だつ。コーナリング中のロールが抑えられるのはもちろんとして、それ以上にうれしいのは優れた回頭性を手に入れたこと。軽快にコーナーのインを目指す動きは、ベース車のヴィッツRSでは味わえなかったものだ。
エンジンも実に力強い。ベースと比べて40ps、5.6kgmもの性能アップが図られた1.5リッターターボユニットは、ターボラグが気にならないうえ、幅広い回転域で力強さを示すのがいい。とくに3000rpm以上では、山道の登りでもグイグイとボディを引っ張り上げ、ここでもヴィッツRSとの違いを見せつけてくれる。
パワーもハンドリングもベースモデルをはるかに凌ぐヴィッツTRDターボM。スポーティさと快適さのバランスも絶妙で、ヴィッツRSに比べて約60万円高の221万5500円(マスターキット含まず)という価格には十分納得がいく。
昔取ったキネヅカ
試乗の当日は、やはりモデリスタが送り出すカローラアクシオ/フィールダーのスポーティ版である「スポーツM」も試すことができた。
こちらもベース車のマイナーチェンジにともないリニューアルが図られているが、これまではサスペンション中心のカスタマイズだったのに対し、新型では専用スポーツマフラーの装着に加えて、エンジンコンピューターにもチューニングが施されたのが大きな違い。
そんなスポーツMだが、街なかを流すかぎり、エンジンに目立つところはない。ベースの1.8リッター「2ZR-FE」エンジンに対し、8ps、1.2kgmのアップでは無理もないか……と思いきや、ワインディングロードに舞台を移した途端、別の一面を見せてくれる。前が空いたところで思い切りアクセルペダルを踏み込むと、威勢のいいサウンドとともに気持ちよくエンジンが吹け上がる。とくに4000rpmから5000rpmあたりの盛り上がりが印象的。そのうえ、CVTのシフトパターンに通常のオートマチックと同様“段”をつけることにより、エンジン回転の上昇と速度の関係をリニアにしたおかげで、エンジンのおいしいところをダイレクトに味わうことができるのだ。
足まわりは街なかでは硬さが気になるものの、高速道路やワインディングロードではシャキっとした動きを見せる好ましい味付け。ヴィッツTRDターボM同様、スポーティなドライビングを好む人には、ぜひ一度試してほしいモデルである。
(文=生方聡/写真=高橋信宏)
拡大
|
拡大
|
拡大
|

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
ホンダN-ONE e:G(FWD)【試乗記】 2025.12.17 「ホンダN-ONE e:」の一充電走行距離(WLTCモード)は295kmとされている。額面どおりに走れないのは当然ながら、電気自動車にとっては過酷な時期である真冬のロングドライブではどれくらいが目安になるのだろうか。「e:G」グレードの仕上がりとともにリポートする。
-
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】 2025.12.16 これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】 2025.12.15 フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。
-
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.13 「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
NEW
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【海外試乗記】
2025.12.19試乗記フェラーリが「グランドツアラーを進化させたスポーツカー」とアピールする、新型FRモデル「アマルフィ」。見た目は先代にあたる「ローマ」とよく似ているが、肝心の中身はどうか? ポルトガルでの初乗りの印象を報告する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ911カレラT編
2025.12.19webCG Movies「ピュアなドライビングプレジャーが味わえる」とうたわれる「ポルシェ911カレラT」。ワインディングロードで試乗したレーシングドライバー谷口信輝さんは、その走りに何を感じたのか? 動画でリポートします。 -
NEW
ディーゼルは本当になくすんですか? 「CX-60」とかぶりませんか? 新型「CX-5」にまつわる疑問を全部聞く!(前編)
2025.12.19小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ「CX-60」に後を任せてフェードアウトが既定路線だったのかは分からないが、ともかく「マツダCX-5」の新型が登場した。ディーゼルなしで大丈夫? CX-60とかぶらない? などの疑問を、小沢コージが開発スタッフにズケズケとぶつけてきました。 -
NEW
EUが2035年のエンジン車禁止を撤回 聞こえてくる「これまでの苦労はいったい何?」
2025.12.19デイリーコラム欧州連合(EU)欧州委員会が、2035年からのEU域内におけるエンジン車の原則販売禁止計画を撤回。EUの完全BEVシフト崩壊の背景には、何があったのか。欧州自動車メーカーの動きや市場の反応を交えて、イタリアから大矢アキオが報告する。 -
NEW
第856回:「断トツ」の氷上性能が進化 冬の北海道でブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「ブリザックWZ-1」を試す
2025.12.19エディターから一言2025年7月に登場したブリヂストンの「ブリザックWZ-1」は、降雪地域で圧倒的な支持を得てきた「VRX3」の後継となるプレミアムスタッドレスタイヤ。「エンライトン」と呼ばれる新たな設計基盤技術を用いて進化したその実力を確かめるべく、冬の北海道・旭川に飛んだ。 -
次期型はあるんですか? 「三菱デリカD:5」の未来を開発責任者に聞いた
2025.12.18デイリーコラムデビューから19年がたとうとしている「三菱デリカD:5」が、またしても一部改良。三菱のご長寿モデルは、このまま延命措置を繰り返してフェードアウトしていくのか? それともちゃんと次期型は存在するのか? 開発責任者に話を聞いた。



































